2024.12.24
2024
ファカルティリポートNo.6
第40回一般教育部セミナーが開催されました。
2024年12月16日に一般教育部セミナーが開催され、一般教育部自然科学教育センター物理学単位の塩沢健太助教(理論物理学・数理物理学)による講演『超弦理論で拓く新しい時空構造』が行われました。ご講演の要旨は以下のとおりです。
重力は最も身近な力でありながら、ミクロな世界でどのように記述されるのかは未だ完全には知られていない。重力とは時空の歪みである、と説明するアインシュタインの一般相対性理論に対し、ミクロな世界を支配する量子論を適用すると、無限大の発散が生じて理論的な計算が行えなくなってしまう。ブラックホール内部の時空特異点近傍や、宇宙創成の瞬間など、時空の湾曲が大きく、重力が極端に強い状況下では、重力の量子論がなくてはならない。そのため、量子重力理論の完成は、解決すべき物理学の問題として広く考えられている。
現在、量子重力理論の最有力候補として考えられている理論は「超弦理論」である。これは、我々の世界を構成する素粒子が、点粒子ではなく紐状の「弦」である、と考える理論である。超弦理論には自然に重力が含まれるが、無限大の発散を生じずに量子論的な計算を行うことができる。それだけではなく、物質に作用する基本的な力(電磁気力、弱い力、強い力)を記述することも可能であり、超弦理論は万物の理論の候補としても研究されている。
時空を弦で探査(プローブ)すると、点粒子では見えなかった本当の姿を見せてくれる。弦は紐状で長さを持っているため、例えば円筒のようなコンパクトにまとまったものに巻き付くことができる。このとき、弦は巻き付きのエネルギーを持ち、これを使えば、時空のミクロな構造を見ることができる。つまり、これまでの点粒子に基づくアインシュタインの一般相対性理論では見られない、隠されていた時空の構造を捉えることができる。点粒子では知り得なかった時空の本質的な姿は、超弦理論において、まったく新しい時空構造として登場するのである。
本講演では、上記のような超弦理論の重力的な側面について紹介した。特に、コンパクトな空間に巻き付いた弦にフォーカスし、私の研究内容である「巻き付きエネルギーを持つ弦で見ることができる新規な時空構造」について簡単に説明した。