整形外科のご案内

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午前8:30〜11:00(初診・予約)
午後1:00〜4:00(予約)
直通電話番号:048-590-1551


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⽇・祝⽇、第2・4⼟曜、第1・3・5⼟曜午後

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診療科紹介

運動器とは、身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。 運動器はそれぞれが連携して働いており、どのひとつが悪くても身体はうまく動きません。整形外科はこの運動器の疾患を扱う診療科です。様々なメディカルスタッフと協力して、運動器疾患を正確に診断し適切な治療を提供しています。
整形外科Dr占部憲
占部 憲
副院長/部長/医学部教授
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主な対象疾患

 当科は運動器、すなわち上肢、下肢、関節、脊椎といった器官の外傷や疾患による痛みや機能障害、変形による患者さんの苦痛や日常生活の不自由に対する治療を行っています。なお、一般外来とともに、ひざ関節センター股関節外来といった専門外来を開設してきました。2021年度からは新たに脊椎外来を開設します。
これらの専門外来では、それぞれの患者さんに最も適した治療法を選択し、患者さんがご自分の病気とその治療方法について十分理解できるように説明を行い、より良い医療が提供できるよう心がけています。
治療は保存的治療(手術をしない治療)と手術的治療に大きく分けられます。専門外来では適切な診断を行い、高度で適切な保存療法及び手術治療とその後のリハビリテーションを行います。常に最新の知識と技術を取り入れて、患者さんによりよい治療とリハビリテーションを提供しています。術後は回復期リハビリテーション病棟で十分な期間、リハビリテーションを行うことも可能です。特別な保存療法として、変形性膝関節症に対して再生医療である多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma: PRP)療法、腰椎椎間板ヘルニアに対して椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)も行っています。

主な症状

  • 疼痛(痛み)
  • 可動域制限(動きが悪い)
  • 不安定性(グラグラする)
  • 筋力低下(力がはいらない)
  • 感覚障害(しびれる、にぶい)

診療内容と特色

変形性膝関節症の手術療法として関節温存手術(骨切り術)と様々な種類の人工膝関節置換術を行っています。患者さんの年齢や活動性、変形性膝関節症の程度などを考慮し、その患者さんに最も適した手術治療を行います。
また人工関節手術、外傷手術は最小侵襲手術(Minimally invasive surgery : MIS)を行っています。
運動器の外傷である骨折、脱臼、靭帯損傷、関節軟骨損傷、半月板損傷に対し、関節鏡視下手術を応用して治療しています。広範囲の外傷性軟骨欠損や離断性骨軟骨炎に対しては自家培養軟骨細胞移植術を受けることができます。
また広範囲の骨や靭帯、半月板などの欠損に対し、他のヒトから採取した同種組織を移植する同種組織移植術を適切に受けることができます。

多血小板血漿(PRP)を用いた変形性膝関節症に対する治療

PRPとは何でしょうか?

血液の中には、傷を治す働きを持つ「血小板」という成分があります。この血小板を高濃度に濃縮し活性化させたものが多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma「以下、PRPと呼びます」)です。PRPにはたくさんの成長因子が含まれていて、細胞の成長を促進する力があります。このPRPの力が、人の本来持っている治癒能力や組織修復能力、再生能力を最大限に引き出し、傷んだ関節などの治癒を促すと考えられています。

PRP治療について

あなた自身の血液から得られるPRPを疾患や傷がある部分(患部)に注射する治療です。
PRPの抽出は、安全性が厚生労働省より認められた医療機器を使用します。あなたご自身の血液を用いるため、拒絶反応が起きる可能性は極めて低いと考えられており、採血と注射のみで終わりますので、あなたの体への負担は比較的少なく済みます。なお、対象となる疾患は、変形性膝関節症です。

提供される再生医療等の流れ

(1) あなたの血液を30mL~32mL採取します。
(2) 遠心分離機に2回かけてPRPのみを取り出します。
(3) 膝関節を触診し関節水症の有無を確認します。
(4) 感染創がないことを確認の上、PRPを膝関節に注入します。
(5) 注入後の注意点を説明します。
(6) 体調に変化がないか確認後帰宅します。

提供される再生医療等の流れ

他の治療法との比較について


変形性関節症などにはヒアルロン酸注入がありますが、ヒアルロン酸は関節腔内から3日で消失します。この様な場合PRP治療は、おおむね1回の治療で、6~12ヶ月効果が持続するとの報告がありますが、長期にわたる治療効果は確認されていません。

今までの治療法とこの治療法により予期される効果及び副作用等の比較について

通常は薬で症状が改善しない場合は、より強い薬に変えることがあります。しかし強い薬は胃腸を悪くすることがあり、また他にも副作用や合併症が出て薬の投与を中止する場合があります。海外では、このPRP注射直後に機能の改善と痛みの減少がみられたとの報告もあります。当院でも治療のうえで効果的かつ安全な方法であると考えておりますが、治療効果や効果の持続期間は個人差がありますのでご了承ください。
また、患者さんによっては、患部に痛みが出ることや、痛みが長引くことも考えられますが、ストレッチやリハビリテーション等を行っても問題ありません。なお、この再生医療での治療を受けることを拒否すること又は、同意を撤回することにより不利益は生じませんのでご安心ください。
当院での再生医療等を受ける患者さんの個人情報の保護に関する事項は遵守いたします。

治療後の注意点

  • 注射後 3~4 日後は、腫れ・かゆみ・赤み・痛みが認められることがありますが、自然に消失していきます。
  • 投与後、数日間は血流の良くなる活動(長時間の入浴、運動など)を行うことで、治療に伴う痛みが強くなることがありますが、治療効果に差はありません。治療直後よりストレッチやリハビリテーション等を継続して行ってください。
  • 関節は細菌に弱いので、清潔に保つよう心掛けてください。
※治療当日は飲酒や入浴をお控えください。

PRP療法は予約制ですので、あらかじめ整形外科外来にご連絡をお願いいたします。

予約窓口整形外科外来
受付時間平日 13:00~16:00
直通電話番号048-590-1551

PRP治療に関するお問合せ及び予約
北里大学メディカルセンター整形外科外来
TEL: 048-590-1551(整形外科外来直通) ※PRP治療の予約は電話のみです。
【受付時間】 平日の13:30~16:00(土曜日、日曜日、祝日を除く)
【お問合せ】E-mail kmc-prp@kitasato-u.ac.jp   ※問合せはメールのみの対応です(電話対応不可)。
ひざ関節センター

ひざ関節センター開設について


北里大学メディカルセンターでは平成24年6月から「ひざ関節センター」を開設しました。
ひざ関節におこる病気にはお子さんの成長にともなうひざの痛み、若い方のスポーツなどによるひざの靭帯損傷や半月板損傷といったひざの外傷、加齢による高齢者のひざの痛みである変形性ひざ関節症など、それぞれのご年齢でさまざまなひざの問題があります。この「ひざ関節センター」では、ひざ関節を専門とする医師と看護師、理学療法士、作業療法士、検査技師が協力してこれらの病気を正しく診断し、その患者さんに最も適切な治療を行っています。ひざの痛みでお困りの方はどうぞご相談ください。

またひざ関節センターでは、40歳以降に加齢にともなっておきてくる変形性ひざ関節症について、どのような病気であるのか、どのような手術以外の治療方法(保存療法)、あるいは手術による治療法があるのかについて皆さんに正しく理解していただくために「ひざ教室」を開催しています。「ひざ教室」では皆さんの現在の体の状態を評価し、皆さんにあった手術以外の治療方法(保存療法)の具体的な方法、日常生活の工夫など、普段の生活の中でできる治療方法についてもご説明しています。年に4回各地域で行います。広報誌などでお知らせいたしますのでぜひご参加ください。

担当医


医師名職位専門診療分野専門医
占部 憲
ウラベケン
副院長
部長
医学部教授
膝関節、足の外科日本整形外科学会専門医・指導医
日本組織移植学会認定医
身体障害者福祉法指定医
難病指定医

ひざ関節とは


ひざ関節は大腿骨、脛骨、腓骨、膝蓋骨からできている関節です(図1)。大腿骨、脛骨、膝蓋骨の表面には、関節軟骨があり、つるつるしています(図2)。大腿骨の関節面の形は内側も外側もまるく、このまるい関節面が脛骨の平らな関節面の上で転がるように動くことで、ひざ関節がまがったりのびたりしています。また膝蓋骨の関節面は大腿骨の関節面の上で動きながら膝蓋骨についている筋肉の力を、膝蓋腱を介して脛骨に伝えます。

大腿骨がきちんと脛骨の上で転がることができるように、ひざ関節には外側側副靭帯、内側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯、膝蓋腱といった靭帯や腱がついています(図2)。また大腿骨のまるい関節面が脛骨の平らな関節面とより広く接触できるように、外側と内側に半月板という軟骨があります。そしてそのひざ関節全体を関節包という厚い線維性組織がおおっています。

ひざ関節をまげたりのばしたりするために、ひざ関節には大腿四頭筋、大腿二頭筋、ハムストリングなどの筋肉がついています(図2)。
ヒトが立って歩くために必要な足には、股関節、ひざ関節、足関節などの関節がありますが、ひざ関節はこの中で最も大きな関節です。またそのため最も疾患がおこりやすい関節でもあります。
図1ひざ関節図1ひざ関節
図2ひざ関節のしくみ図2ひざ関節のしくみ

ひざ関節におこりやすい疾患

1. 中高年層におこりやすい疾患

変形性ひざ関節症がもっとも多い疾患です。現在全国で2,350万人の患者さんがいるといわれています。変形性ひざ関節症とは加齢に伴って関節軟骨が徐々にけずれていく疾患です。また変形性ひざ関節症があまりひどくない患者さんで、ある時から急激に強いひざの痛みがでる疾患として特発性ひざ骨壊死や偽痛風発作があります。
また関節リウマチの患者さんでは、ひざ関節の破壊が進んでいく場合があります。

2. 若年層から中年層におこりやすい疾患

スポーツをされる方々が増えてきたことから、スポーツに伴う外傷が増えています。半月板損傷、内側側副靭帯や前十字靭帯などの靭帯損傷、骨軟骨損傷などです。

ひざ関節センターでおこなう治療について

治療を行うにあたって、まず正しく診断をする必要があります。正しい診断をするためには、十分な知識と経験を持って診察し、レントゲンやMRI、CTといった画像を適切に読影して判断する能力が必要となります。このひざ関節センターではまずこの診断を正しく行っていきます。

治療は保存的治療(手術をしない治療)と手術的治療に大きく分けられます。このひざ関節センターでは保存的治療について十分ご説明しますが、保存的治療を実際に続けていかれるのは患者さんのお近くの医療機関で行われることをお勧めします。保存的治療には週に何度か通われたほうがよいような治療法もありますので、通いやすいところでの治療が有効です。

このひざ関節センターでは主に手術的治療とその後の急性期リハビリテーションおよび回復期リハビリテーションを行います。常に最新の知識と技術を取り入れて、患者さんによりよい手術的治療とリハビリテーションを提供することを目的にしています。手術はひざ関節外科を専門とする医師のチームが、それぞれの患者さんに適切な手術を最先端の技術で行っています。また術後のリハビリテーションは患者さんの生活環境を考えて、また患者さんの回復状況を見ながら十分なリハビリテーションを行っています。

ひざ関節センターの手術的治療の特徴

1.変形性ひざ関節症の手術的治療

変形性ひざ関節症の手術的治療には、1)関節鏡視下デブリドマン、2)骨切り術、3)人工ひざ関節全置換術、4)人工ひざ関節単顆置換術があります。このひざ関節センターではこれらの全ての手術を受けることができます。しかし、1)関節鏡視下デブリドマンの効果はあまり長期的ではありませんので、主に2)骨切り術と3)人工ひざ関節全置換術、4)人工ひざ関節単顆置換術を行います。骨切り術をお勧めするか人工ひざ関節全置換術、人工ひざ関節単顆置換術をお勧めするかは、患者さんのご年齢、変形性ひざ関節症の進行の程度、ご希望などから判断させていただいています。骨切り術ではロッキングプレートという最新の内固定材料を使用し、術後早期から体重をかけて歩く練習ができるようにしています。人工ひざ関節全置換術、人工ひざ関節単顆置換術では最小侵襲手術 ( Minimally Invasive Surgery: MIS) 手技を用いて正確に手術を行なっています。

2.半月板損傷、靭帯損傷、骨軟骨損傷の手術的治療

これらの手術は全て関節鏡視下手術を行います。前十字靭帯損傷、後十字靭帯損傷の治療には主に自家骨付き膝蓋腱(ご自分の膝蓋腱)を用いた再建術を行っています。ご希望があれば同種骨による骨付き膝蓋腱を用いた再建術(ご自分の膝蓋腱を使用しない再建術)も行えます。

ひざ関節センターにおける先端医療について

1.最小侵襲手術(Minimally invasive surgery: MIS)手技を用いた人工ひざ関節全置換術、人工ひざ関節単顆置換術

皮膚の切開が小さいことが最小侵襲手術ではありません。関節のまわりの軟部組織をできるだけ痛めずに手術を行うことが最小侵襲手術です。これによって手術時間が短縮し、出血量が減少し、術後の痛みが軽減することで、早期から術後のリハビリテーションが開始でき、より早期にひざ関節機能が回復できるようになりました。

2.同種骨移植術を併用した人工ひざ関節全置換術

変形性ひざ関節症がかなり進行されている方や関節リウマチが進行している方のなかには、大腿骨や脛骨に大きな骨欠損(骨がないところ)ができている場合があります。この場合通常の人工ひざ関節全置換術では骨欠損部を埋めるため、特別な金属でできた補填材料を付けた人工関節を入れることになります。このひざ関節センターでは同種骨(他の方から頂いて保存している骨)を用いて人工ひざ関節全置換術を行うため、金属の補填材料を使用する必要はありません。また移植された骨は時間がたてばご本人の骨に置きかわるため、骨欠損はご自分の骨で修復されます。

3.同種組織を用いた靭帯再建術

靭帯を再建するには再建材料が必要です。再建材料には自家靭帯(ご自分の靭帯)、人工靭帯(人工的に作られた靭帯)、同種靭帯(他の方から頂いて保存されている靭帯)がありますが、通常日本で前十字靭帯や後十字靭帯の再建術に使用されているのは自家靭帯です。このひざ関節センターでは、自家靭帯を用いた再建術と同種靭帯を用いた再建術のどちらも行うことができます。同種靭帯を用いる場合の利点は、ご自分の靭帯を取らなくてもよいため、手術の傷が少ない、取ることによる痛みがない、取ることによる障害がない、などがあります。問題点としては、同種靭帯による疾患伝播の可能性が100%ないとは言えないことです。

4.自家培養軟骨細胞移植術

外傷性軟骨欠損や離断性骨軟骨炎による軟骨欠損の治療の中で、4平方センチメートル以上の広範囲軟骨欠損の治療には、自家培養軟骨細胞移植術が保険適応となりました。この治療を行うためには施設認定を受ける必要があります。当院は認定を受け、自家培養軟骨細胞移植術をうけることができます。詳しくは自家培養軟骨細胞移植術自家培養移植術ページへをご覧ください。

5.同種骨移植術と自家培養軟骨移植術

外傷性広範囲骨軟骨欠損に対する治療方法として、当院では同種骨移植術によって広範囲骨欠損を修復し、移植した同種骨の上に培養した自家軟骨細胞移植術を行う新しい治療法を行っています。

6.同種半月板移植術

半月板は大腿骨と脛骨の関節軟骨の接触面積を広く保つための重要な組織です。円板状半月板の亜全摘など半月板が広範囲に切除されると、関節軟骨の摩耗が進行し早期に変形性膝関節症となります。この変形性膝関節症の進行を予防するため、同種半月板(他の方からいただいて保存している)移植術を行っています。

7.ロッキングプレートを用いた骨切り術

変形性ひざ関節症に対する骨切り術は優れた手術の1つですが、以前は内固定材料(骨切り部を固定する道具)が通常のプレートでしたので体重をかけて歩く練習ができるのは、術後4週からでした。最近新しいロッキングプレートというより強いプレートが使用できるようになったため、術後1日目からでも体重をかけて歩く練習ができるようになっています。
股関節専門外来
当院では股関節痛に悩まれている患者さんに対して、専門的な治療を行うために股関節専門外来を開設しています。変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、大腿骨近位部骨折、股関節唇損傷、FAI(Femoroacetabular Impingement)など、様々な股関節疾患を対象に診療を行っています。股関節痛で悩まれている方はどうぞ御相談ください。

股関節のしくみ

股関節は脚の付け根にある関節で、胴体と脚の間にあります。ここでは、大腿骨の丸い部分(大腿骨頭)が骨盤の受け皿の部分(臼蓋)にはまり込んでいます。関節部分の骨の表面は軟骨でおおわれ、股関節にかかる力を吸収するとともに大腿骨頭と臼蓋の動きをスムーズにしています。股関節は、人が立ったり歩いたりするときに体重を支える役割をにない、歩行時には体重のおよそ3倍、立ち上がりでは体重の6~7倍、さらに床からや低い位置からの立ち上がりでは、10倍の重さがかかるといわれています。

股関節の病気

股関節の代表的な病気には変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどがあります。また、転倒などによる大腿骨近位部骨折も、股関節のしくみをこわして歩行が困難となる原因のひとつです。
股関節の病気

1.変形性股関節症

股関節が痛くなる代表的な病気です。原因としては、子供の頃の先天性股関節脱臼の後遺症や、股関節が浅い臼蓋形成不全などが多いですが、加齢により股関節の軟骨がすり減ってしまうことが原因になることもあります。変形性股関節症は、なかなか症状が出てこないことがあり、股関節以外に症状が出る患者さんもたくさんいます。股関節症の一般的な症状は股関節の痛み、股関節の動きの制限ですが、初期には太もも、お尻、膝などに痛みや違和感、だるさなどが現れるため、股関節の病気だと気づかないことも多いようです。坐骨神経痛と思われていたお尻の痛みが、変形性股関節症による痛みの場合もあります。また、股関節症の発症や進行の危険因子としては、肥満、スポーツ、重労働、臼蓋形成不全などがあります。これらの危険因子に注意することも大切です。

変形性股関節症には様々な治療方法がありますが、まず日常生活指導、運動療法、薬物治療などの保存療法を行います。しかし、股関節症の状態によっては早期に手術が必要になる場合があり、骨切り術や人工股関節全置換術を行います。

変形性股関節症

★保存療法★
股関節に無理な負担をかけないことがとても大切です。床にすわる、布団に寝るなどの和式生活よりも、ベッド・椅子・洋式トイレなどを使用する洋式生活が望ましく、股関節に負担がかかる激しい運動、重労働、長時間の立位、正座などはなるべく避けるようにしてください。靴は、ハイヒールや、底の硬いサンダルは避け、なるべくクッション性のあるスニーカーを履くようにして下さい。

体重管理も非常に重要です。体重が重ければ重いほど、それだけ股関節にかかる負担が増えるためです。適正な体重を保つようすることが大切です。

歩くときに痛みが出る場合には、杖を使用することで股関節にかかる負担を軽くすることができます。杖は痛い股関節と逆の手に持って使用します。右股関節が痛い場合には左手に持ち、左股関節が痛い場合には右手に持って、使用します。痛い足が地面に着く時に、杖を一緒につきます。

運動療法も非常に大切です。股関節周囲のストレッチ、筋力訓練をすることで、変形性股関節症の進行を遅らせる効果があります。ただし、やりすぎは禁物です。股関節症が悪化してしまう場合があります。無理のない範囲で行うようにしてください。

薬物療法も効果的です。股関節の痛みが強い時は、消炎鎮痛剤で対処します。鎮痛目的で使われますが、あくまで対症療法ですので、変形性股関節症が治るわけではありません。しかも、長期に内服することにより胃腸障害や肝臓・腎臓障害などの副作用を引き起こす危険性があり、また痛みがとれて無理をすると逆に股関節症が進行してしまいます。薬物療法では薬を適切に使用することがとても重要です。
★手術療法★
変形性股関節症では、保存療法を行っても股関節痛が軽減しない場合や、病状がかなり進行している場合などには手術を検討します。手術を行うかどうかは、股関節痛の程度、日常生活の不便さ、年齢、仕事の内容など、さまざまな要素を考慮して決定します。股関節痛のために日常生活でどれだけ支障をきたしているかということが、手術を決定するうえで最も重要な要素になります。変形性股関節症の手術方法には、大きく分けて自分の関節を温存する関節温存手術(関節鏡視下手術、骨切り術)と関節を人工のものに変える人工股関節全置換術があります。

2.大腿骨近位部骨折

大腿骨近位部骨折とは、頸部の部分から下方にかけて起こる骨折のことで、大腿骨頚部骨折(股関節内での骨折)と大腿骨転子部骨折(股関節外での骨折)に大きく分けられます。骨粗鬆症が基盤にある高齢者では頻度が非常に高い骨折のひとつで、高齢化社会を迎える中、年々増加してきています。 2010年には約17万人、2020年には約22万人、2030年には約26万人と増加の一途を辿ると予想されています。多くの場合は転倒して臀部(でんぶ)を打撲して骨折します。しかし、骨粗鬆症のひどい人は転倒がなくても、骨折することがあります(脆弱性骨折)。一方、若い人では交通事故や高所からの転落などの強い外力によって骨折が起こります。

大腿骨近位部骨折を起こすと、骨折した足は短くなり、外側に開いたような形になります。自分で骨折した足を動かすことはできず、他人に足を動かされると股関節が強く痛みます。しかし、時には骨折が軽度で、骨折した部分のずれが少なく、骨折した部分が噛み合って安定した形となっている場合、歩行が可能な場合もあります。
大腿骨近位部骨折
大腿骨頚部骨折の治療は、骨折した部分のずれが少ない場合には骨接合術を行います。骨折部のずれが大きい場合には、大腿骨の骨頭に栄養を送っている血管が損傷されている可能性があるため、骨接合術を行ったとしても、大腿骨頭壊死が発生する可能性が高くなるため、股関節を人工物に置換します。日本整形外科学会が発行している大腿骨頚部骨折の診療ガイドラインでは、怪我する前の活動性の高い場合(杖なしで歩くことができる)には、人工股関節全置換術を選択し、活動性が低い場合には人工骨頭置換術を選択することを推奨しています。当院では、診療ガイドラインに沿い、患者さんの活動性に合わせて、手術方法を決定しています。

大腿骨転子部骨折の治療は、基本的に骨接合術を選択します。大腿骨転子部骨折は比較的骨折部の癒合が得られやすいためです。骨折した部分の粉砕が強い場合には人工物に置換する手術を選択する場合もあります。

人工股関節全置換術について

人工股関節全置換術とは、すり減った軟骨と傷んだ骨を切除して金属やプラスチックでできた人工の関節に置き換える手術です。人工股関節は金属製のカップ、骨頭ボール、ステムからできており、カップの内側には軟骨の代わりとなるプラスチックでできたライナーがはまるようになっています。骨頭ボールがライナーにはまることで、滑らかな股関節の動きが再現できます。痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨が人工物に置き換えられて痛みがなくなることで、日常の動作が楽になることが期待できます。

最新の人工股関節では、人工関節自体の性能が以前と比べ格段に良くなっていることにより耐久性が改善され、20~30年以上機能することが予想されています。そのため、最近では年齢が50歳代でも人工股関節全置換術を行うことが珍しいことではなくなってきました。また、人工股関節全置換術に年齢制限はなく、高齢であっても体力さえあれば年齢が90代でも手術を受けることは可能です。
人工股関節全置換術

当科の特徴

1. 最小侵襲手術(MIS:Minimally invasive surgery)

当院での人工股関節全置換術(THA:Total hip arthroplasty)は、最小侵襲手術(MIS:Minimally invasive surgery)を行っています。MISと一言でいっても皮膚切開が小さいだけの最小皮膚切開手術(Minimally incision surgery)のことを当初はMISと言われていました。しかし、皮膚切開が小さいだけで皮膚の下では従来と同じように筋肉、腱を切離しており、従来の手術侵襲と大きく変わらないと考えられています。一般的によく行われている股関節後方アプローチによる人工股関節全置換術は、最小皮膚切開手術かもしれませんが、最小侵襲手術ではありません。現在は、皮膚切開が小さいだけではなく、さらなる低侵襲を目指し、筋肉、腱を切離しない筋間から手術を行う人工股関節全置換術をMISと言います。

現在MISの手術方法としては大きく分けて2種類あり、縫工筋と大腿筋膜張筋の間から股関節に進入する仰臥位前方進入法(DAA:Direct Anterior Approach)、大腿筋膜張筋と中殿筋の間から股関節に進入する仰臥位前外側進入法(ALS:Antero-Lateral Supine Approach)、側臥位前外側進入法(OCM)が挙げられます。当院では人工股関節のインプラント設置がより正確に行える仰臥位手術を基本としています。体格や股関節の変形の程度により、最小侵襲手術が適応にならない場合もあります。

2.同種骨移植

股関節の臼蓋や大腿骨に大きな骨欠損がある場合があります。その場合、骨欠損部を埋めるために、当院では同種骨を使用しての人工股関節全置換術を行うことが可能です。同種骨は北里大学病院骨バンクで保存している骨を使用します。人工股関節の周囲に移植された骨(同種骨)は時間が経過するにつれて御自身の骨に徐々に置きかわり、最終的にはすべて御自身の骨になります。

人工股関節全置換術の利点

1.股関節の痛みが著しく改善する。
2.手術の翌日から立位、歩行練習を行うことが可能である。
3.股関節の動きが改善する。
4.脚の長さが揃い、歩行のバランスが良くなる。
5.日常生活レベルが改善し、活動範囲が拡大する。

人工股関節全置換術における主な合併症

1.出血:必要に応じて、手術前から患者さんご自身の血液をあらかじめ貯めておき、手術時に体内に戻します(自己血輸血)。
2.感染症:細菌感染を起こした場合には、再手術の可能性があります。
3.脱臼:万が一、脱臼した場合には麻酔をかけて整復します。再手術の可能性があります。
4.人工関節のゆるみ、摩耗:時間の経過と共に、人工関節のゆるみが生じる可能性があります。場合によっては人工関節の入れ替えが必要になるかもしれません。
5.深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症:下肢の静脈に血の塊(血栓)ができて血管をふさいでしまうことがあります(深部静脈血栓症)。血栓が何かの拍子にはがれて、血流に乗って肺まで到達し、肺の血管をふさいでしまうのが肺血栓塞栓症です。肺の血管がふさがると、血液ガスの交換がうまくおこなわれず、呼吸困難や胸の痛みを感じるようになります。まれに命を脅かす重篤な症状を引き起こす可能性があります。
6.脚の長さの差:可能な限り脚の長さを揃えますが、若干脚の長さの差が残る場合があります。
7.神経障害:術後神経の障害に伴う痺れ、筋力低下が起こる場合があります。
8.大腿部痛:大腿部のだるさ、違和感、鈍痛、などが発生する場合があります。
自家培養軟骨細胞移植術
平成25年12月から北里大学メディカルセンター整形外科では自家培養軟骨による治療(自家培養軟骨細胞移植術)が受けられるようになりました。

自家培養軟骨とは?


自家培養軟骨とは、患者さま自身の軟骨から取り出した軟骨細胞を培養して増やしたのち、アテロコラーゲンゲル内で培養してつくられたもので、外傷性軟骨欠損や離断性骨軟骨炎によって膝関節の軟骨が欠けたところにこの自家培養軟骨を移植することによって治療します( この治療法は変形性関節症の治療法ではありません)。

保険適用となりました

自家培養軟骨を用いた治療は厚生労働省より平成24年7月に日本で初めて承認された治療法で平成25年4月から保険適用になりました。この自家培養軟骨による治療を導入している施設は全国でも数十箇所とまだまだ限られており、埼玉県内では当院が最初の施設です。これによって、いままで治療が難しいと言われていた膝の大きな軟骨損傷の治療が可能となりました。
軟骨は、膝などの関節内の骨と骨の間にあり、骨同士がスムーズに動くためのクッションの役割を果たしています。骨折しても再びつながる骨と違い、軟骨は一度損傷すると元に戻りません。軟骨には血管や神経が通っておらず、傷を治すために有効な細胞が少ないためです。損傷が小さければ、影響の少ない場所の骨と軟骨をごく小さく切り取り、軟骨が欠けた部分にはめ込む方法があります。ただし損傷が4平方センチ・メートル以上と大きい場合には、有効な治療法がありませんでした。

広範囲軟骨欠損の治療法です

このように、自然に治ることが難しい軟骨組織ですが、軟骨細胞には増殖する能力があります。そこで、患者さまの軟骨組織の一部を取り出し、軟骨細胞が増殖できるようなで増殖させたのちにコラーゲンの中で培養することによって作られたのが自家培養軟骨です(下の図をご覧ください)。そして広範囲の軟骨欠損にこの自家培養軟骨を移植することで欠損した関節軟骨を修復します。
自家培養軟骨を用いた治療の流れ
自家培養軟骨を用いた治療の流れ

一歩進んでこちらもどうぞ

参考文献
安達 伸生, 越智 光夫:膝関節 関節軟骨損傷に対する手術自家培養軟骨細胞移植術 整形外科サージカルテクニック 1巻4号,P403-413, 2011.
参考記事
再生医療製品事業「自家培養軟骨」とは(JTEC(ジェイテック))
よみうり記事
「自家培養軟骨…膝関節内欠損 広くても補完」(読売新聞ホームページ)

日本整形外科学会症例レジストリー(JOANR)構築に関する研究
研究機関 北里大学メディカルセンター
研究責任者 整形外科 部長 占部 憲
研究分担者 整形外科 医長 平川 紀子,医員 峯岸 洋次郎,藤野 宏美(データマネージャー)

このたび北里大学メディカルセンター 整形外科では、運動器の病気で入院・通院されていた患者さんの診療情報を用いた研究を実施しております。この研究を実施することによる患者さんへの新たな負担は一切ありません。また、患者さんのプライバシーの保護については法令等を遵守して研究を行います。あなたの試料・情報について、本研究への利用を望まれない場合には、担当医師にご連絡ください。

1.研究の目的 及び 意義

この研究の目的は、運動器疾患の手術に関する大規模データベースを作り上げることです。整形外科が扱う運動器疾患は、小児から高齢者まで幅広い方々を悩ませ、多くの方の健康寿命を損なう大きな原因となっています。その治療である手術の件数も年々増加していますが、その全国規模の全容を捉えられるデータベースがまだありません。全国の整形外科で情報を共有できるシステムを作り上げることは、有効な治療法や手術の安全性を科学的に確立するために大変有用です。日本整形外科学会が作りあげるこの大規模データベースに参加・協力し、より良い治療を探って参ります。

2.研究の方法

1)研究対象者

2020 年 4 月 1 日~2030 年3月 31 日の間に北里大学メディカルセンター 整形外科において、運動器の手術を受けられた方を対象とします。人工関節手術、関節鏡視下手術、脊椎手術、骨折治療の手術などが対象となります。

2)研究実施期間

2020 年 4 月 1 日~2030 年 3 月 31 日(10年間)

3)研究方法

インターネット上のデータベースへ登録します。

4)使用する試料・情報

◇ 研究に使用する試料 無し
◇ 研究に使用する情報
匿名化した ID、年齢、性別、ハッシュ値(氏名、性別、生年月日などから算出される文字列)、疾患情報、手術情報、手術・麻酔時間、手術日、術者情報、看護師数、技師数、治療成績、使用した器材・インプラント など。情報を提供して下さった患者さん個人が特定できないよう、これらの情報は完全に匿名化されてデータセンターへ提出されます。
調査項目の詳細は、JOANR のホームページ(https://www.joanr.org/about/patient)の「情報公開項目」をご覧ください。

5)試料・情報の保存

登録されたデータはデータセンター(日本整形外科学会)の責任下に保存されます。保存期間は本研究終了(あるいは中止)後5年間とします。

6)研究計画書の開示

研究に関する情報(研究計画書等)を日本整形外科学会ホームページ(https://www.joa.or.jp)およびJOANR ホームページ(https://www.joanr.org)に公開します。

7)研究成果の取扱い

ご参加頂いた患者さんの個人情報がわからないようにした上で、診療報酬改訂に向けた実態調査などの政
策対応、専門医制度のための症例データベース、医療機器の安全性向上に資するデータベース構築、また
学術論文などの公表に日本整形外科学会員又は関連学会員が用います。

8)問い合わせ・連絡先

この研究についてご質問等ございましたら、下記の連絡先までお問い合わせ下さい。また、あなたの試料・
情報が研究に使用されることについてご了承いただけない場合には研究対象とはしませんので、下記にお申
し出ください。資料・情報の使用を断られても患者さんに不利益が生じることはありません。なお、研究参
加拒否の申出が、既に解析を開始又は結果公表等の後となり、当該措置を講じることが困難な場合もござい
ます。その際には、十分にご説明させていただきます。
北里大学メディカルセンター 整形外科
研究担当医師 部長 占部 憲
連絡先(電話番号) 048-593-1212(平日:9時~17時)

9)外部への試料・情報の提供

(1)保存された情報等は他の医学研究への利用を目的に提供されることがあります。その際にはデータの提供の可否について日本整形外科学会は倫理委員会の意見を聞き、そこで適切と判断された場合に限ります。
(2)情報を他の営利団体、民間の機関(規制機関など)に提供する場合があります。登録した医療材料に有害事象や不具合が起き、医学的・人道的な観点からその情報を製造販売企業や審査機関に提供すべきと判断される場合です。
いずれも提供されるデータは、データセンターに登録・保管されている情報で、研究に参加して下さった患者さんの個人を特定できる情報は含まれていません。

10)研究組織

北里大学メディカルセンター 整形外科
〒364-8501 埼玉県北本市荒井6-100
TEL:048-593-1212

公益社団法人 日本整形外科学会
理事 種市 洋 (症例レジストリー委員会担当)
〒113-8418 東京都文京区本郷2-40-8
TEL:03-3816-3671 FAX:03-3818-2337
当院で人工膝関節置換術を施術された患者さんへ
当院では下記の臨床研究を行っています。本研究の対象者に該当する方で診療情報等を研究目的に利用または提供されることを希望されない場合は、下記の問い合わせ先にお問い合わせ下さい。

研究課題名(受付番号/承認番号)人工膝関節置換術患者の運動機能、日常生活活動、および生活の質に関する疫学調査 (2019008)
当院の研究責任者(所属・職位)リハビリテーションセンター 目黒 智康 主任
本研究の概要・背景・目的当院では 2017 年度から回復期リハビリテーション病棟を開棟し、多くの人工膝関節置換術患者さんに対して短期集中リハビリを提供しています。したがって、歩行や階段動作を含めた運動機能や生活活動動作、退院後の生活の質の実態を調査することを目的に研究を行います。
研究期間2019 年 8 月 1 日から 2025 年 12 月 31 日までとします。
対象となる患者さん上記期間内に人工膝関節置換術で当院に入院された方
研究の方法(使用する試料等)利用する情報:2013 年 4 月 1 日から 2024 年 12 月 31 日までの電子カルテに記載のある診療記録、検査データを利用します。
試料/情報の他の研究機関への提供および提供方法他の機関への試料・情報の提供はありません。
個人情報の取り扱い利用する情報から氏名や住所等の患者さんを特定できる個人情報は削除致します。また、研究成果は学会で発表を予定していますが、その際も患者さんを特定できる個人情報は利用しません。
本研究の資金源(利益相反)本研究に関連し開示すべき利益相反関係にある企業等はありません。
データの利用に同意されない場合とその申し出の期限① この研究に関してデータの利用に同意されない場合には下記のお問い合わせ先までご連絡ください。
② お申し出は 2024 年 12 月 31 日までにお願い致します。なお、同意されない場合でも診療上の不利益を被ることはありません。
③ ただし、研究の進捗状況により、試料・情報の利用に同意しない場合でも対応できない場合も生じます。(匿名化、論文化後等)
お問い合わせ先所属・職位:リハビリテーションセンター 主任 担当者:目黒 智康 (めぐろ ともやす)
TEL:048-593-1212(代表) 内線:8230
脊椎専門外来

担当医

医師名職位専門診療分野専門医
齋藤 亘
サイトウ ワタル
部長
医学部准教授
脊椎
日本専門医機構整形外科専門医・指導医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会脊椎脊髄外科専門医
日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医

概要

 脊椎は、最も重要な体の支えであり、稼動する柔軟性を持ち、大切な神経を保護する役割も果たしています。そのため、脊椎外科は、骨や関節、筋肉だけではなく神経も扱う外科です。その診断は、詳細な問診と神経学的な診察から始まります。その後、レントゲンやCT、MRIなど検査を行い、身体所見を説明できる画像所見があるかを判断していきます。正確な診断できたら、まずは保存療法を行います。薬や生活・リハビリ指導、ブロック注射などの複数の選択肢の中から治療を患者様と相談しながら選択して行っていきます。それでも症状の改善が乏しい場合などには、手術をおすすめする場合もあります。
 当科では、頚椎症性頚髄症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、側弯症(小児)などの頸椎から腰椎に至るまで幅広い脊椎疾患に対応しています。また、 ナビゲーションシステムや術中神経モニタリング装置を用いてより安全な脊椎手術を行うよう心がけています。

代表的な疾患について

1.腰部脊柱管狭窄症
 立位や歩行姿勢で腰痛や下肢の痛みやしびれが出現し、座って休むと症状が改善して再び歩けるようになる症状(神経性間欠性跛行)を特徴とする病気です。超高齢化社会に伴い、また、MRI などの画像診断技術の向上に伴い、患者さんは増えています。ただし、原因となっている病態は人それぞれで、時には血管の病気(閉塞性動脈硬化症)などが隠れていることもあります。そのため、まずは正確に診断することがとても重要です。生活改善や、内服、ブロック注射などの保存療法でも症状の改善が乏しい場合には、手術療法をおすすめする場合もあります。手術方法は、腰椎の靭帯、骨(椎弓や棘突起)、関節を温存する手術方法を選択しています。椎体間のずれや不安定性を認める場合は、スクリューなどを用いた固定術を併用する場合もあります。個々の患者さんの病態に合わせた適切な方法をご提案させていただきます。
狭窄症腰椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症に対し固定術を併用して神経除圧を行った
2.腰椎椎間板ヘルニア
 椎間板は脊柱管内に突出し、神経を圧迫することで腰痛や下肢痛が出現します。20代から40代の比較的若い方に起こることが多いです。当科では、内服、神経ブロックといった一般的な治療に加え、椎間板内酵素注入療法を行っております。これはヘルニアが出ている椎間板に針を刺して酵素を注入し、ヘルニアのボリュームを減らす効果があります。これらの保存療法で疼痛の改善が得られない場合には、手術加療を選択する場合もあります。
ヘルニア第4腰椎と第5腰椎間の椎間板ヘルニアにより、神経が圧迫されている
3.頚髄症(頚椎症・後縦靭帯骨化症)
 頚部にある中枢神経である頸髄が圧迫されて、四肢のしびれが出現したり、手指の細かい動きが悪くなったり、歩きづらくなったりする病気です。軽傷の場合は、頸椎カラーなどの保存療法で経過観察が可能ですが、進行性である場合には重症化する前の適切な時期に手術が必要になります。手術方法としては、棘突起縦割式脊柱管拡大術もしくは片開き式脊柱管拡大術といった椎弓形成術を行っています。
頚髄症頚椎症性脊髄症の症例。術前のMRIで脊髄の圧迫を認める。棘突起縦割式脊柱管拡大術を施行した
4.椎体骨折(偽関節)
 骨粗鬆症に伴い椎体が潰れてしまう骨折は、安静とコルセットによる保存療法が一般的に行われますが、一定の確率で痛みが残存したり、骨折の治癒が遅かったり、後から神経麻痺を起こしたりすることがあります。そのような場合は手術をせざるを得ない場合もあります。一定の条件を満たせば、Balloon Kyphoplasty(バルーン・カイフォプラスティ)という手術を選択する場合もあります。5mm ほどの傷から、潰れた椎体内にバルーンで形成した空間にセメントを置いてくる手術です。非常に小さな傷で可能であり、患者さんの負担も比較的少ない手術です。また、続発する椎体骨折を防ぐためにも、骨粗鬆症の程度を評価し治療していく事が重要です。
balloonバルーン・カイフォプラスティーの術中写真
5.側弯症(小児期)
 側弯症とは、背骨が3次元的に変形してしまう病気です。そのほとんどが思春期に起こり、原因がまだよく分かっていない思春期特発性側弯症です。外観上は、肩やウエストライン、肩甲骨隆起の左右差が出たりします。進行すると呼吸機能障害や背部痛の原因になることがあります。レントゲンで評価し、角度が25°以上になると装具療法が適用されます。45°から50°を超えると将来的な進行のリスクが高くなるため手術を必要とする場合があります。近年は、学校健診での側弯診察が義務化され早期に発見する取り組みがされています。当院では、保存療法である装具療法と手術療法を行っています。手術療法は、後方侵入を基本とし、インプラント(スクリューやフック、ロッドなど)を使用して矯正します。安全にインプラントを設置し、術中の神経や他臓器の損傷を避けるために、ナビゲーションシステムや神経モニタリングを併用してより安全に手術を行っています。
側弯症思春期特発性側弯症に対して後方矯正固定術を行った

担当医師

医師名職位専門診療分野専門医
占部 憲
ウラベ ケン
副院長
部長
医学部教授
膝関節、足の外科日本専門医機構整形外科専門医・指導医
日本組織移植学会認定医
身体障害者福祉法指定医
難病指定医
齋藤 亘
サイトウ ワタル
部長
医学部准教授
脊椎日本専門医機構整形外科専門医・指導医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会脊椎脊髄外科専門医
日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医
平川 紀子
ヒラカワノリコ
医長
医学部助教(研究員)
骨折、外傷日本専門医機構整形外科専門医・指導医
武井 正一郎
タケイ ショウイチロウ
病棟医
医学部助教(病棟医)
膝、股関節日本専門医機構整形外科専門医
太田 遼
オオタ リョウ
病棟医/後期研修医
医学部助教(病棟医)


外来診療担当表

整形外科 ※初診の患者さんにつきましては、紹介状をお持ちの方のみお受けいたします。

休診情報

休診情報
更新日
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手術実績

処置・検査名件数
人工膝関節置換術(膝)75例
人工膝関節再置換術(膝)5例
関節鏡視下手術(膝)70例
自家骨軟骨移植術56例
骨折観血的手術56例
人工関節置換術(股)40例
人工骨頭挿入術31例