2025.04.30
2025
ファカルティリポートNo.3
新任教員自己紹介(生物・吉田 学 教授)
2025年4月より、一般教育部生物学単位に着任しました吉田 学です。一般教育部では「生物学」「生物学要習」「生物学実験」を担当しています。北里大学での教育・研究は今回が初めてですが、皆さんと一緒に生物の面白さを探求していけることを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いします。
私の専門は生殖生物学で、動物の精子がどのようにして受精能力を獲得するのかに関心を持って研究しています。精巣で形成されたばかりの精子は、自力で動くこともできず、卵と受精する力も持たない未成熟な状態です。その後、雄性生殖路を通過する過程で運動能を獲得し、さらに雌性生殖路や卵由来の因子によって活性化されることで、受精可能な状態へと段階的に変化していきます。つまり、精子は放出された後も、次々と機能を変化させながら受精に至るのです。
私はこのような精子の機能変化のしくみに注目し、これまで海沿いにある臨海実験所にて、海産無脊椎動物(ホヤなど)や魚類を対象に研究を進めてきました。特に、精子がどのようにして同種の卵だけを識別し、選択的に誘導されるのかという「種特異的な受精成立のメカニズム」に関心があります。こうした研究は、生殖の基本的理解を深めると同時に、生物多様性の保全やヒトの不妊症の解明といった社会的課題にも貢献し得るものです。
生物学は、生命現象を分子、細胞、個体、集団、そして生態系といった多様な階層で理解しようとする学問です。医学や農業、環境保全などの実社会とも深く関わっており、科学的な知見を社会に応用する上で重要な基盤となります。また、「生物と無生物の境界は何か」「種とは何か」といった根本的な問いも含み、学問としての奥行きも持っています。講義や実習を通じて生物学の奥深さと面白さに触れ、科学的に物事を捉える視点を育んでいただければと思います。