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 本来無毒な魚介類が有毒プランクトンをエサとして取り込むことにより毒化し、ヒトに中毒を引き起こすことがあります。この様な中毒を細菌性食中毒とは別に自然毒食中毒と呼びます。

 魚介類による自然毒食中毒としては、フグ中毒が最も有名ですが、その他に麻痺性貝毒や下痢性貝毒と呼ばれる二枚貝による食中毒が日本をはじめ、世界各地で発生しています。また、熱帯亜熱帯地方で頻発する南方産魚類による食中毒はシガテラと呼ばれ、年間患者数が2万人以上と言われ、大きな社会問題となっています。

 水産資源化学研究室では、日本で発生する下痢性貝毒および麻痺性貝毒に焦点を当て、毒生産プランクトンの効率的な大量培養法の開発といった生物的要素のある研究や、毒の検出や新たな研究試薬の開発といった有機化学的手法を用いた研究を行い、食品としての魚介類による中毒・被害の防止と海洋資源の有効利用を目指しています。

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Diarrhetic Shellfish Poisoning(下痢性貝中毒)史

 下痢性貝毒は1976年宮城県で発生したムラサキイガイによる消化器系障害の食中毒を契機に発見されました。その後、これまでに国内で 1,200 名、ヨ-ロッパでも 8,000 名を超える患者の発生をみており、患者数では麻痺性貝毒をはるかに上回ります。および毒性
 下痢性貝毒に多数の成分が発見され、すべて脂溶性のポリエーテル化合物であり、骨格構造から3 群に分けられます。毒化二枚貝でもっとも重要な成分はオカダ酸とディノフィシストキシン-1と-3 です。オカダ酸類は強い下痢原性を有し、中毒の主原因と考えられています。また、発ガン促進作用も有しています。ペクテノトキシン群は同一骨格で43 位の酸化状態が異なる数成分からなり、下痢原性とともに強い肝臓毒性が認められることから看過できない成分です。な症状
   下痢性貝中毒の主な症状は消化器系の障害で、下痢 (92%)、吐き気 (80%)、おう吐(79%)、腹痛 (53%) が顕著です。症状は食後30分から数時間で発生し、70%以上が4時間以内に発症しています。通常3日以内に回復します。中毒の発生が 6~9 月に集中することから腸炎ビブリオと誤認されやすいが、新鮮な二枚貝や加熱調理品で発生し、発症までの時間が短く、発熱がないことから区別できます。
 下痢性貝毒の最小発症量は12 MU(ディノフィシストキシン-1 換算で約 30 µg)と推定されています。
二枚貝の種類によって毒化の程度や毒の保持時間に差がありますが、基本的にはすべての二枚貝がすべての種類の貝毒によって毒化して、中毒を引き起こす危険性をはらんでいます。
下痢性貝毒によってもほとんどの二枚貝が毒化しますが、ホタテガイ、ムラサキイガイの養殖域あるいは産地が毒化の激しい海域と一致しており、消費量も多いことから食中毒の原因となることが多くあります。毒は中腸腺に局在するので、ホタテガイなどは除去すれば利用できます。汚染経路、毒化経路
 下痢性貝毒は渦鞭毛藻の Dinopysis 属数種によって生産されることが明らかになっていますが、日本では D. fortii が毒化原因となっています。対馬暖流によって運ばれた鞭毛藻が東北、北海道沿岸で増殖し、毒化を引き起こすと考えられている。世界における汚染
 日本のほかに、スペイン、フランス、オランダ、ノルウエ-、イタリアなどヨ-ロッパ各国とカナダ、チリ-、ニュージーランドなどでも発生します。

Paralytic Shellfish Poisoning(麻痺性貝中毒)史

 麻痺性貝毒は貝毒のなかでもっとも古くから知られており、アメリカインディアンの伝承や 18 世紀の帝政ロシアのアラスカ探検隊に記録があります。フグ中毒に似た神経麻痺を主徴とすることから麻痺性貝中毒と呼ばれ、死亡率が高いのが特徴です。わが国では、昭和23年の愛知県におけるアサリによる中毒をはじめとして、これまでに8件130名(死亡4 名)の患者が発生しています。地域では北海道から九州にいたる各地で発生します。の性状および毒性
 麻痺性貝毒は初期に研究材料に用いられた北米産の二枚貝の学名にちなみサキシトキシンと命名された毒と、後に発見されたその同族体群です。現在までに 30 種近くの同族体が発見されています。通常、二枚貝中には数成分の混合物として存在します。いずれも水溶性で、中性や微酸性溶液中では加熱に対して安定ですが、アルカリ性では不安定な化合物です。ほとんどの成分の毒性はフグ毒のテトロドトキシンに匹敵し、1 mg で 2000 - 5000 匹のマウスを殺す毒力を持ちます。主な症状
  麻痺性貝中毒は食後 5-30 分で口唇周辺のしびれからはじまり、四肢末端にひろがります。重症になるに従いしびれは腕、足、首の麻痺に変わり、運動失調、言語障害がおきます。さらに重症になると呼吸麻痺により死亡します。治療に特効薬はなく、毒が体外に排出されるまで延命する人工呼吸が重要である。食品
 麻痺性貝中毒の最小発症量は不明であるが、ヒトの致死量はサキシトキシン換算で約 2 mg、毒力で10,000 MU 程度と考えられています。
二枚貝の種類によって毒化の程度や毒の保持時間に差がありますが、基本的にはすべての二枚貝がすべての種類の貝毒によって毒化して、中毒を引き起こす危険性をはらんでいます。
麻痺性貝毒ではホタテガイ、アカザラガイ、ムラサキイガイ、アサリ、マガキによって実際に食中毒が発生しています。産業的には東北、北海道のホタテガイが毎年のように長期の出荷規制を受けることから経済的被害が大きいです。また、さんご礁に生息するオオギガニ科のカニが高濃度の麻痺性貝毒を含むことがあるので注意を要します。経
 麻痺性貝毒を生産するプランクトンとして渦鞭毛藻 Alexandrium 属数種とGymnodinium catenatum, Pyrodinium bahamense var. compressa が知られています。日本では A. tamarenseA. catenella およびG. catenatum が貝類の毒化に関与しています。これらの分布域は重複し、北海道から九州まで出現しています。いずれも沿岸性のプランクトンでほとんどの期間はシストと呼ばれる休眠細胞になって海底に存在しますが、春先や秋に発芽し、栄養細胞(遊泳細胞)となって細胞分裂で増殖します。
 麻痺性貝毒は、アメリカ大陸東西海岸、ヨ-ロッパなどの北半球冷温水域での発生が良く知られていますが、近年、台湾、韓国、ホンコン、オ-ストラリア、メキシコ、チリ-、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランドなど、これまで記録のなかった地域で中毒の発生や二枚貝の毒化が報告され、汚染海域は広がる傾向にあります。また、ボルネオ、フィリピン、グアテマラ等の熱帯、亜熱帯地域では患者数百人をこえる大規模な中毒が多発しています。