北里大学病院は、いつでもどんなときでも患者さんの安心と安全のお役に立てるよう活動を続けます。

北里大学病院

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緩和ケアセンター

センター長あいさつ

緩和ケアセンター

命を脅かされる状況に陥った患者さんとご家族の苦しみを予防すること、軽減させることが緩和ケアです。がん、末期心不全、慢性閉塞性肺疾患、神経難病、重症外傷などが対象になり、診療に携わる全ての医療者が基本的緩和ケアを提供します。しかし、身体的苦痛(痛みや呼吸困難)、精神的苦痛(不安や恐怖)、社会的苦痛(環境変化や経済的問題)、スピリチュアルな苦痛(喪失感や罪責感)が複雑に絡み(全人的苦痛)、苦しみの緩和が難しいことは少なくありません。緩和ケアセンターでは、多職種のスペシャリストによる専門的緩和ケアを提供しています。特に、がんと診断されたときからの専門的緩和ケアには積極的に取り組んでおります。専門外来では、全人的苦痛に緩和医療専門医、難治性疼痛にペインクリニック専門医、がん治療の選択、合併症対策と苦痛緩和にがん治療専門医、環境変化や経済的問題、療養場所の選択に在宅医療専門医が対応できる準備がございます。がん看護専門看護師による専門外来受診相談もありますので、心置きなくご相談下さい。

緩和ケアセンター長 金井 昭文

当院の緩和ケアセンターの現状

1 緩和ケア提供体制

外来では、緩和ケア看護外来と緩和ケア専門外来があり、充実した専門的緩和ケアの提供体制が整備されています(図1)。院内の各診療科とがん相談支援センターのみならず、地域医療施設からの相談や受診依頼も受けています。緩和医療専門医、ペインクリニック専門医、がん治療専門医、在宅医療専門医による緩和ケア専門外来の診療予約を取れます。他の緩和ケアチームメンバー(表1)による臨時外来もあります。入院では、緩和ケアチームによる専門的緩和ケアの提供があり、他科入院中の患者さんの併診、緊急緩和ケア病床での集中的緩和ケアが可能です。治療抵抗性の激痛を早急に緩和させる必要があれば、緊急緩和ケア病床の入院において、痛みを伝える感覚神経を長期間鈍麻させる治療薬の注射、感覚神経の近くに管を留置して局所麻酔薬および医療用麻薬を持続投与する、いわゆるインターベンショナル治療を提供できるため、他施設からのインターベンショナル治療の依頼もあります。

北里大学病院 緩和ケア提供体制(図1)

緩和ケアチームメンバー(表1)

・麻酔科医(緩和医療専門医,ペインクリニック専門医,麻酔専門医)
・内科医(内科専門医,がん治療専門医,在宅医療専門医)
・精神神経科医(精神神経科専門医)
・看護師(がん看護専門看護師,INE認定看護師)
・薬剤師(緩和薬物療法認定薬剤師)
・心理士(公認心理師)
・管理栄養士(栄養学専門療養士)
・理学療法士
・歯科医(歯周病認定医,障害者歯科認定医)
・歯科衛生士

2 緩和ケアセンターの活動

緩和ケアセンターでは、がん・非がんの患者さん問わず、辛さを抱えている患者さんやご家族を対象に、様々な専門職がチームを組んで、以下の活動を行っています。

  • からだの辛い症状の緩和:痛み、しびれ、息苦しさ、嘔気など
  • こころのサポート:気分が落ち込む、いらいらする、眠れないなど
  • 療養生活全般に関する相談:食事・通院・服薬・運動・外出・仕事・介護・在宅・転院など
  • お薬に関する相談
  • 療養中の食事・栄養に関する相談:食事量が少なくて心配、食事の工夫を知りたいなど
  • がんリハビリテーションに関する相談:思うように動けない、筋力が落ちてしまったなど
  • 今後の治療や生活、療養に関する意思決定支援(アドバンス・ケア・プランニング)
  • 緊急緩和ケア病床
  • 緩和ケア苦痛スクリーニングと症状緩和に関する情報の集約・分析
  • 地域における緩和ケアの推進
  • 緩和ケアに関連した研修会(医師対象・看護師対象など)

診療実績

  2019年度 2020年度 2021年度
緩和ケアチーム(実数) 264件 311件 262件
緩和ケア専門外来(延数) 491件 408件 497件
緩和ケア看護外来(延数) 100件 110件 33件

インターベンショナル治療・各種神経ブロック治療のご依頼について

当センターでは、痛みに対するインターベンショナル治療(各種神経ブロック)を行っております。

1 当センターで行っている主な神経ブロック

  • 脊髄クモ膜下鎮痛法
  • 硬膜外鎮痛法
  • 腹腔神経叢・内臓神経ブロック
  • 下腸間膜動脈神経叢ブロック
  • 上下腹神経叢ブロック
  • 不対神経節ブロック
  • くも膜下フェノールブロック
  • サドルブロック
  • 肋間神経ブロック
  • 高周波熱凝固による神経根ブロックおよび末梢神経グロック  など

2 対象

がん患者

3 地域の医療機関の皆様へ当院へのご依頼について

以下の手順でご依頼ください。

  1. 患者さんの診療情報提供書を作成し、依頼内容を記載ください。
    「宛先:麻酔科(緩和ケア)」
  2. 当院トータルサポートセンター(TSC)へ電話にてご連絡いただいた後、下記FAX番号に、診療情報提供書をお送りください。
    電話:042-778-9988
    FAX:042-778-8235
  3. 当院緩和ケアセンター担当者より、後日患者さんにご連絡いたします。
    (入院中の患者さんについては紹介元医療機関のご担当者様にご連絡いたします。)

診療情報提供書の原本は患者さんにお渡しいただき、受診日当日に当院へお持ちいただくようお伝えください。

緩和ケアセンターの特徴

1.各領域のエキスパートが集結

3人のがん看護専門看護師が常任し、今後の医療に関する相談支援は勿論、重篤あるいは複雑な苦痛のアセスメントとカウンセリング、専門的緩和ケアの準備をすることができます。専門的緩和ケアにおいては、日本緩和医療学会専門医が専従し、代表的な身体苦痛である痛みに対しては、日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会指導医および専門医などの計6人が専従し、早期に適切な鎮痛を行えます。精神的苦痛やスピリチュアルな苦痛に対しては、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、公認心理師などの計5人が専従または専任し、薬物治療の相談や指導には日本緩和医療薬学会緩和薬物療法認定薬剤師、日本医療薬学会認定指導薬剤師、栄養管理および指導には日本静脈経腸栄養学会NST専門療法士、口腔ケアには歯周病認定医、障害者歯科認定医が対応できます。また、がん治療の選択、合併症対策、苦痛緩和には日本内科学会認定内科医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、環境変化や経済的問題、療養場所の選択には日本在宅医学会認定専門医による緩和ケア専門外来があります。北里大学病院は総力を挙げて、高度な緩和ケアを常に提供できるように心がけています。

2.難治性疼痛に対するインターベンショナル治療

がん自体による痛みなどでは強い痛みを経験しやすく、強い痛みを放置すると、免疫力の低下、活動低下に伴う筋委縮や関節拘縮、血栓症や肺炎の併発もあるため、医療用麻薬で緩和させることが標準治療になります。医療用麻薬は適切に使用すれば、臓器障害は殆どなく、安全に生活の質を高めます。しかし、便秘、悪心・嘔吐、眠気を生じやすく、大量に使用しなければならないことも少なくありません。医療用麻薬を使用しがたい、使用しても十分な鎮痛が得られないときにはインターベンショナル治療(注射による治療)が可能です。腹腔内や骨盤内のがんの痛みに対する交感神経ブロック(腹腔神経叢ブロックなど)、肋骨や肋間神経のがん浸潤の痛みに対する肋間神経ブロック、直腸がんなどでの肛門や会陰部の痛みに対するサドルブロックは、一回の注射で数か月以上の鎮痛効果を期待できます。脊髄くも膜下腔(神経が出入りする脊椎の中の狭い空間)にカテーテル(細い管)を留置し、鎖骨下の皮下ポート(小さな容器)に繋げて、局所麻酔薬や医療用麻薬を少量持続投与すると、運動機能への影響は少なく、強い鎮痛作用を維持することが可能です。この脊髄くも膜下鎮痛法は、内服治療のような利便性はないですが、通院や在宅医療でも適応できます。インターベンショナル治療は、局所で痛みを取るため、便秘、悪心・嘔吐、眠気を回避することができます。北里大学病院では熟練した麻酔科医が行います。

3.専門医資格を取得できる認定施設

北里大学病院は日本緩和医療学会認定研修施設です。医師免許取得、緩和医療の5年以上の臨床経験または「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン緩和医療専門医養成コース(大学院)」の修了、緩和医療に関する筆頭の原著論文または症例報告、学会発表の業績などの条件もありますが、当緩和ケアセンターでの2年以上の研修により、日本緩和医療学会専門医の申請(認定研修施設での臨床研修は必須)ができます。専門医の要件:(1)緩和医療の専門的知識・技術に基づく臨床実践ができる、(2)緩和医療の専 門的知識・技術に基づくコンサルテーション活動ができる、(3)緩和医療の専門的知識・技術に基づく教育指導ができる、(4)緩和医療の専門的知識に基づく臨床研究ができることを満たす教育カリキュラムを組みます。すなわち、「身体症状(痛み)」、「身体症状(痛み以外)」、「精神症状」、「せん妄」、「終末期の鎮静」、「社会的な関わり」、「スピリチュアルな関わり」を中心とした症例を含み、少なくとも20症例の緩和ケアを担当します。麻酔科または総合診療部に属し、北里大学病院の職員として従事することができます。緩和医療が主体となりますが、麻酔科では麻酔薬や鎮痛薬の使用法、呼吸循環動態の急変への対応、インターベンショナル治療の手技を学ぶことができ、総合診療部では総合内科学の研修、在宅診療(在宅緩和ケアを含む)の実践を行えます。

4.臨床研究、学位取得の指導

北里大学病院緩和ケアセンターでは臨床研究を指導することができます。北里大学医学部・病院倫理委員会の承認を得て、承諾の得られた患者様に限り、実臨床の中でのデータ収集と分析、社会貢献を目指した研究成果、論文作成にチャレンジします。以下に、国際学術誌に掲載された我々の実臨床データに基づく原著論文を列挙します。(11)、(18)、(19)は博士(医学)学位を取得した主論文です。(20)のデータ収集に要した期間は2日間で、短期間でも有意義な臨床研究、社会貢献できる国際学術誌の掲載は可能です。がん患者は、化学療法中の免疫力低下などで帯状疱疹を発症しますが、帯状疱疹後神経痛として、しばしば強い痛みが続きます。(14)、(17)の治療は重篤な副作用なく帯状疱疹後神経痛を緩和させます。(19)の方法は医療用麻薬の効果と副作用を予測するのに役立ちます。(3)、(5)、(6)、(18)は三叉神経痛の標準治療として海外でも推奨されており(Moore D、 et al。 Br J Anaesth。 123: e385-96、 2019)、世界的教科書にも掲載されています(Wall & Melzack's Textbook of Pain - 6th Edition)。北里大学病院緩和ケアセンターでは、緩和ケアの更なる充実と発展に日々努力しています。

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