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フグ科魚類稚魚におけるフグ毒(テトロドトキシン)の起源と毒化機構
フグにおけるフグ毒(テトロドトキシン[TTX])の起源は微生物であり,フグは食物連鎖を通じてTTXを蓄積すると考えられていますが,詳細は不明です。一方,天然のフグは稚魚の段階から毒性が高いので,この場合,プランクトンなどの餌生物に毒の起源があると考えられます。そこで越喜来湾などに現れるフグ科魚類の稚魚に注目して,その成長と毒性を追跡しています。また,越喜来湾で集めたプランクトンなどの餌生物を無毒の養殖クサフグ稚魚に与えて飼育し毒化との関連を調べています。
主な実験内容として
・フグ科魚類稚魚の成長と毒性を追跡するため,定期的に採集した稚魚の体長や体重の測定および稚魚から抽出したTTXのマウス試験による毒性測定
・越喜来湾に設置したプランクトン濃縮・分別装置による餌生物の大量採集とその餌生物により飼育する養殖クサフグ稚魚の毒化飼育試験を行っています。
このようにしてフグ稚魚におけるTTXの起源や毒化機構を探っています。
フグから毒を抽出しています。 マウス検定 鬼沢で使用している実験装置
”プランクトン分別・濃縮装置”
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外国産フグ類の毒性と毒組成
フグが持っている毒は長い間,テトロドトキシン(TTX)のみと思われていましたが近年,麻痺性貝毒(PSP)の一種であるサキシトキシン(STX)を保有するフグ類の存在が報告されています。これまで東南アジア,フィリピン,日本,北米などにSTXを保有するフグ類の存在が確認されていることから,PSPを主要毒とするフグ類が世界的に広く分布することが示唆されます。そこでフグ類の保有する毒の種類について系統的な調査をすることが重要な課題となりました。世界には19属121種のフグ科魚類が生息しますが,できる限り多くの種を集めてその毒性と毒組成を調べ,TTXおよびSTXの分布特性と系統分類との関連を検討します。

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魚類における食欲調節機構の解明
 魚類は環境に合わせて体色を変化させる能力に優れています。魚類の体色調節には,メラニン凝集ホルモン(MCH:体色を明るくするホルモン)と黒色素胞刺激ホルモン(MSH:体色を暗くするホルモン)が関与しています。しかし,哺乳類においてこのMCHとMSHが食欲調節にも関与していることがわかりました。食欲は1種類のホルモンではなく,脳内で複数のホルモンによりコントロールされています。その証拠として,これまでに様々な食欲に関係するホルモンが発見されてきました。このMCH(元北里大学水産学部川内浩司教授らがサケから発見!)とMSHをはじめ,最近ではオレキシン(ORX)という食欲を促進するホルモンが発見されました。さらにこのORXは生殖に関与するホルモンである生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)とも連絡していることが報告されました。この現象は食欲調節機構だけではなく,摂餌と生殖の関係を解明する大きな手がかりでもあります。 しかし,魚類におけるこれら調節機構の詳細はよく分かっていません。そこで私たちは,魚類の食欲調節機構の解明を目的として,カレイ目マツカワやメダカなどを用いて,脳内でどのようにこれらのホルモンが働いているのかを研究しています。カレイ目に属する大型魚のマツカワはヒラメに匹敵する高級魚ですが,現在では天然資源量が減少し捕獲量が極めて少ないため「幻の魚」とされています。そこで岩手県では養殖の推進と種苗放流に取り組んでいます。
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重要水産無脊椎動物における神経内分泌機構の解明
 脊椎動物の神経内分泌機構については,様々な種において古くから研究が進められています。一方,無脊椎動物については古くはアリストテレスの時代から昆虫の変態などに興味が持たれていましたが,未だ不明な点が非常に多く残っています。
 脊椎動物において,脳の視床下部と呼ばれる場所で産生される生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone, GnRH)は,性成熟を制御する最高位のホルモンとして知られています。このGnRHは1971年にSchallyらおよびGuilleminらのグループにより,ブタおよびヒツジの視床下部から単離されて以来,鳥類や魚類からも哺乳類型のGnRHとアミノ酸配列が若干異なるGnRHが単離・構造決定されてきました。そして現在までに,哺乳類型,ニワトリT,U型,サケ型,タイ型,メダカ型など多くの型(分子型)のGnRHが知られています。
 近年,無脊椎動物であるタコから新しい分子型のGnRHが単離・構造決定されました。また淡水性巻き貝や二枚貝において,GnRH様物質の存在が示唆されています。そこで我々は,エゾアワビ,クルマエビ,ケガニ,ヤリイカなど水産上重要な無脊椎動物を中心に,未知のGnRHなど新規のホルモンを探索し,その神経内分泌機構の解明を目指して研究しています。

実験風景
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魚類の自発摂餌行動に関する研究
 自発摂餌とは魚の学習能力を利用し,魚にスイッチを押させることによって給餌する方法です。つまり魚が好きな時間に好きな量だけ餌を食べられるということです。この自発摂餌の利点は,魚が満腹になればスイッチを押さなくなり,残餌の減少が期待できます。これにより,残餌による水の汚染を最小限に抑える可能性があります。つまり,自発摂餌は無駄の少ない効率のよい給餌方法ということです。
 また,動物の行動や生理機能は生物時計によって制御されている部分があります。魚も他の生物と同様なことがいえます。釣りをする方ならわかるかもしれませんが,魚がよくつれる時間は早朝や夕方といいませんか?これも魚がもつ生物時計に関係しているのかもしれません。そこで自発摂餌法を用いることにより,魚の摂餌行動と生物時計の関係について調べることができます。私たちの研究室では,この自発摂餌法を用いて,マツカワやメダカ,アユといった魚類の自発摂餌行動の研究を行っています。

画像をクリックすると,マツカワがスイッチを引っ張り,餌を食べる映像が御覧になれます。
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魚類の摂餌活動に及ぼす背景色・光波長の影響
 岩手県の水産重要種であるマツカワは白および黒背景色で飼育すると、白背景色で黒背景色よりも好成長を示すことがわかっています(Yamanome et al., Aquaculture 244 (2005) 323-329)。さらに、特定の光波長照射下においても成長に差が認められます。そこで我々は背景色や光波長が魚類の摂餌活動に及ぼす影響について、マツカワやキンギョを用いて研究しています。

白色水槽

黒色水槽

青色光波長

緑色光波長

赤色光波長
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魚類の摂餌同調性生物時計に関する研究
 魚類に限らず多くの生物の行動や生理機能には日周リズムを示すことが知られています。これは,生物が体内にもつ生物時計によるものです。この生物時計によって生物は光などに同調し,行動をしているのです。このような生物を恒常条件(明暗など身の回りの環境に変化がない条件)下におくと,約24時間周期のサーカディアンリズムを示します。
 また,いくつかの生物は同じ時間に餌を与え続ける(制限給餌)と,行動パターンが給餌時刻に同調し,給餌時刻よりも前から行動が活発になります。これは制限給餌に同調する摂餌同調性生物時計によるものだと考えられています。
 そこで,私たちはマツカワ,キンギョ,メダカを用いて摂餌同調性生物時計の研究を進めています。

Choronobiology kit(これで魚の行動を記録します)
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エゾアワビの遺伝育種学的研究
 アワビと言えば水産物の高級食材としてご存知でしょう。なかでも,干鮑は中華料理の高級食材の一つとして有名です。ではエゾアワビとはどのような生物なのでしょうか?エゾアワビは北海道から東北にかけて生息しているアワビの仲間で,南方系のクロアワビの亜種とされています。エゾアワビは各地で資源回復と漁獲量拡大を目的とした放流事業が行われています。また,養殖では種苗を生産する過程で生存度,成長度の低さが問題となっています。私達はこれらの問題を解決するため,DNAマーカーを用いた効率的な選抜育種技術を開発すること、また三倍体など染色体操作技術を駆使して、アワビの種苗生産・養殖における生産性の向上を目指しています。

エゾアワビ初期稚貝のサンプリング風景
(北日本水産株式会社にて)

アワビ実験用水槽(マリンホール1階)

日本動物遺伝育種学会学会長特別賞
(ベストポスター賞)受賞

日本水産学会での発表
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ナマコの遺伝育種学的研究
 ナマコは高級な中華食材です。岩手県産マナマコは,色や形が中国人に好まれることから,近年多くの野生個体が中国へ輸出され,天然資源の枯渇が危惧されています。本研究は,遺伝育種学的な研究を通じて,ナマコの効率的な完全養殖技術の開発に貢献することを目的とします。具体的には,重要な経済形質である疣足(イボアシ,ナマコの体の表面にたくさんある突起,これが長く,数が多いと商品価値が高い)の数・形状の客観的な数値化,産地による疣足数・形状の特徴,疣足数・形状の遺伝性,ナマコの種苗生産を害するカイアシ類(小型甲殻類)の薬品を使わない駆除法,年齢査定法,アワビとナマコの複合養殖,DNAマーカーを用いた効率的な選抜育種,養殖集団の遺伝的多様性,放流用個体に対するDNA標識法などについて研究します。(北日本水産株式会社との共同研究)

人工受精によって誕生した生後7ヶ月の幼ナマコ(写真提供:北日本水産株式会社)
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水生無脊椎動物のテロメアに関する研究
 テロメアは,細胞の老化・寿命に深く関わると言われ,医学・生物学分野で注目されている重要なDNA領域です。しかしながら,テロメアに関する研究はこれまでヒト,ウシ等の哺乳類または昆虫類に主眼が置かれ,水産学分野,特に水生無脊椎動物においては、あまり盛んではありません。テロメアは細胞分裂のたびに短小化し、限界まで分裂すると細胞分裂が停止し、細胞が老化することはヒトの細胞などで良く知られていますが、この現象があらゆる無脊椎動物においても同様であるか否かについてはまだ良く分かっていません。本研究では、あらゆる動物門に属する水生無脊椎動物のテロメア長と年齢との関係、短小化したテロメアを伸長させることで知られるテロメラーゼ活性の有無、およびテロメアの塩基配列型と系統分類との関係について総合的に検討し、動物界におけるテロメアの全貌を明らかにすることを目的としています。

染色体端部の黄色のシグナルがテロメア領域を示す

共焦点レーザースキャン顕微鏡による観察

日本動物遺伝育種学会での発表

日本水産学会での発表
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有用水生生物の染色体および遺伝子マッピングに関する研究
 産業上有用な形質を発現する遺伝子が染色体上のどの位置に存在しているかを知ること(遺伝子マッピング) は,養殖魚介類の育種を行う上で非常に重要です。遺伝子マッピングは,蛍光in situハイブリダイゼーション (FISH) という方法を用いて可能となります。この技術は,ヒトを初めとした哺乳類でその研究が進んでいるものの,魚介類ではかなり遅れています。本研究では,エゾアワビやマツカワ等,産業上重要な魚介類を用いて,有用なホルモン遺伝子等のマッピングを行い,育種技術に役立てることを目的としています。また、このようなマッピングを行うためには、その種の染色体標本が作製可能であること、および染色体数・核型が明らかであることが基本となります。しかし、ナマコなどの水産重要種においても染色体数・核型が明らかでない種が多く存在します。本研究では、上記のマッピングと平行して、染色体の知見が乏しい重要種の染色体数・核型を明らかにして行きます。

エゾアワビの染色体
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エゾアワビ組織の生体採取および再生に関する基礎研究
 個体を生かしたまま組織を採取(生体採取)できれば,DNAの生体採取などが可能となり,あらゆる分野の研究に役立ちますが,アワビ組織の生体採取法についてはあまり研究されていません。本研究では,エゾアワビの筋肉,外套膜,生殖腺などの組織の生体採取法を開発します。また、採取後の組織の再生過程を組織学的に詳細に検討し、再生機構の解明も目指します。

麻酔中のアワビ
 
実験中のアワビ
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水生無脊椎動物のゲノムサイズおよび自然倍数体に関する研究
 ゲノムサイズとは,細胞1つ当たりの総DNA量のことを言います。DNAは生命の根元ですから,その量を知ることは生命現象を知る上で非常に重要です。それにも関わらず,特に水生無脊椎動物ではこれまでこの様な研究はほとんど成されていません。また,生物達は進化の過程でゲノムサイズを増加させることがあるので,現存するあらゆる生物たちのゲノムサイズを知ることは,生物の進化の謎を知る上での一助にもなります。
 一部の魚介類で自然倍数体(自然の状態で存在している三倍体等,通常よりゲノムサイズが大きい個体)の存在が報告され,これまで考えられなかったような奇妙な繁殖様式の存在が明らかにされつつあります。また,二倍体と三倍体の細胞を合わせ持つような個体(モザイク個体と言います)を発見できる可能性もあります。しかしながら,これまでに自然倍数体・モザイクの有無を検討した動物の種数はまだ非常に少ない状態です。本研究では,以上の様なことを検討するため,様々な水生無脊椎動物のゲノムサイズをフローサイトメーターという機械を用いて分析しています。
 サンプリングについて: 以上の研究を行うためには,様々な水生無脊椎動物が必要となりますが,本学部が隣接する三陸海岸では貝,フジツボ,カニ,イソギンチャクなどほとんどの動物門に属する動物の採集が可能です。必要に応じて海岸へサンプリングに行き,色々な動物を採集して来ます。また三陸海岸で採集できないような,カブトガニやサンゴなどは通信販売等で入手して実験に使用しています。

フローサイトメーターによるゲノムサイズの測定
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魚類の種苗生産に関する研究(出向:東京大学付属水産実験所)
 トラフグ,ブリなどの魚種を研究対象としてホルモン処理等を用いた種苗生産技術の改善・開発のための基礎研究を行っています。他にマダイの自発摂餌リズムに関する研究,養殖フグを用いたフグ毒に関する研究も行っています。
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ヒメマスの母川回帰,酸性雨および環境ホルモンに関する研究
(出向:独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所日光庁舎)

 サケ科魚類は産卵のために母川に回帰しますが,その機構は生物学的に興味深いものの謎に包まれています。そこで,栃木県日光中禅寺湖をフィールドにして,ヒメマスに発信器を取り付けて放流・追跡し,母川回帰機構の解明を目指します。また最近では,酸性雨と内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が大きな社会問題となっています。そこで,酸性環境がサケ科魚類に与える影響と,天然サケ科魚類の内分泌機構について詳細に検討します。
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