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センター長コラム

第3回 早期発見・早期治療という言葉は適切でしょうか

様々な疾患に関する啓発活動の広報や講演を通して、早期発見・早期治療という言葉をよく見聞きします。

それでは認知症の場合、早期発見・早期治療という言葉は適切でしょうか。

認知症の状態があった場合に、初期のうちに早期発見され早期治療されると、良好な転帰にいたる可能性が高くなるでしょうか。適切のように思えるところもありますが、言葉足らずで誤解を招く言葉のように思えるところもあります。

認知症の状態があった場合に、早期発見されるところまでは適切だと思います。

しかしその次に求められるのは早期治療ではありません。

早期に認知症の状態と類似した状態を引き起こす疾患を丁寧に除外することが大切です。認知症の状態と類似した状態を引き起こす疾患には、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、特発性正常圧水頭症などの頭蓋内疾患、甲状腺機能障害などの内分泌疾患、低血糖、高血糖、高アンモニア血症の原因になる代謝疾患、梅毒などの感染症、ビタミンB1、B12が不足する栄養障害、意識水準、記憶機能、注意機能に影響を及ぼすあらゆる薬剤やアルコールなど数多くあります。これらの有無を早期に調べ、もしあった場合には早期に治療することができると回復を期待することができます。早期発見のあとに早期治療という言葉がすぐさま登場すると、こうした可逆的な病態の見落としが生まれてしまいそうです。

認知症のある人の治療には薬以外の様々な方法がありますが、薬は手軽な方法なので早期治療という言葉を見聞きすると、早期薬物療法という印象を与えてしまいそうです。

しかし早期に薬物療法をする以前に大切なのは、可逆性の病態があるかどうかを丁寧に調べ、可逆性の病態があれば必要な治療につながり、可逆性の病態がない場合には認知症の原因疾患の丁寧な診断の機会につながることだと思います。

ですから認知症の場合には早期発見・早期治療よりも、早期発見・早期鑑別診断という言葉の方が適切と言えるのではないでしょうか。

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