2018年6月1日
北里大学北里研究所病院
病院長 土本寛二

北里研究所病院における研究倫理指針違反に関するご報告(最終報告)

 当院医師が実施した臨床研究において、研究対象者である患者様に対し同意を取得せずに研究を開始した疑いのある事案が2015年8月に確認されました。本事案について調査委員会による調査を行った結果「倫理指針への不適合の程度が重大」であると認定されました。その後、調査しうる過去の全ての介入研究についても徹底した調査を行ったところ、別の臨床研究において研究倫理違反の疑義が確認されました。引き続き調査委員会による調査を行い、その結果を踏まえて当院内部で更に精査を行ったところ新たに3件の研究において重大な不適合が確認されました。
 違反の事実を厳粛に受け止め、当初の違反事案の発覚直後から院内の体制整備を開始し、このたび全ての調査及び再発防止策の整備が完了しました。
 膨大な調査とともに院内の改善作業を併行していたため時間を要してしまいましたが、「研究調査委員会」の調査結果とともに、これまでの改善策の実施状況について最終的なご報告を申し上げます。


1. 確認された臨床研究倫理違反事案

(1) 乳癌臨床研究

 2015年8月、患者の申出により確認された乳癌臨床研究事案については、外部委員を含む研究調査委員会(第1期研究調査委員会)を設置して調査を行いました。その結果、本違反事案は「臨床研究に関する倫理指針への重大な不適合(インフォームド・コンセント未実施)」としての事実認定がなされました。

(2) ワルファリン臨床研究(3件)

 (1)の事案により、これまでに実施された他の臨床研究で同様のことが起きていなかったかを確認するために、当院で研究倫理審査を開始した2008年度まで遡り、終了した全ての介入臨床研究189件についてあらためて調査を実施しました。その結果4件の臨床研究において重大な倫理違反の疑義が生じ、第2期研究調査委員会を招集し詳細の調査を実施しました。調査報告書をもとに厚生労働省の助言を賜りながら院内で精査した結果、同一研究責任者によって実施されたワルファリン製剤を用いた3件の臨床研究(2010年~2013年に実施)について「倫理指針への重大な不適合」と認定されました。その内訳は、1件がインフォームド・コンセントの未実施、2件が倫理審査を受けずに研究実施したものでした。

2. 事後対応及び改善措置置

 一連の調査において、インフォームド・コンセントの不備が確認された研究対象者の6名(本人またはそのご家族)の皆様には関係者から直接説明と謝罪をさせていただきました。 また、改善措置として乳癌臨床研究事案が確認された当初より院内の研究管理体制の強化、すなわち「研究事務局機能の強化」、「研究教育部門の設置」及び「研究公正監視部門の設置」などを行い、同様の事態の再発防止措置を行ってまいりました。
 新たに認定された1.(2)の3件の倫理違反事案は、北里大学薬学研究科修士課程の修士論文、及び薬学部4年生の卒業論文のための臨床研究であり、学生が関与する研究の管理及び指導体制にも課題があったことが判明しました。その後薬学部と共に研究倫理教育の体制整備を行い、ガバナンス体制、倫理審査チェック体制、教育体制等を整備することにより、現時点ではできうる限りの再発防止策が講じられております。
 今後、当院のみならず同じキャンパスにある薬学部、東洋医学総合研究所、生命科学研究所が連携して継続的な教職員・学生等への教育の推進、及びチェック体制の強化と業務改善を行い、再発防止と信頼回復に尽くしてまいる所存です。

3. 過去の研究の調査とその後の対応

 更に、これまでに実施された他の臨床研究で同様のことが起きていなかったかを確認するために、当院で研究倫理審査を開始した2008年度まで遡り、既に終了した全ての臨床研究についてあらためて調査を実施しました。その結果、4件の臨床研究において倫理違反が疑われる事案が浮上しました。
 病院長はあらためて研究調査委員会(第2期研究調査委員会)での調査を指示し、追加調査を行いましたが、新たに確認された疑義はすべて「倫理指針への重大な不適合とはいえない」と判断されました。重大な不適合ではなかったとはいえ、過去の体制の不備を省みてその原因の分析を行いました。
 新たに確認された倫理違反(逸脱)のうち一部は大学院修士課程の修士論文、及び薬学部4年生の卒業論文のための臨床研究であり、学生が関与する研究の管理及び指導体制にも課題があったことが判明しました。現時点では院内のガバナンス整備により同様の事案の発生は起こり得ないと考えておりますが、今後、当院のみならず同じキャンパスにある薬学部、東洋医学総合研究所、生命科学研究所が連携して継続的な教職員・学生等への教育の推進、及びチェック体制の強化と業務改善を行い、再発防止と信頼回復に尽くして参る所存です。

 本報告にあたりまして、問題となった研究に参加された患者の皆様に多大なるご心配及びご迷惑をお掛けしましたことに、あらためて深くお詫びを申し上げます。また、厚生労働省をはじめ、官公庁、大学、病院関係者の皆様には、当院の研究教育や支援体制の不備により臨床研究全般の信頼を揺るがすことになりましたことを深くお詫び申し上げます。

以上