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分子構造学講座 岩橋槇夫 教授
物理化学の分野の中で,熱力学と量子化学をこなせるスタッフ体制をと
るのが当研究室の方針で,研究もこの2本立てで進めていますが,研究室
の共通のテーマは「分子集合系の化学」です.
個々の分子より,それらが集まってつくる分子集合体の方が色々な機能を
持つことが多く,例えば,界面活性剤のミセルが油を可溶化したり,脂質
のベシクルに体の中で必要な場所に必要な薬を運ぶドラッグデリバリーの
役割を演じさせる試みはよく知られた例です.分子が自発的に並ぶ方向を
設計して,特別な性質を持たせることは,基礎および応用を含めてこれか
らの大切な研究の一つです.
分子集合系の化学は物理化学の側面からライフサイエンスを考えることに
もつながります.すなわち生体を構成している細胞膜は脂質分子やタンパク
質分子が相手を認識しながら自然に集合して出来上がったもので,生命体の
中で自然に集合された細胞膜は色々な分子を認識したり,イオンを選択的に
透過させたりする性質を持っています.
当研究室では,生体を構成する脂質分子が液体中や膜中に自然に作り上げる
会合体の構造や大きさ,さらに物性を調べています.また,植物が光合成に
利用しているクロロフィルに類似したポルフィリン化合物の自己会合体など,
生体に関連する物質の分子集合体構造や性質を調べています.これらの物質
はまた光励起状態で電子が集団運動するような光化学デバイスとして大いに
興味ある現象を示します.
測定手段としては,波長の短いX線や紫外線,波長の長い赤外線からラジオ波
まで色々な光を用いることで,光を浴びて興奮した状態に在る分子の形や性質,
遺伝情報に深い関係がある水素結合などを調べています.また,DSCなどの熱
測定,表面張力,蒸気圧浸透圧法などの熱力学的測定,密度,粘度,光散乱など
組み合わせて,総合的に集合体の構造や物性の研究を行っています.