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新しい内視鏡治療について【内視鏡センター】

1.光線力学的療法(PDT: photodynamic therapy)

食道がんの化学放射線療法後または放射線療法後に、食道内にがんが遺残(完全に治りきらなかった)または再発(一旦消失したが再び出てきた)した場合、救済(サルベージ)治療が行われます。救済治療において、内視鏡的腫瘍焼灼術や内視鏡的切除ができない場合、以前は手術が行われていましたが、新たな選択肢として光線力学的療法(PDT: photodynamic therapy)が加わっています。光線力学的療法(PDT)はレーザ治療の1つで、腫瘍親和性の高い薬剤(光感受性物質)を静脈内に注射し、その後、病巣部分に内視鏡下にレーザ光を照射することで光化学反応を引き起こし、腫瘍を壊死させる治療です。この治療で使用する光感受性物質は、正常な部位よりもがんに集積する性質があるため、レーザ光が照射されたがん以外の部位には障害が少ないという特徴があります。光感受性物質の注射は病室で行い、その後日焼けを防止するため遮光(光を避けること)を開始します。入院は2週間程度です。

  • 図1:PDT半導体レーザ

    図1:PDT半導体レーザ

  • 図2:PDTプローブ

    図2:PDTプローブ

  • 図3:光感受性物質を注射して4-6時間後に内視鏡で 観察しながら、がんにレーザ光を照射

    図3:光感受性物質を注射して4-6時間後に内視鏡で観察しながら、がんに
    レーザ光を照射

2.下部ESD

◎ESDとは

ESDとは、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection)の略語です。2011年に保険治療として行われるようになりました。従来行われていた内視鏡粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection;EMR)では切除できないような病変に対しても、ESDを用いることによって内視鏡治療が行えるようになりました。

◎大腸ESDの適応

従来のEMRでは切除困難とされる大きな腫瘍性病変(腺腫や早期癌)のうち、病変が比較的粘膜の浅い部分に留まる病変が大腸ESDの適応となります。リンパ節転移などが疑われる病変や、粘膜深層まで進行した病変は大腸ESDの適応にはなりません。

◎大腸ESDの方法

大腸ESDは病変直下に粘膜下層へ局注液を注入し病変を膨隆させたのちに、電気メスで病変周囲の切開や剥離を行い病変を切除します。

大腸ESDにより、以前は外科手術を必要とした大きな病変も一括切除可能となりました。当院でも2020年度は70件のESDを行っています。

3.金属ステント(WONに対する内視鏡治療)

急性膵炎後の膵・膵周囲液体貯留に対する内視鏡治療

急性膵炎後の合併症として膵・膵周囲液体貯留があり、成因や発症時期に応じて分類されています(図1)。特に壊死性膵炎後のWONが問題となることが多く、細菌などが感染することにより重症化し、時として致命的になります。以前は外科手術を行っていましたが侵襲(体に対するダメージ)が大きいため、より低侵襲で治療効果に遜色のない超音波内視鏡を用いた経消化管的ドレナージ(感染したものを排液させること)が近年は行われています。

方法としては、超音波内視鏡という内視鏡の先端に超音波がついている特殊な内視鏡を用いてWONを描出し、超音波ガイド下に細い針を穿刺し、ドレナージ用のステントを留置します(図2)。従来はプラスチック製のステント(PS)が用いられていましたが、径が細いためにドレナージ効果が不十分となってしまうことがありました。そこで、よりドレナージ効率を高める目的や瘻孔(通り道)の早期形成を目的に、ステントの両端が逸脱を予防するためにアンカー型になった専用の金属ステント(ルーメンアポージングメタルステント:LAMS)が開発され2018年9月より使用が可能となりました(図3)。LAMSは15mm~20mmと径が太いこと、先端の高周波発生装置を利用して穿刺からステント留置までより安全に短い手技時間で処置が完遂出来ることが期待されています。またLAMSのみでは改善が得られない場合には、LAMSを経由してWON内に内視鏡を直接挿入し壊死物質を直接除去する、内視鏡的ネクロセクトミーを実施することが可能です(図4)。

  • 図1

    図1:
    a:膵/膵周囲液体貯留の分類(改定アトランタ分類)
    b : WONの例  不整形な被包化された壊死巣を認める

  • 図2

    図2:
    a : 超音波内視鏡を用いて消化管(主に)からWONに専用の針で穿刺を行う
    b : WONと胃をつなぐようにステントを挿入する

  • 図3

    図3:本邦で発売された新しい金属ステント
    両端がダンベル型をしており、逸脱予防をしている

  • 図4

    図4:新しい金属ステントを用いたネクロセクトミー
    内視鏡をWON内に挿入して直接壊死物質を除去している

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