北里大学

北里大学農医連携教育研究センター

第8号

第8号
動物と人が共存する健康な社会

目次

  • 『動物と人が共存する健康な社会』発刊にあたって
  • 第1章 人と動物とスピリチュアリティ
  • 第2章 人と動物の望ましい関係
  • 第3章 動物介在教育~ヒューメイン・エデュケーション(Humane Education)から動物介在教育(Animal-assisted Education)へ~
  • 第4章 子どもの学習における動物の役割を考える
  • 第5章 動物福祉と動物介在教育・療法のこれから
  • 第6章 ヒポセラピー(馬介在療法)の効果
  • 第7章 馬介在療法の科学的効果-内科医の視点から-
  • 第7回北里大学農医連携シンポジウムアンケート
  • 著者略歴

発刊にあたって

北里大学学長 柴 忠義

動物介在教育・療法学会の設立趣意の冒頭は、19世紀フランスの歴史家ジュール・ミシュレーの言葉、「生命は自らとは異なった生命と交流すればするほど、他の存在との連帯を増し、力と、幸福と、豊かさを加えて生きるようになる」ではじまる。人は人と人の関係において、はじめて豊かな人であるように、人は動物との関係においても精神的な豊かさを増して生きていける。

世界保健機関(WHO)は1999年に健康の定義の改正案、「健康とは、身体的・精神的・スピリチュアル・社会的に完全に良好な動的状態であり、単に病気あるいは虚弱でないことではない」を掲げている。この定義は改正されるに至っていないが、健康におけるスピリチュアルな概念は、社会が複雑多岐にわたる構造へと変動するなかで、ますます重要になる。

わが国においても、健康に関わるスピリチュアルな課題が動物介在教育・活動・療法などを活用して研究されはじめて久しい。その結果、これらの手法が人間の健康増進、医学における補完医療、高齢者や障害者の正常化、さらには子供の心身の健康的な発達に大きな役割を担っていることが認知され始めた。

とはいえ、わが国における動物介在教育・活動・療法などを進展させるためには、活用動物の習性や行動に基づく介在方法、公衆衛生上の評価、さらには倫理規定など周辺環境の整備がまだ十分に整っていない現状がある。

20世紀が技術知の勝利であるとすれば、21世紀は技術知を活用して得られた生態知、さらには技術知と生態知を連携した統合知を獲得する時代といえるかも知れない。さらに、自然科学を活用したスピリチュアルな幸福や豊かさを求める時代ともいえるであろう。

このような視点から、北里大学農医連携学術叢書第8号では「動物と人が共存する健康な社会」の刊行を企画した。人と動物とスピリチュアリティ、人と動物の望ましい関係、動物介在教育、子供の学習における動物の役割、動物福祉と動物介在教育・療法、ヒポセラピー(馬介在療法)、馬介在療法の科学的効果などの視点から、農学と医学がどのように連携できるかをこの冊子でも考えていきたい。

この冊子により、環境を通した農と健康の問題に対する新たな発想や示唆が生まれ、農医連携の科学が少しでも進化することを願ってやまない。