北里大学 獣医学部 生物環境科学科

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日本DNA多型学会に参加しました(生物環境)

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日本DNA多型学会に参加しました

  12月1日と2日に,神奈川県横浜市はまぎんホール・ヴィアマーレにて日本DNA多型学会が開催されました。昨年も紹介しましたが,本学会は,多様な専門分野の研究者が「DNA多型」というテーマを命題に集うユニークな学会です。法医学,動物,植物,水産,人類遺伝など,DNAを扱うあらゆる分野の研究者が参加します。昨年は,小型肉食動物の糞から,その糞をした動物の種と餌動物を検出するDNA鑑定技術の開発について発表しましたが,今年は日本人に馴染み深いタヌキとキツネの系統地理と亜種分類について発表してきました。
  食肉目イヌ科タヌキは,私達日本人にとっては馴染み深い里山の動物ですが,世界的には日本や中国などの東アジアにのみ自然分布する珍しい動物です。欧米の方々に「タヌキ Raccoon dog」というと,「アライグマ? Raccon?」と良く判ってもらえない程度に珍獣です。イヌ科の中でも特殊で,現在は1属1種に分類されていますが,先行研究では日本集団とユーラシア大陸集団間で染色体や頭骨形態などに差が見られることが報告されています。一方,キツネは,タヌキと違って全世界に広く分布し,亜種数も多く,その分類も多様です。しかし日本における分布は北海道集団と本州・四国・九州(ホンド)集団で亜種分類されている点で共通していて,比較対照としてとても興味深い関係です。これらタヌキとキツネの系統地理と亜種分類を解明するため,ミトコンドリアDNAという系統関係を反映する遺伝子を解析し,系統樹を作成してみました。
  その結果,ホンドタヌキとエゾタヌキは遺伝的にはあまり違いがありませんでした。ベトナムのタヌキは,中国のタヌキと遺伝的に近く,韓国のタヌキとも異なっていました。どうも,遺伝子を調べてみると,同じタヌキでも日本のタヌキはちょっと違うんじゃない?という結果が出てきたようです。もっともっと多くの地域から採取したタヌキを解析することで,タヌキの進化の歴史が解明され,分類も見直すことができると期待しています。
  一方,キツネは,北海道のキタキツネは,本州・四国・九州に分布するホンドギツネより,中国のキツネと遺伝的に近縁であることが判りました。これは,津軽海峡で隔てられ,北海道と本州以南で生物相が異なるというブラキストンラインによる隔離が効いているものと考えられます。キツネは,実は韓国やベトナムでは,狩猟が原因で個体数が激減しており,韓国では幻の動物と言われるほどの絶滅危惧種です。日本でも,千葉県で絶滅危惧I類,鹿児島県で絶滅危惧II類,5都府県で準絶滅危惧種に指定されています。キツネがアジアで絶滅してしまわないよう,個体群管理を行う必要があり,遺伝的多様性のモニタリングを継続的に行う必要があります。
  今後も日本人なら誰でも知っているタヌキとキツネの個体群管理を行うため,研究を進めていきたいと考えています。

生態管理学研究室
黒瀬奈緒子

タヌキとキツネ