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ネガティブな出来事における不確かな文脈記憶形成:その神経生物学的メカニズムとうつ病の発症リスクとの関係を解明
―うつ病の予防・治療に役立つ可能性―

 富山大学(学術研究部医学系の袴田優子教授)、北里大学(医療衛生学部の田ヶ谷浩邦教授ほか)、および国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(精神保健研究所の堀弘明部長)等は共同で、うつ病の発症リスクをもつ人では、経験した出来事のなかにネガティブな事柄が含まれるときには出来事の全体像を正しく記憶していないこと、こうした不確かな記憶形成が扁桃体―vmPFC間の機能結合やコルチゾールの分泌量と結びついていること、さらに、より長期的な文脈記憶の想起困難である自伝的記憶の過剰一般化と繋がり、うつ病の発症リスクを高める可能性があることを世界で初めて明らかにしました。
 この知見は、精神神経内分泌学分野における伝統的な学術雑誌であるPsychoneuroendocrinologyに10月19日にオンライン掲載されました。

ポイント

・うつ病の発症リスクをもつ人では、ネガティブな出来事を経験したときに、その出来事の全体像(文脈情報)が正しく記憶されていない。
・こうした記憶形成の失敗は、ネガティブな情報に注意を惹き付けられているときの扁桃体と腹内側前頭前皮質(vmPFC)との間の機能結合と関連している。
・代表的なストレスホルモンであるコルチゾールが多く分泌されているほど、出来事に遭遇してから時間が経過した後に、その出来事が起きた一連の流れ(時間的文脈)を思い出せなくなる傾向がある。
・ネガティブな情報の存在下における文脈記憶の形成不全は、うつ病の発症・増悪に密接に関与する「自伝的記憶の過剰一般化」(自身が経験した出来事の文脈情報について曖昧にしか思い出せなくなる現象)を介して、うつ病の発症リスクを予測説明することを初めて発見した。

論文情報

【掲載誌】Psychoneuroendocrinology
【論文名】Contextual memory bias in emotional events: neurobiological correlates and depression risk
【著 者】Yuko Hakamata, Shinya Mizukami, Shuhei Izawa, Hiroaki Hori, Mie Matsui, Yoshiya Moriguchi, Takashi Hanakawa, Yusuke Inoue, Hirokuni Tagaya.
【DOI】10.1016/j.psyneuen.2024.107218

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