北里大学

農医連携教育研究センター 研究ブランディング事業

センター長からのメッセージ

センター長からのメッセージ

センター長 向井 孝夫
北里大学農医連携教育研究センター長就任にあたり、ご挨拶申し上げます。2024年7月から、岡野昇三前センター長からセンター長の任を引き継ぎました獣医学部の向井孝夫です。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、北里大学における「農医連携」は、北里大学の学びの4本柱の一つに位置づけられる全学を挙げた教育・研究活動で、その目標は、健康・環境・食をめぐる現代的課題の解決です。現代社会に目を向ければ、世界的規模での新興感染症の拡大、気温上昇による死亡や疾病の増加、水資源不足と農業生産減少、生物多様性の減少がもたらす自然界から受けるさまざまなサービスの損失など環境や食に関する問題が顕在化しており、このような状況は私たちの身体的、精神的健康に直結するリスクと言えます。私たちはリスク軽減のための対応として「農」と「医」が連携して取り組むことが必要であると考えています。「農」の役割は、自然との共存を図りながら生物資源を活用することによって食料、エネルギーを生産し、人類の生命の維持、生活の向上を図ることが挙げられます。また、農学分野から発展した技術や知識が人の健康向上に貢献している例も見受けられます。一方、「医」の役割は、高度な倫理観と生命科学に関する知識および技術に基づいた確実な医療を介して人の健康に貢献することです。人の健康に寄与しているという点において、「農」と「医」は本来的には密接に結びついているものであり、両者が連携することで多くのリスクを軽減できるものと考えています。このような考えに基づき、本学で進める農医連携は、「環境や食と人の健康の維持・増進とのつながりを理解し、持続可能な健康社会を実現するための連携」とのコンセプトに基づき教育・研究と普及活動を展開しています。
 
 本学における農医連携活動は、2005年度の第1回北里大学農医連携シンポジウム「農・環境・医療の連携を求めて」の開催に端を発します。この活動は、2009年度には文部科学省の「大学教育・学生支援推進事業大学教育推進プログラム」に採択され、2013年度の「北里大学農医連携教育研究センター」の設置へとつながりました。

 農医連携教育研究センターには、教育担当部門と研究・普及担当部門の2部門が設置されています。教育担当部門では、北里大学へ入学した全学部の1年生を受講対象に、一般教育部の科目として「農医連携論」を開講し、多くの部門の教員が分担して講義を行っています。この講義は受講生が多く、2023年度の講義では400名近くの1年生が受講しております。また、学部教育においては、獣医学部における教育として、おもに動物資源科学科の学生を受講対象とする「農医連携教育プログラム」が開講されています。これは3年次までの3年間に及ぶプログラムであり、動物資源科学科卒業生の就職につながっています。また、医学部では1年生を受講対象とした「医学原論・医学原論演習」の中に獣医学部附属フィールドサイエンスセンター八雲牧場(北海道)での実習が組み込まれており、この取り組みも農医連携教育の一つに位置づけられています。

 研究・普及担当部門は、「食と健康作業部会」、「動物介在医療作業部会」、「東洋医学の普及に関する作業部会」の3つの作業部会が設定されており、学部の垣根を越えた共同研究の推進が図られています。これまでのこの部門の大きな成果としては、「農医連携研究拠点の創出:食を介した腸内環境制御による健康社会構築」が、文部科学省2017年度「私立大学研究ブランディング事業」に選定されたことが挙げられます。また、北里メディカルセンターでは、医学部や獣医学部と連携し日本盲導犬協会の協力を得て、犬を用いた実践的な動物介在療法に取り組んでいます。農医連携教育研究センターでは、このような部門間の共同研究をさらに発展させるべく、共同研究テーマを募集し、研究助成を行っています。今後は3つの作業部会に加え、新たな分野を創成するための研究テーマを募集することを計画しています。

 北里大学農医連携教育研究センターでは、これからも学部・研究科・病院・研究所の枠を超え、農医連携の教育・研究活動を発展させる所存ですので、皆様のご理解・ご支援をよろしくお願い申し上げます。
以上