北里大学

北里大学農医連携教育研究センター

60号

情報:農と環境と医療60号

2011/3/1
農医連携論‐講義の経過と受講生の意見や感想‐
北里柴三郎博士は、研究者間のコミュニケーションを深め研究を深化させるため、月に一度は門下生らと集会を開いた。これに参加できない多くの同窓生たちは、その記録の刊行を熱望した。そこで博士は、集会の内容を1895年に「細菌学雑誌」として刊行している。この雑誌は、今なお「日本細菌学雑誌」として刊行され続けている。知の共有は科学にとって不可欠なものと考えていた博士の思いが、今なお息づいている証であろう。

北里大学ではこのような博士の達見をさらに止揚すべく、6年前から環境を通した農の知と医の知を連携させるため、「農医連携」という言葉を提唱している。さまざまなところで現代に見られる分離の病の克服、すなわち知と知の統合である。古くから医食同源、身土不二、地産地消などという言葉があるように、環境を基とした「農学と医学」あるいは「食と健康」は、もともと分離される事象ではないのである。近代科学の手法は、技術の深化を探求するあまり分離の病を生じせしめたのである。

1.農医連携の提唱・発信(平成17年から)
北里大学では、平成17(2005)年から「農医連携の科学」を発展させるため、農と医を連携させる教育、研究および普及にかかわる事項をさまざまな形で発信してきた。その結果、環境を基とした「農医連携」なる言葉が世間に広く定着しつつある。それは、社会が「農と環境と健康」の連携に多大な関心を抱いていることはもとより、北里大学学長室通信「農と環境と医療」が発刊され、大学のHPにも掲載し続け、今では60号にまで至り、広く社会に浸透しはじめたこと、北里大学農医連携シンポジウムが既に7回開催されたこと、そのうえその成果を「現代社会における食・環境・健康(2006)」「代替医療と代替農業の連携を求めて(2007)」「鳥インフルエンザ‐農と環境と医療の視点から‐(2007)」「農と環境と健康に及ぼすカドミウムとヒ素の影響(2008)」「地球温暖化‐農と環境と健康に及ぼす影響評価とその対策・適応技術‐(2009)」「食の安全と予防医学(2009)」「動物と人が共存する健康な社会(2010)」と題した冊子にまとめ、養賢堂から北里大学農医連携学術叢書として出版していること、さらには農医連携の考え方を国外にも提唱・発信するため、これらの成果を北里大学農医連携学術叢書の一環として「Agriculture-Environment-Medicine(2009)」にまとめ、冊子としてYokendoから世に問うたことにもよる。加えて、微力ながら筆者が農医連携に関する依頼講演を北海道から四国に至る各地で開催してきたこともその要因の一つと考えたい。

今では日本農学アカデミー、農林水産省、文部科学省、大学、都道府県、市町村、さらには民間の組織などでも「農医連携」なる言葉が使われはじめた。定量的な意味は極めて希薄ではあるが、ヤフーで「農医連携」を検索すると、228,000件(2011年1月24日現在)の項目が出てくる。この言葉は確実に定着しつつある。

2.農医連携論の開始(平成19年から)
最初の農医連携論は、まず平成19年4月に迎えた医学部の新入生の医学原論の一部と、獣医学部の新入生を対象に行われる獣医学入門I、動物資源科学概論Iおよび生物環境科学概論の一部で行った。詳細は「情報:農と環境と医療25号」に詳しく紹介している(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no21-30/noui_no25.html#p01)。

医学原論・医学原論演習(平成19年から):また医学部では、6人の学生(男3、女3)が夏期休暇を利用し「医学原論・医学原論演習」の一環として獣医学部附属フィールドサイエンスセンター(FSC)八雲牧場で行う第1回目の「八雲牧場訪問及び講義」に参加した。感想の一部を紹介する。「食は医にとても近い存在であること、人は動物に感謝しなければならないことを実感しました」「大学生活に対する意識が高まった」「なるべく手を加えず、本来の生命を最大限に発揮させる八雲牧場の方針はすばらしい」「後輩にも体験してもらいたい」「本当に楽しくて興奮しました」など。詳しくは「情報:農と環境と医療32号」を参照されたい(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no31-40/noui_no32.html#p01)。この演習は、平成22年の夏で第4回目を迎えた。第4回目の参加学生は30人に上った。詳細は「情報:農と環境と医療59号」を参照されたい(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no51-60/noui_no59.html#p07)。

3.一般教育部・教養演習(平成20年から)
 続いて平成20年の4月から、一般教育部の教養演習Bで新たに「農医連携論」(1単位)が開講された。医学部、獣医学部、薬学部、生命科学研究所などの教授がこの講義を分担している。

農医連携論の講師と講義内容は「情報:40号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no31-40/noui_no40.html)に詳しい。講義内容のうち、1.農医連携入門、2.医学からみた農医連携、3.農学からみた農医連携の概略は「情報:40号」に、4.東洋医学および代替医療からみた農医連携の概略は「情報:42号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no42.html)」に、5.代替農業論の概略は「情報:43号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no43.html)」に、6.環境保全型畜産の概略は「情報:44号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no44.html)」に、7.鳥インフルエンザ‐感染と対策‐の概略は「情報:45号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no45.html)」に、8.高病原性鳥インフルエンザとワクチン対策の概略は「情報:46号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no46.html)」に、9.重金属元素の生物地球化学的循環‐カドミウムとヒ素を中心に‐の概略は「情報:47号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no47.html)」に、10.重金属・臨床環境医学からの視点の概略は「情報:49号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no49.html)」にそれぞれ詳しく紹介した。

受講生の意見や感想
受講生の感想や討論内容を紹介する。20年の受講生は15人であった。以下の感想や意見などを参考にして、今後の農医連携論をさらに進化させる必要がある。詳細は「情報:50号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no41-50/noui_no50.html)」。

1)農医連携論を受講した理由:複数回答
看護学部の道を選んだが農医連携に興味があった/医療に携わる者として農医連携論が大切/鳥インフルエンザの経路で農医連携が知りたい/農医という言葉に興味/多くの先生の話が聴ける/病気の予防に環境と農と医療の連携が大切/農医連携論があったので北里大学を選んだ/人と地球の健康を学びたい/二つの専門分野を跨いだ前代未聞の講義内容に引かれた/環境を通した人と動物の共存に興味/農業と環境と医療を獣医学の立場で興味/教養演習Aの講師の講義に引かれたから/獣医学には農と環境など幅広い知識が必要/微生物の視点から農学と医学の関係を知りたい/この時間が空いていた/農と医療を跨ぐとは何か知りたい/地域における農と医療に関心があった/積極的な討論が成績評価に関連するから/医療分野に興味

2)今後やってほしい農医連携論の内容:複数要望
バイオの世界:基礎から応用/おばあちゃんの知恵袋/土壌の重要性/食の安全性/環境と病気・伝染病/健康な土壌・健康な食物・健康な人/低投入型農業・自然農法/日本が国際社会の一員として、これから取り組むべき農医連携とは/化学物質(農薬)・食品添加物について/石油論/農医連携の視点から捉える日本の教育論/マスコミ論/獣医学から見た農医連携/一人暮らしの食生活/野外実習/農から医に貢献した研究/医から農に貢献した研究/外国人の講義/疫病と医学のつながり/宇宙空間と人/物理的視点から見た医療/畜産と医療/自然と人間との共存/討論を増やした講義/農業従事者と医、医療従事者と農

4.獣医学部動物資源科学科の農医連携論(平成21年から)
 平成21年の後期から、一般教育部の教養演習Cと獣医学部動物資源学科の動物資源科学概論2を合わせた農医連携論が始まった。内容は「情報:52号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no51-60/noui_no52.html#p02)」に詳しい。ここでは、22年度の農医連携論を受講した学生の感想や意見をまとめた。

そのまえに、平成21年度文部科学省大学教育改革支援プログラムが決定された情報を知っておく必要がある。これは、文部科学省の平成21年度「大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラム」に応募した北里大学の「農医連携による動物生命科学教育の質の向上」が、支援プログラムに選定されたことである「情報:52号(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no51-60/noui_no52.html#p01

このプログラムが選定された背景には、北里大学が農医連携を重点課題の一つとして取り上げ新しい視点で教育を展開しようとしていることがある。これに対して、医学部長と獣医学部長のきわめて高度な連携・協力があり、さらに医学部と獣医学部の教員が、松下 治教授と向井孝夫教授のもとに積極的な協力を惜しまなかった現実が、決定の引き金になったのである。ここには、知と知の分離を克服しようとする新たな教育者間の協力・促進の萌芽が感じられる。

受講生の意見や感想
1)講義内容や講義のあり方など:生徒の参加/実習/健康と絡める/農学生に医学知識を医学生に農学知識を/身近な話題/ビデオの活用(いのちのたべかたの例)/プリント欲しい/予防/クイズ形式/土壌を使い作物生育の実習/倫理/漢方薬など現物みたい/医学の知識必要/講義の関連性/農学と医学の共生の場(栄養・ビタミン・感染)/講義後の学生の感想を聞く/動物介在活動/代替医療・代替農業を詳細に解説/ノートをとらせろ

もっと多彩なテーマを/感想の発表会/実践プロジェクト紹介/レポート提出/農医連携の定義を前期に徹底する/現場の人の講義/農より医が多すぎる/農と医の基礎が知りたい/新事実の紹介/不安解消の講義/文化系も必要/講義の継続性/農と医の先生の討論/講義が急ぎすぎ/議論する力を涵養/食体験/レポートとメイル交換/他大学の参加/全学部の参加/映像教育が最高/リアクション時間の設定/参加型講義/感想文を書かせる/講義時間が短い/海洋生命科学がない

2)感想など:講師は最高の布陣/深い講義/身近な問題は分かりやすい/他の学部にも聞かせる/若い学問/内容が興味深い/文系の学部との連携必要/理解しやすかった/この学問を深めよ/重要性をもっとわかりやすく/ものを考えさせる講義/長所・短所の明確化/感想の発表会/集中できた/2年次以降の学習に期待がもてた/農医連携のつながりが分からない/環境問題が重要だと分かった/多くの人に講義を聴かせたい/面白く興味深い/質は高いが繋がりが不明/医学部学生との意見交換

充実しているがさらに/分離の病の克服/出欠表の配り方配慮/高校生の頃から期待/学科指定で強制的/内容が複雑で興味もてない/医学部学生も受講せよ/授業のスタイルがよい/漢方医薬を嘗めたのが最高の経験/雑談する学生が多い/幅広い視野がもてた/講師の講演会が欲しい/発達途上の学問

このような受講生の農医連携論に関する率直な意見や感想は貴重である。これに対応するための筆者の時間的余裕も少なくなったが、これらの意見のうち、内容のある項目は可能な限り改善・追加していくつもりでいる。

土壌と健康:1.土壌と地理医学
はじめに
古代ギリシャの医者、ヒポクラテス曰く「食べ物について知らない人が、どうして人の病気について理解できようか」

人智学の創始者、オーストリアのルドルフ・シュタイナー曰く「不健康な土壌からとれた食物を食べているかぎり、魂は自らを肉体の牢獄から解放するためのスタミナを欠いたままだろう」

ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランスのアレキシス・カレル曰く「土壌が人間生活全般の基礎なのであるから私たちが近代的農業経済学のやり方によって崩壊させてきた土壌に再び調和もたらす以外に、健康な世界がやってくる見込みはない。生き物はすべて土の肥沃度(地力)に応じて健康か不健康になる」

北里柴三郎が若き日に書いた医道論の中にも、健康の基は環境であることがはっきり示されている。曰く「医道の基本は未然に防ぐことである。健康な環境のもとで生産され、安全な製造過程を経た食品を食し、健康を保ち病気に陥らないことが必要である」

他にも多くの聖賢が、人の命と健康の基は健全な土壌から生産される食物と質の良い水にあることを語っている。健全な土壌、水、大気、植生すなわち健全な環境資源があってはじめて、人は健康を維持することができる。

このような聖賢の言葉を知ると、次のようにまとめてみたくなる。「食物は土壌と水と大気の成分からできあがる。動物はそれを食べる。土壌と水と大気を知らない人がどうして病気について理解できようか」

これらの内容はわが国で古くから言われている言葉、医食同源、身土不二、四里四方に病なし、地産地消などにも表れている。

国際土壌科学会議の「土壌と健康」シンポジウム
最近では、国際土壌科学会議が「土壌と健康」と題するシンポジウムを開催している。1924年に設立された87年の歴史を持つ国際土壌科学会議は、第18回目の会議を2006年7月にアメリカのフィラデルフィアで開催した。土壌科学会議は次の4部門から構成されており、1)Soil in Space and Time, 2)Soil Properties and Processes、3)Soil Use and Management、4)The Role of Soils in Sustaining Society and the Environment、4番目の部門は5分野からなる。このうち、4-2)Soils, Food Security and Human Health がここで紹介した分野である。この4番目の部門は、3人の演者を立て「土壌と健康」と題するシンポジウムを開催した。またこの分野は、「食物と健康の栄養分に影響する土壌の質」と題したポスターシンポジウムも開催した。詳細は以下のホームページでみることができる。http://www.colostate.edu/programs/IUSS/18wcss/index.html

内容については、すでに「情報:農と環境と医療15号」(https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/noui/spread/newsletter/no11-20/noui_no15.html)に掲載しているが、本項を「土壌と健康」と題してまとめるために要点だけを再掲載することにした。内容は以下の通りである。

シンポジウム「土壌と健康」
演題1:Science for Health and Well Being.
講演者:Dov Jaron, Drexel University
演題2:From Aspergillus to Timbuktu: African Dust, Coral Reefs and Human Health.
講演者:Virginia H. Garrison, U.S. Geological Survey
演題3:Soils and Geomedicine.
講演者:Eiliv Steinnes, Department of Chemistry, Norwegian University of Science and Technology

演題1:Science for Health and Well Being(健康と幸福のための科学)
国際土壌科学連合(IUSS)を含む国際科学会議(ICSU)は、「健康と幸福(SHWB)」のための科学を首唱する。この計画は学際的な科学を促進し支援することに長期的な目標を定めている。われわれはこの学際的な科学,すなわち「健康と幸福」に関わる医学的、社会学的問題の解決策の探求を目指している。具体的なねらいは概略次のとおりである。1)ICSUプログラムの進展 2)UN(国際連合)やWHO(世界保健機関)のような組織の支援 3)ネットワークの拡大とワークショップの開催 4)SHWBプログラムのもとに学際および国際的連盟プロジェクトの支援

演題2:From Aspergillus to Timbuktu: African Dust, Coral Reefs and Human Health (遠くまで運ばれるカビ:アフリカのダスト、珊瑚礁および人の健康)
アフリカのダストが、毎年サハラとサヘルから西側のカリブやアメリカ、ヨーロッパやアジアに運ばれている。ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠からのダストが、アジアに端を発する同じようなダストのシステムで、中国、韓国、日本、北太平洋を通ってハワイ諸島まで、また周期的に東回りでヨーロッパまで運ばれている。

この地球規模の大気システムは、土壌微粒子を何百何千年かけて移動させている。運搬されたダストの量は、世界の気候、各地域の気象、供給源の地形学的特徴により年々変化する。過去40年にわたってカリブ海へ運搬されたダストの量の増加にともなって、最近では人間活動にも変化が生じている。

ダストの発生源やダストが旅する地域では、人間活動の結果、ダスト風の固まりの組成が変化してきている。原因は、バイオマスや廃棄物の燃焼、さらに殺虫剤、プラスティック、有機合成化学物質や薬品が広範囲に使用されていること、さらには工業化が促進されたことによる。

一連のパイロットプロジェクトから、われわれの仮説が立証され始めた。その仮説とは、アフリカのダスト風の固まりが可視微生物、微量金属元素や残留性有機汚染物質(POPs)を数千キロも離れたアメリカやカリブ海に運搬するか、さらに汚染物質と侵食された鉱質土壌は逆に、風下の生態系と人間の健康を襲うのではないかというふたつである。

POPs、微量金属元素や、数多くのタイプの病原体を含む可視微生物が、マリ共和国のサヘルやヴァージン諸島とトリニダードのカリブ海の大気から検出されている。

マリの大気サンプルは、カリブの大気サンプルよりも単位当たり可視微生物量の多いことがすでにわかっている。マリでの微量金属元素の濃度は、鉛が僅かに高濃度だったが、外側の組成は同じようなものであった。

予備実験ではPOPsが大量に検出された。なかでも濃度が高かったのは、カリブよりもマリでのサンプルであった。同定されたPOPsの多くが、人間や他の生物にとって毒素、発癌物質、免疫系抑制剤、内分泌撹乱物質として作用することが知られている物質である。

環境毒物学の予備実験から、カリブ海で収集されたアフリカのダストは海洋生物の敏感な生命段階に非常に有毒であることがわかった。珊瑚礁にダストを付着させ、毒性試験を行いながら、有毒成分の同定を進めている。

また、アフリカのダストとトリニダードの小児喘息による急患との因果関係に関する調査を続行中である。10μmおよび2.5μm未満のエアロゾルの濃度、粒子表面組成(特にPAHおよび金属)、POPs、微生物および花粉は重要である。

これらの予備的な研究から発見された事実は、将来行われるカリブ諸島の珊瑚礁生命体、人間の健康およびアフリカのダスト間の汚染物質の影響に関する研究に有益なものとなるであろう。

われわれは、発生源地域の土壌侵食プロセス、運搬された土壌粒子表面の物理化学的特性、さらには、長距離運搬の間に生じるダストの変化についての理解を拡げるため、土壌学者および他からの学際的な科学者との共同研究を行いたいと考えている。

演題3:Soils and Geomedicine(土壌と地理医学)
地理医学とは、ある地域に住む人間と動物がその地域の自然から受ける影響を明らかにする学問分野である。人間と動物の健康については、潜在的に土壌汚染が最も危険性に富んでいる。天然において、化学物質が過剰か不足かという問題は古くから知られているが、今後、地球的な観点からさらにこの問題は重要になるかも知れない。

注目すべきは、必須微量要素または有害微量要素に関わる視点である。特に、土壌の微量要素欠乏に関わる課題は、家畜の繁殖にも農作物の耕作にも影響することが何年にもわたり数多く報告されている。植物に欠乏する元素には、ホウ素、マンガン、銅、亜鉛およびモリブデンがあり、家畜に欠乏する元素には、コバルト、銅、ヨウ素、マンガンおよびセレンに関連したものが知られている。動物が過剰に毒性物質を摂取した例として、銅、フッ素およびセレンなどがいまも報告されている。畜牛へのモリブデン過剰供給による銅欠乏のような特異的な問題が、ときに要素間の相互作用を引き起こすかも知れない。

近代の集約農業では、作物と家畜の微量要素欠乏については、化学肥料あるいは動物飼料中にこれらの微量要素を添加することで対応してきた。土壌pHの調整は、作物への摂取量の規制が有益かも知れない。

獣医学における必須微量要素の問題は、先進国においては大部分が解決された。しかし、家畜の微量要素欠乏の問題は有機農業にみられる。だから、家畜の飼料がある地域に限定され、農作物のなかの微量要素のバランスがそこの土壌に依存しているのであれば、家畜に見られるような問題が人類にも現われそうである。

先進国では、人間の集団は様々な地域から食料を集めているから、土壌の元素についての地理的な違いによる影響を受けにくいと考えられる。しかし、アフリカ、アジアおよびラテンアメリカの大部分では、ひとびとはその地域で育った食物に依存しており、それゆえ、ヒトの現在の地理医学的な問題は、主に世界のこの地域に限定される。

有名な例は、セレン欠乏による中国のKeshan病、バングラディシュおよびインドの隣接地域における大規模なヒ素中毒である。発展途上国における多くの問題が地質学的な要因に関係しているから、まだその問題が見つかっていないことは当然とも言える。

土壌のすべての必須元素が土壌鉱物だけに由来するとは限らない。ホウ素、ヨウ素およびセレンのような微量要素は、海洋から大気によって運ばれ、大陸の土壌にかなり供給される。したがって、これらの元素に関連した障害は、歴史的に沿岸地域ではそれほど一般的ではない。ヒトのヨウ素欠乏障害の発生は、主として海洋から遠いところに限られている。また、Keshan病と関係する中国内の地域も、主に海から遠く離れたところであることが注目に値する。

ポスター・シンポジウム「食物と健康の栄養分に影響する土壌の質」

  • Investigating the fate of residual organophosphonate nerve agent in soil.
  • Effects of season and daily changes in nitrate (NO3-) contaminant levels of lettuce.
  • Heavy metals in soil-plant system in a city with non-ferrous ores extraction and processing industry.
  • Soil type and precipitation as lyme disease risk indicators.
  • Using by-products of steelmaking industry as soil pH corrective and their effects on Zn, Cu and Cd of soil and tea plant.
  • Human health risk due to food produced from soil contaminated with urban industrial toxic wastes.
  • Cancer and non-cancer health risk from eating cassava grown in some mining communities in Ghana.
  • Improving zinc availability in rice grains: the role of the soil-plant system in the food chain.
  • Epidemiological study of coccidioidomycosis (valley fever).
  • Reduction of cadmium content in eggplant (solanum melongena) by grafting onto root stock solanum torvum.
  • Study on Nutrition Absorption Pattern of Vegetable Crops with the Height above Sea Level in Korean Highland.
  • Seed priming with molybdenum alleviates molybdenum deficiency and poor nitrogenfixation of chickpea in acid soils of Bangladesh and India.
  • Aluminum concentration and forms in tea (Camellia sinensis L.).
  • Effect of nitrogen, potassium and magnesium on tuber yield, Grade and quality of potato Cv. Kufri Giriraj.
  • Native nutrient supplying capacity of potato grown acid soils of Nilgiri hills in South India.

なお、ポスター・シンポジウムには日本人による発表が2題含まれていた。

Soil and Culture: Springer社(2010)
Soil and Cultureと題する本が、Edward R. LandaとChristian Fellerによって2010年にSpringer社から出版された。前者はミネソタ大学で土壌科学を学び博士課程を修了し、アメリカの地質調査所に勤務している。後者はソルボンヌ大学で有機化学の学位を取得している名誉土壌学者である。

この本は、「Soil and the Visual Arts:土壌と視覚芸術」「Under My Feet - Soil Presence and Perspectives in the Work of Four Contemporary Visual Arts:足下‐4つの現代視覚芸術に見る土壌の臨場的・総体的視点」「Soil and Soul: Literature and Philosophy:土壌と霊魂:文学と哲学」「Soil and Health:土壌と健康」「Soil - The Dark Site and the Light Side:土壌の影と光」の6部からなる。このうち「Soil and Health:土壌と健康」の章は、「Soils and Geomedicine: Trace Elements:土壌と地理医学:微量要素」「Do Pedo-Epidemiological Systems Exist‐:土壌免疫学システムは存在するか?」「"Earth Eaters";Ancient and Modern Perspectives on Human Geophagy:"アースイーター":食土に関する古代および近代の視点」に分かれている。ここでは、その中の「Soils and Geomedicine: Trace Elements:土壌と地理医学:微量要素」について紹介する。

土壌と地理医学:微量要素
土壌はさまざまな形態で人間の健康に影響を及ぼしている。最も顕著な影響は、作物から直接栄養を補給することと、食物連鎖を通して栄養を人間へ提供することにある。しかし土壌は、さまざまな形態で人間の健康に悪い影響も及ぼしている。生命体は、土壌の摂取、土壌粒子の吸入、傷ついた皮膚への土壌接触などによって悪い影響を直接受けている。また、土壌には汚染された化学成分や物質が含まれている。ときとして、自然土壌でも汚染された物質が含まれている。したがって、これらの有害物質を過剰に摂取することは、人間にも動物にも害になる。一方で土壌の多くは、植物、動物および人間に適切な量の必須元素を含んでいる。それらは、植物が利用できる形態で人間に供給される。

地理医学の定義
地理医学は"通常の自然過程が人間と動物に及ぼす影響"と定義されている(Lag 1990)。この定義には、地理学的な過程の影響に加えて、太陽や星空間から流入する放射能や吸気中の化学物質が健康に及ぼす影響なども含まれる。このような要因が土壌組成へ影響することによって、人間の健康にも影響が及ぶものとして議論される。近年の自然環境と人間の健康とが連携していることへの関心は、医学地質学が盛んになってさらに強まっている(Selinusら:2005)。医学地質学は、本質的には地理医学という用語に含まれる事象を扱う。

地理医学の歴史的背景
古代ギリシャでは、人間の疾病はその地域特有な地理的条件に関係していることを認識していた(Lag 1990)。中国の医学書には、環境と健康の間に多くの関連性があることが3世紀まで遡って書かれている(Daviesら 2005)。マルコポーロは13世紀の中央アジアへの旅において、地域の水の特異性が原因となる地域個体群における甲状腺腫について詳細に報告している(Daviesら 2005)。

現代的な意味での地理医学に関わる最初の例は、1693-1845年のヘクラ火山爆発で噴出したフッ素によるアイスランドの人と家畜の健康問題であろう(Lag 1990)。これらの噴出で、一時的なことだが、人の集団と家畜はまず火山塵を吸入し、その後植物表面に沈着した物質を摂取することにより影響を受けたであろう。健康に関連する地理医学の最初の例は、1750年頃フランスで提唱された土壌のヨウ素欠乏に伴う甲状腺腫であろう(Lag 1990)。

医学博士で土壌科学者としてこれらの歴史的事実に注目し、土壌と人間の健康の関わりに特別な注意を払った事実は、驚くべきことである(Deckers and Steinnes 2004)。実際には、獣医の専門家はこの種の関係にもっと早くから気づいていた。というのも、動物の栄養における微量元素の欠乏と過剰の問題について、広い範囲の論文がすでに流布されていたからである(Lewis and Anderson 1993; Mills 1983; Froslie 1990)。微量元素が動物の栄養摂取バランスに必要なことは、長い間家畜に餌を与えるうえで重要な事項として理解されていた。

穀物の栄養素摂取に関する土壌要因の重要性
植物における栄養素の摂取を簡単に紹介する。植物の微量栄養素の欠乏は農業生産に影響を及ぼし、直接的あるいは間接的に人間の栄養にも影響する(Andersen 2007; Alloway 2005)。植物に必要な微量栄養素には、ホウ素、塩素、マンガン、鉄、銅、亜鉛、モリブデンの7種がある(Gupta and Gupta 2005)。これらの成分は、ホウ素を除いて人間や高等動物にも必要である。

植物は土壌からこれらの成分を摂取する。植物への摂取は、土壌の化学的、生物学的、鉱物学的および物理学的な要因に依存する。この視点から、土壌のpHは特に重要である。モリブデンとセレンのような元素は、中性の土壌pH(5.5-7.5)で土壌に強く結合しているが、土壌がアルカリ性に傾くとすぐに植物に利用される。

一方、鉄、アルミニウム、マグネシウムおよびカドミウムのように毒性の強い金属および鉛は、より酸性の土壌で吸収利用できる。鉄とマグネシウムの酸化物は還元条件になると、それぞれ鉄(3価)とマンガン(4価)の還元物を溶解し、酸化金属と結合していた微量元素を放出する。ときとして、異なる金属間の競合によりある栄養素の最適な摂取が阻害されることがある。ちょうど、銅、鉄、カルシウムのような他の金属が存在すると、亜鉛が可溶性になり吸収のバランスが阻害されるのに似ている(Kiekens 1995)。

植物の種類が異なると、同じ条件下でも土壌からは同じ金属が異なる割合で摂取される(Alloway 2005)。Davis and Calton-Smith(1980)は、レタス、ホウレンソウ、セロリ、キャベツは大量のカドミウムを蓄積する傾向にあるが、ジャガイモの茎、トウモロコシ、マメ、エンドウマメは少ししか蓄積しないことを報告している。わが国には、カドミウムの作物間の吸収量について膨大なデータが蓄積されている。

微量元素と健康
ここでは、人間と動物にとって基本となる必須元素のうち生化学元素(炭素、酸素、水素、窒素、リン、硫黄)と他の元素(ナトリウム、マグネシウム、塩素、カリウム、カルシウム)については述べない。しかし地球上に存在する90種の元素の大部分は、人間の体内に100mg/kgかそれ以下の濃度で存在する。これらの元素のうちのいくらかは、体内で必要な機能を果たすことが知られている。他の元素のいくつかは、臨床症状で供給不足が観察されることがあるが、正確な生化学的な機能はわかっていない。

しかし大部分の元素が、なんらかの特別な生化学的機能があるかどうか分かっていない。すべてではないが大部分の元素は、仮にある特別な化学式である濃度以上に食物中に存在すれば、人間の体には毒となる。これは、必須元素には安全で適正な摂取濃度範囲があることを意味する。元素濃度がこの範囲を越えたり不足したりした場合、毒性や欠乏症となり健康に問題が生じる。ある元素に何らかの生化学的機能がないということは、濃度の閾値はおそらく毒性を越えるところにあるだろう。

人体の主な構成元素、すなわち多量栄養素および必須微量栄養素、同じく証明されていないが疑似必須微量栄養素を以下に示した。

  • 人間・動物の主要元素:C, N, O, Ma, Mg, P, S, Cl, K, Ca
  • 人間・動物の必須元素:Cr, Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Se, Mo
  • 人間・動物の予想必須元素:F, V, Ni

残りの元素は今のところ必須ではないが、それらのいくつかは将来必須になるものもあるだろう。大陸の地殻の上層部における元素の平均濃度(Wedepohl 1995)と、表層土壌の中央値(Bowen 1979)のデータは信用に値する。多くの場合、土壌の中央値は地殻の平均値にむしろ類似している。

いくつかの元素は他のものより移動性に富んでいるから、下層へ浸透するので土壌表面では枯渇している。一方、植物の根は元素を摂取し、植物の腐植物質によって土壌表面へ返されるので、土壌表面ではいくつかの元素が下層より比較的濃度が濃くなる(Goldschmidt 1937, Steinnes and Njastad 1995)。これは"plant pumping:植物による輸送"として知られている。これはカリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛のような植物栄養素にとっては明白なことであるが、ルビジウム、セシウム、バリウム、カドミウムのような、いくつかの植物によってすぐに吸収される他の成分の表面濃縮の説明にも使用できる。海洋性のエアロゾルや海洋からの揮発性有機化合物の供給や、火山活動からの供給は、土壌表面の元素濃度に大きな影響を与える。ヨウ素とセレニウムは、海中から大気を通して沿岸地域へ供給される(Lag and Steinnes 1974, 1976)。ヘクラ火山の爆発にるアイスランドの農用地へのフッ化物汚染(Lag 1990)もその例である。

以下に微量元素に関係する地理医学の問題点を元素別にいくつか紹介する。

ホウ素:
ホウ素は植物の成長に必須であるが、人間におけるホウ素の作用は分かっていない。ホウ素の過剰摂取は、次のようなホウ素中毒症を引き起こす:胃腸の撹乱、紅斑性皮膚発疹、鬱病による中枢神経刺激の兆候(WHO 1996)。潅漑農業では、用水中に高濃度のホウ素があるため土壌ホウ素が増加し、作物のホウ素濃度が高まるので問題がある。

コバルト:
コバルト欠乏はしばしば羊に、ときとして畜牛でも観察される。コバルト欠乏はニュージーランド、オーストラリア、イギリスに広がっているが、スカンジナビアの一部でもしばし発生している(Froslie 1990)。環境におけるコバルトの状況とロシアにおける甲状腺腫の発生率に関わる知見を除いて、人間の風土病問題がコバルトに関連していることは知られていない。このことは、さらに研究する余地がある。

銅/モリブデン:
動物の銅欠乏と銅中毒の問題は、いずれも自然界ではありふれた問題である。とくに羊において(Froslie 1990)。いずれの場合も、モリブデンによって引き起こされる銅の拮抗作用に影響される。それゆえ、とくに反すう動物では飼料中の銅/モリブデンの割合が重要である。過剰なモリブデンは、十分な銅レベルでなければ銅欠乏の原因となる(モリブデン病)。一方、モリブデンの摂取が極端に低いと、比較的中程度の銅レベルでも毒性が生じる。

興味深いことに、銅欠乏および/またはモリブデン病は、酸性雨の影響を受けているスウェーデン地域のヘラジカにみられる複雑な疾病の原因である(Frank 1998)。この疾病の臨床的兆候は、急性心停止と骨粗しょう症を含む多因性の病で、理由はヘラジカが生息する環境の土壌と水のpHが上昇し、それにともなって植物の銅とモリブデンの可給性が変化したためと考えられている。人間の銅欠乏は大人では比較的稀であるが、とくに栄養失調の状態で子どものさまざまな疾病と関係している。しかし、人間の医学における銅と地理医学の相互関係は、今までのところ結論が出ていないままである。

フッ素:
自然界におけるフッ素の含量は、地理的な条件に大きく影響を受ける(Havellら 1989)。このことが人間と動物の健康に大きな影響を与える。フッ素欠乏は、虫歯に連動している。飲料水にフッ化物を添加するとフッ化物濃度が増加するので、このことを実施している国もある(Edmunds and Smedley 2005)。しかし安全で適正なフッ化物の摂取は、きわめて狭い範囲にかぎられる。WHO(2004)の飲料水フッ化物濃度のガイドラインは、1.5mg/Lである。7000万人のインド人と4500万人の中国人を含む世界の2億以上の人々が、この値を超えたフッ化物を飲料水から摂取していると考えられる(Edmunds and Smedley 2005)。スリランカでは、子どもの間で斑状歯(フッ素の過剰摂取で生えるといわれる褐色の着色歯)の発生率が高い。フッ化物に富む鉱物を含む岩石がほとんどの国に内在するにもかかわらず(Dissanayake 1991)、年間雨量が200mmを超える西の地域では、フッ化物の問題はほとんどない。一方、乾燥している西と北中央地域ではフッ化物が豊富である。この違いは、明らかに雨の多い地域ではフッ化物が広い範囲で侵出しているためである。

ヨウ素:
ヨウ素は人間と動物にとって必要な成分で、甲状腺ホルモンサイロキリンの構成成分である。ヨウ素の供給が十分でないと、一連のヨウ素欠乏疾患(IDD)を引き起こし、もっとも一般的なものに地方病性甲状腺腫がある。胎児の発達途中や幼少期のヨウ素の欠乏は、発育不全や一般的発達に伴って脳障害をひきおこす風土特有の疾病をつくりだす。

この脳障害は明らかに物理的影響がないときに発生し、おそらく現在地球上にもっとも蔓延した地理医学的な問題で、16億人の人々が危険にさらされている(Dissanayake 2005)。現在もっともIDDの影響を受けている地域は、大部分が発展途上国に位置している(Fuge 2005)。それは、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ大陸の連続している大きな地域である。しかしながら、西欧の裕福な国でさえも5000万人から1億の人々が危険にさらされていると示唆されている(Delange 1994)

マンガン:
マンガン欠乏について、人間の健康問題に関連している疫学的研究がある。Marjanen and Soini(1972)は、土壌のマンガン含有量とがん発生率(すべてのがんを含む)の間に強い負の相関があることをフィンランドの179行政区の研究から明らかにした。南アフリカとイランのいくらかの研究は、食道癌の発生率とマンガン欠乏に関連性があることを示唆している(Deckers and Steinnes 2004)。南アフリカにある健康問題、すなわちムセレニ関節疾患もマンガン欠乏に関連している(Finchamら 1981)。おそらく、マンガンの地理医学的役割を解明するために果たさなければならない課題が山ほどある。

セレン:
土壌中のセレン濃度は、きわめて地理学的な影響を受ける。これは、安全で適切な摂取量の範囲が狭いことに加えて、地理医学的な問題は、人間と家畜の両方にセレンの欠乏と過剰問題が関連していることを意味する。アメリカでは、例えば大草原地帯の広い領域でセレンが豊富な土壌が存在し、ここで家畜にとって毒性のレベルになる植物が生育している。この地域からとれる小麦は、長い間ノルウェーで焼かれるパンの小麦粉の主な原料として使用しているが、このことがノルウェー人のセレンの状態がよい主な理由であると考えられている(Meltzerら 1993)。一方、セレンの欠乏は動物の白筋症に関連していて、アメリカの北西部と同様に北東部の多くの州で観察されている(Muth and Allaway 1963)。中国は地理的に土壌のセレン濃度が極度に変化する国で(Fordyce 2005)、地域的に低濃度および高濃度の両方の土壌があることで地理医学的な問題が介在している。

先進国におけるセレンの状態は、食事の内容に依存して人種間でかなり異なる。1970年あたりのフィンランドは、セレン摂取が少ない集団であった。同じころ、フィンランドにおける心臓血管疾病の発生率は世界の中でも高かった。その原因の一つは、セレンの摂取が少ないことにあると考えられた。それゆえ、肥料にセレンを添加した大規模な実験が開始された。これによってパンの穀物のセレン含有量が増え、最終的に集団の血清のセレン濃度が約2倍になった(Hartikainen 2005)。

発展途上国では、多くの人々が地域で生産された食物を食べて生きているので、すでに述べたようなセレン欠乏による深刻な健康問題がある。中国では、Kashin-Beck病のような地理的に広範な風土病、慢性の関節炎と関節の変形を引き起こす地域的な骨関節症、心臓の筋肉が損傷を受ける心筋症であるKeshan病などが、セレン欠乏に関連しているとみられる(Tan and Hou 1989)。Keshan病は、主にレゴソル(regosol:非固結岩屑土)とレプチソル(leptosol:山岳地帯や乾燥地帯の石の多い土壌)が分布している土壌地帯の侵食された丘で最も流行している。イネは他の地域の穀物より土壌からより効率よくセレンを吸収するので、イネを豊富に食べている人々は他の食習慣の人々よりセレン欠乏の症状を示さない。セレン欠乏の影響を受けている集団へ、今ではセレンを補給することによってこれらの健康問題は大幅に減少している。

Kashin-Beck病とヨウ素欠乏症との間には類似性がある(Forsyce 2005)。甲状腺機能におけるセレンを含む酵素(iodothyronine deiodonase)の役割が最近解明されたことに加えて、セレン欠乏症は、もっと一般的な意味でヨード欠乏異常との関連で研究されている。セレンとヨウ素欠乏の関係は、中央アフリカのある国のクレアチン症状の高い発生率からも示唆される(Kohrel 1999)。セレン欠乏症は、スリランカのヨウ素欠乏症で悩んでいる集団で実証された(Fordyceら 2000)。

Lag and Steinnes(1974,1978)は、ノルウェーの森林土壌中のセレンが海岸からの距離に応じて規則的に減少していることを発見した。海岸近くでは約1.0mg/kg、海洋の影響を遮蔽された地域では<0.2/kgであることから、沿岸地域では海洋がセレンの重要な源であることが分かる。海水のセレン含有量が極端に低い(0.1μg/L)ことを考慮すると、これは驚くべき事実である。

Cutter and Bruland(1984)は、海洋の表面水に溶解している全セレンの約80%が有機セレン化合物であることを明らかにしている。Mosherら(1987)は、海洋のエアロゾルに特異なセレンが豊富に存在することを見つけ、その濃度が海洋の基礎生産力に関連していることを明らかにした。Cooke and Bruland(1987)は表層水に溶解しているセレンの化学種を調査し、揮発性の有機セレン化合物、主としてジメチルセレナイド、(CH3)2Seの存在を明らかにした。これをもとに、ジメチルセレナイドガスの大気への放出が、溶解セレンを水系から取り除く重要な働きになると想定した。それゆえ一般的に言って、海洋のセレンがセレン濃度の低い陸地へ輸送されることは、地理医学的な要因として重要であると思われる。

亜鉛:
亜鉛は、人間の栄養として最も重要な必須微量元素のひとつで、数多くの酵素作用のために必要である。亜鉛が必須である役割の例に、(a)妊婦は妊娠期間中に最も重要で、通常時より食事に多量の摂取が必要(Jameson 1982)、(b)幼児の脳の成長に重要(Prohaska 1982)、(c)免疫能力に極度に重要(Nauss and Newberne 1982)、などが挙げられる。赤肉は特に亜鉛のよい供給源で、全粒穀物、豆、玄米もまた日常的に亜鉛を摂取するための重要な供給源である(Oliver 1997)。

世界には、主要作物であるイネやトウモロコシやコムギを供給できない亜鉛不足の土壌が広く分布している。Alloway(2005)によると、世界で最も広く分布している必須元素欠乏は亜鉛であるという。多くの国の大部分の耕地土壌が、亜鉛欠乏の影響を被っている(Singh 2001)。最初に亜鉛欠乏が発見されたのは、1960年代初めの中東地方である(Nauss and Newberne 1982)。1960年代半ば、南アフリカのトウモロコシ栽培地域で亜鉛欠乏が大きな問題になった。そこでは、亜鉛をNPK化学肥料と過リン酸肥料に含め施肥した。この処理は今なお実施されている(Deckers and Steinnes 2004)。

食生活における亜鉛欠乏は、アメリカ(Nauss and Newberne 1982)やスウェーデン(Abdullaら1982)のような産業化された国でも認められている。ゆるやかな亜鉛欠乏は、前述したように中東における青年期の栄養的小人症の病因的因子として認められる。その基本的特徴は、性成熟の著しい遅れと小人症である(Hambidgeら 1987)。フィチン酸塩の摂取が亜鉛代謝に悪影響を与えると想定されており、フィチン酸塩に豊むパンの消費がこの問題の原因と考えられている(Reinholdら 1973)。上記の研究は、他の研究では説明できていない(Hambidgeら 1987)。

将来必要な地理医学の研究
微量元素の生物地球化学に関する最も最近の国際会議では400件以上の論文が報告され、その大部分が土壌に関係していた(Zhuら 2007)。しかし論文の圧倒的な部分は、汚染に基づく毒性微量元素とこれらの元素のヒト暴露防止対策に関する論文であった。この会議で地理医学の問題を扱った論文は、おそらく片手で数えられるほどであろう。この現状は、自然界で発生する微量元素の調査研究の重要性を考えるとむしろ失望に値する。土壌汚染の研究は本質的に重要であるが、世界中の自然界で起こっている人間と家畜への元素の不均衡な供給に関わる問題は、土壌汚染よりもっと大きな課題である。

人間の健康と土壌の必須元素状態を関連づける研究の多くは、ほとんどそれぞれの地域で生育した食料に依存しているので、開発があまり進んでいない国で行われている。しかし地理医学に関わるこの問題は、バランスのとれた食事がとれる先進国でも存在している。この課題に関して一つの特異的な進歩は、有機農業の急速な発展である(Steinnes 2004)。有機農業の目的は、動物の飼料と肥料について栄養素を自給自足することで、もっとも極端な形態は化学肥料や商業飼料を受け入れないことである。土壌にある自然の化学物質と有機物が結合するという有機物質の循環が、植物と動物に十分な量の栄養素を提供するという考え方である。

しかし両者を比較検討した結果(Oborn 2004)、有機農業における生産物の主要栄養元素(K、P)と必須微量元素(Zn,Se)を眺めてみるに、いずれも元素間に調和的なバランスはないことが判明した。仮に農家とその相談相手が地域の地質化学的な知識と、植物と動物の微量栄養素の必要性についての知識が不十分であって、穀物と動物の欠乏に関連した疾病に直面すれば、生産物は減少するうえ品質は劣化するだろう。有機農業が受け入れられて実践に移されると、微量元素を飼料に添加したり、自然からの供給では不十分であるとわかっている、例えばカリ肥料のような元素を施用することで、これらの問題が解決されていくであろう。

Agromedicine を訪ねる(19):Journal of Agromedicine
以下のことは、「情報:農と環境と医療10号」ですでに書いた。「農医連携」という言葉は生命科学全般を指向する北里大学で新しく使用しはじめたものだ。それに相当する英語に、例えばAgromedicineがある。1988年に設立されたThe North American Agromedicine Consorium(NAAC)は、Journal of Agromedicineという雑誌とニュースレターを刊行している。

この雑誌の話題には、農業者の保健と安全性、人獣共通感染症と緊急病気、食料の安全性、生教育、公衆衛生などが含まれる。Journal of Agromedicineの目次は、これまでもこの情報創刊号から紹介している。今回は、2011年の第16巻の1号の目次を紹介する。

第16巻1号
  • Journal of Agromedicine Names its 2011 "Leader in the Field"
  • Journal of Agromedicine "Leader in the Field"2011: George A. Conway
  • Incidence and Cost of Nonfatal Farm Youth Injury, United States, 2001-2006
  • Results From Inspections of Farmer-Installed Rollover Protective Structures
  • Dealing With Pre-ROPS Tractors: Is a Trade-in Program the Solution?
  • Prevention of Occupational Respiratory Symptoms Among Certified Safe Farm Intervention Participants
  • No Evidence of Infection With Avian Influenza Viruses Among US Poultry Workers in the Delmarva Peninsula, Maryland and Virginia, USA
  • Unintentional Needlestick Injuries in Livestock Production: A Case Series and Review
  • Self-Reported Musculoskeletal Pain in Latino Vineyard Workers
  • Human-Animal Medicine: Clinical Approaches to Zoonoses, Toxicants and Other Shared Health Risks, by Peter M. Rabinowitz and Lisa A. Conti, Missouri: Saunders,2010, 432 pp., $99.95 hardcover. George F. Henning

資料の紹介 17:シンポジウム‐食がカラダを変える!‐
古代ギリシャの医者、ヒポクラテスの言葉「食べ物について知らない人が、どうして人の病気について理解できようか」
は、本号の「土壌と健康:1.土壌と地理医学」でも活用した。食がカラダの基本であることに異を唱える人はいない。健康にしろ病気にしろ幸福にしろ、体の原点は食にある。

「平成19年国民健康・栄養調査結果」によると、メタボリックシンドローム該当者・予備軍(40~74歳)は約2010万人、糖尿病該当者・予備軍(20歳以上)は約2210万人と推定されている。未病(はっきりとした病気に陥る以前の軽微な予兆がみられる状態)の予防が、健康面での重要な課題になっている。

産経新聞では昨年の12月12日、食や医療の専門家を招き、食と病気予防の関係や体によい食とは何かを考える「食がカラダを変える」シンポジウムを開催した。その模様が平成23年1月20日の産経新聞20面全面に詳しく掲載されているので、概略を紹介する。

講演1:食と未病~病気にならない食習慣とは~
天野 暁:東京大学・食の安全研究センター特任教授

漢方では、大宇宙のリズムに個人の身体プログラムを合わせる「天地合一」という考え方がある。自然と人間は常に一体になって動いており、気持ち、食欲、食事、睡眠、便通などが調和できている状態が健康という考えである。未病を治すというのは異常値を正常値に戻すことではなく、個々のQOL(生活の質)を高め、無病のまま人生を送ることである。

健康を保つために漢方で大事にするのは、気・血・水のバランスである。気は体の働きを調整する生命のエネルギー、血は全身にめぐって体を養う栄養成分、水は体を潤す清浄できれいな体液のこと。

未病を治すには、1)おなかを温める。食材はネギ、ニンニク、シソ、蜂蜜、鶏肉、牛肉など。2)気の流れを良くする。黒豆、ゴマ、クラゲ、大根、レンコンなど。3)粗食でおなかを丈夫にする。ソバ、カボチャ、サツマイモなど。4)ビタミンの宝庫・野菜をとる。トマト、ブロッコリー、シイタケ、タマネギなど。これは医食同源の基本。

病気にならない食習慣で大切なポイント。1)食事のバランス、2)脳と美容のためにかむ、3)腹八分目、4)若さと美容を保つには植物性エストロゲンと果実、抗酸化物質、コラーゲンをとる、5)やせるにはアボガドやピーナツ、魚・肉などの良質な脂をとる、6)塩を少なく酢を多めにする。漢方には「福は口から」という言葉がある。

講演2:胃腸の科学~いかに食べ、いかに飲むべきか~
佐藤信紘:順天堂大学名誉教授

人間のもとはイソギンチャクのような生物。海水を口から取り入れ必要なものだけをおなかで消化吸収し、口からまた吐き出すが、食べられるかを判別するため、口元の神経が発達している。発生学的には口元に集まった神経系によって脳ができたので、脳には腸管の神経系が基本にある。毒物が体に入ると、吐いて体を維持する。これはおなかの中で毒物か栄養物かを判断する神経が働くから。

おいしいものを食べたいなら、筋肉を使うことが大事。吸収した栄養は肝臓にグリコーゲンとして蓄えて使うが、使いきれないと内臓脂肪や皮下脂肪の脂肪細胞でもためる。脂肪を燃やすには空腹時に走ると効果的。血糖値が高い人は、食後30分から1時間半に走ると血糖値が上がりにくくなる。

脳にも胃や腸と同様のホルモンがあり、神経を介して脳とおなかのやりとりが行われる。中でも免疫系は8割がおなかにあるといわれ、免疫脳を活性化するにはおなかを働かせればいい。食べることでおなかが働き、脳が働き、免疫系が働く。

がんで一番多いのは肺で、次に胃・大腸・肝臓など消化器系が続き、食べ物が原因だと言われている。食事は体を変えるだけでなく、病気をコントロールするともいえる。日本人の長寿は主食と副食を分けているからで、特に米、玄米や胚芽米が優れている。

酒はエネルギーになると同時に薬効や解毒システムもあり、適量を飲めば病気のリスクが減る。多すぎるとリスクが高くなり安全域が少ないので注意が必要。

講演3:食は心を育てる
渡邊 昌:生命科学振興会理事長

人間の体には10億年以上の進化の歴史が秘められている。始まりは腸腔のみの生物だった。腸管壁の迷走神経は脳と直通通路でつながり、例えば胃の中に食べ物が入ってくると、迷走神経を介して直接脳に情報が伝わる。腸内環境が脳に影響を及ぼしている。

食事と子供の心の育ち方が、密接につながっていることもわかってきた。脳の神経経路は大きく分けるとセロトニン径路とドパミン(原文のまま)径路の2種類で、ドパミン径路は興奮しやすい状態に保ち、セロトニン径路は脳の雑音を減らし、刺激がきたときにすぐに拾いあげるようにしている。

生後離乳期から2,3歳くらいまでに、これらの径路は完成するが、成長過程で不規則で偏った食事やたばこなどの影響を受けると、思春期や青年期に精神面で影響が出ることもある。赤ちゃんは、羊水を飲んだり吐いたりしている。そのころから消化器への影響があると考えられる。このことからも「食育」は大事である。

健康を保つ秘伝。まず玄米食。おかずは「まごたちわやさしい」(まめ、ゴマ、卵、乳、ワカメ、野菜、シイタケ、芋)。国民栄養調査のデータをもとに計算すると、これらを適当に食べているだけで、ビタミンやミネラルは必要なだけとれる。エネルギーもちょうどいい。日本が世界にアピールできるのは日本食。日本食を食べて健康長寿を達成すべし。

なお、このほかの情報は「産経health」に掲載されている。メタボリックシンドロームに関する情報、小児肥満についての情報、健康についてのシンポジウムの情報、ヘルシーメニューなどが紹介されている。http://www.sankei-health.com/

言葉の散策 32:断腸
語源を訪ねる 語意の真実を知る 語義の変化を認めるそして 言葉の豊かさを感じ これを守る
国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ
美し国そ 蜻蛉島 大和の国は ‐万葉集:舒明天皇‐

長江の峡谷地帯三峡を下ったことがある。詩仙李白の「早に白帝城を発す」が詠われた渓谷だ。「朝に辞す白帝彩雲の間 千里の江陵一日にして還る 両岸の猿声啼いて住まざるに 軽舟已に過ぐ万重の山」

渓谷にこだまする猿の悲しげな鳴き声が、両岸から絶え間なく聞こえる、と詠われている。筆者も確かに猿声を聞いた。ところが悲しげでない。中国人の声に似た耳に残る甲高い猿声なのだ。詩仙と愚人の感性と耳は、かくも異なるのかと仰天した思いがある。

後で知った。李白の時代の猿は、われらが知る今の猿ではないのだ。テナガザルの類なのだ。英語で言えばモンキーでなく、ギボンと呼ばれる。種類が異なる猿なのだ。手足の長い猿が長江の昼なお暗い木々の合間で、甲高く悲しげな声を発していたのだ。この種の猿は今では暖かい地方へ南下したと言われている。

圧倒される雄大な自然が続く三峡では、猿によせて多くの詩が作られているという。そのうちの一つに詩仙杜牧の「猿」がある。「月白くして水暗に流る 孤猿恨みを銜(ふく)んで中秋に叫ぶ 三声断えんと欲して腸の断つかと疑う 饒(おお)くは是れ少年も須らく白頭なるべし」

若くして科挙の進士に及第し、エリート官僚としての道を歩みながらも、その人生を振り返り、もの悲しい猿の声に託して、自分の悲しみを詠っている。断腸、はらわたが断ち切れるようだと、詠っている。

さて、この詩に詠われている「断腸」の語源が『世説新語』にある。四世紀のころ、晋の武将の桓温が長江をさかのぼって蜀の奥地に攻め入った。そのとき、家来の一人がふざけて岸辺で遊んでいた猿を捕獲した。すると母猿が悲しんで、どこまでも船を追いかけた。最後にもんどり打って船中に飛び込んできて死んでしまう。そこで母猿の腹を裂いてみると、腸がずたずたになっていたという。これが「断腸」の話のおこりだという。悲しいかな母親。偉大なるかな慈親。

永井荷風の作品に「断腸亭日乗」「断腸亭主人」などの作品があるが、これは上記の断腸とは異なる。荷風が住んだ一隅を『断腸亭』と名付けた。『断腸亭』の名は、荷風が腸を病んでいたことと、秋海棠(別名:断腸花)が好きだったことに由来するそうだ。

ちなみに、断腸花はシュウカイドウ(秋海棠)科の多年草。中国からマレー原産の観賞用植物で、江戸初期の渡来とされる。しばしば野生化している。地中の球茎が零下10℃に耐える唯一の耐寒性ベゴニアで、新茎の下端が秋末に肥大して新球茎となる。茎は肉質・多汁。節は紅色。高さ約60センチメートル。9月ごろ、淡紅色の単性花を開く。断腸花は秋の季語。「病床に秋海棠を描きけり:子規」。

参考資料 NHK新漢詩紀行ガイド 4:石川忠久監修(2010)
語源由来辞典:http://gogen-allguide.com/ta/dantyou.html
広辞苑

*本情報誌の無断転用はお断りします。
北里大学学長通信
情報:農と環境と医療60号
編集・発行 北里大学学長室
発行日 2011年3月1日