NEWS & REPORTS
2025.04.09
2024
ファカルティリポートNo.8
第41回一般教育部セミナーが開催されました。
「19世紀イギリス小説で描かれた医者たち」
基礎教育センター英語単位 矢野奈々(英文学)
3月24日の一般教育部セミナーでは、科学研究費助成事業基盤研究(C)の研究課題である「19世紀イギリス小説における医者の役割と影響について」に関する2024年度の研究成果と今後の研究の方向性について発表を行いました。
19世紀のイギリスにおける科学の進歩は、当時の人々にとって未知への畏怖の対象でもありました。このような感情を反映し、文学作品の中では「マッドサイエンティスト」のステレオタイプが生み出されました。日本でも広く知られているロバート・ルイス・スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』(1886)は、その代表的な例です。一方で、当時の文学作品において英雄的な医者(科学者)の姿も描かれており、二分された医者のイメージがある中で、ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』(1871-72)の主人公であり、医者であるリドゲイトは「マッドサイエンティスト」と英雄の両面の要素を持ち合わせています。リドゲイトの内面を深く読み解くと、ジキル博士と通じる内的構造が見出され、彼の中にも二極化した心の在り方が表れていることが分かります。そこで、本セミナーではリドゲイトとジキル博士それぞれの心の均衡に焦点を当て、対極する心の出現と当時の医者、科学者との関係性を考察しました。
また、『シャーロック・ホームズ』シリーズで知られるアーサー・コナン・ドイルは、自らが医者としての経験を持ちつつ作家へと転身した人物であり、彼が描く医者についても取り上げました。ドイルの『ラウンド・ザ・レッドランプ』(1894)は日本ではあまり知られていないものの、今後の研究において重要な作品と位置づけています。以上の3人の作家の作品を通して、19世紀イギリス小説における医者の役割と影響について、現時点での見解をまとめました。セミナーにご参加いただいた先生方から頂戴した貴重なご意見を参考に、今後の研究をさらに深めてまいります。
19世紀のイギリスにおける科学の進歩は、当時の人々にとって未知への畏怖の対象でもありました。このような感情を反映し、文学作品の中では「マッドサイエンティスト」のステレオタイプが生み出されました。日本でも広く知られているロバート・ルイス・スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』(1886)は、その代表的な例です。一方で、当時の文学作品において英雄的な医者(科学者)の姿も描かれており、二分された医者のイメージがある中で、ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』(1871-72)の主人公であり、医者であるリドゲイトは「マッドサイエンティスト」と英雄の両面の要素を持ち合わせています。リドゲイトの内面を深く読み解くと、ジキル博士と通じる内的構造が見出され、彼の中にも二極化した心の在り方が表れていることが分かります。そこで、本セミナーではリドゲイトとジキル博士それぞれの心の均衡に焦点を当て、対極する心の出現と当時の医者、科学者との関係性を考察しました。
また、『シャーロック・ホームズ』シリーズで知られるアーサー・コナン・ドイルは、自らが医者としての経験を持ちつつ作家へと転身した人物であり、彼が描く医者についても取り上げました。ドイルの『ラウンド・ザ・レッドランプ』(1894)は日本ではあまり知られていないものの、今後の研究において重要な作品と位置づけています。以上の3人の作家の作品を通して、19世紀イギリス小説における医者の役割と影響について、現時点での見解をまとめました。セミナーにご参加いただいた先生方から頂戴した貴重なご意見を参考に、今後の研究をさらに深めてまいります。