第9号
第9号
農と環境と医の連携を求めて-本の紹介55選・言葉の散策30選-
目次
- 『農と環境と医の連携を求めて-本の紹介55選・言葉の散策30選-』刊行にあたって
- はじめに
- 第一部 食の安全と環境と健康にかかわる本55選
- 歴史と原論
- 食と農
- 健康と医療
- 環境
- 安全
- 第二部 言葉の散策30選
- 健康
- 環境
- 農
- その他
発刊にあたって
北里大学学長 柴 忠義
北里柴三郎博士は、研究者間のコミュニケーションを深め研究を深化させるため、月に一度は門下生らと集会を開きました。これに参加できない多くの同窓生たちは、その記録の刊行を熱望したので、博士は集会の内容を1895年に「細菌学雑誌」として刊行しています。初めの報文は、「實布垤里亞及虎列刺病治療成績報告」と題するもので、英国の世界的な科学雑誌「ネイチャー」の創刊(1869年)から26年後のことです。この雑誌の思いは、今なお「日本細菌学雑誌」として刊行され続けています。このことは、科学にとって知の共有は不可欠なものと考えていた博士の思いが息づいている証でしょう。
一方、博士の「医道論」は、医の基本は環境を配慮した予防にあるという信念を掲げ、広く国民のために学問の成果を用いるべきであると述べています。ここには、学問と実践を結びつけた実学の思想があります。ここでは、知と行の分離はありません。
北里大学ではこのような博士の達見を今なお生かすべく、六年前から環境を通した農と医を連携させるため「農医連携」という言葉を発信しています。医食同源や身土不二という言葉があるように、「農学と医学」あるいは「食と健康」はもともと分離される事象ではないのです。
これまで「農医連携」の科学を発展させるため、教育、研究および普及にかかわる事項をさまざまな形で発信してきました。本書「北里大学農医連携学術叢書第9号」の「農と医の連携を求めて-本の紹介55選・言葉の散策30選-」は、これまで学長室通信の「情報:農と環境と医療」に掲載してきた「本の紹介」と「言葉の散策」のなかから選んだ項目を一部改変し、「農医連携」の科学に適応できる教則本のつもりで刊行したものです。「農医連携」に関心のある読者の参考になれば幸いです。