2022年 4月 1日現在
2022年 4月 1日現在
ワクチンとは、感染症の発症を防ぐためにヒトや動物の持つ免疫システムを活性化させ、病原体に対する防御反応を導くために使用される薬剤である。ワクチンには、健康を維持するために健常者、健常な動物に対して使用される感染症予防薬という、一般的な薬とは全く異なる特徴がある。したがって、理想的なワクチンは、接種による副反応は可能な限り制御され、接種により病原体の感染、感染症の発症を制御可能な、健康な体を維持できなければならない。感染症を征圧、克服する上でワクチンの果たす役割は非常に大きい。本講義、研究では、ワクチンとは何か、抗ウイルス薬、抗菌剤、治療薬との違いを理解し、予防医学に果たすワクチンの役割と働きを学ぶ。さらに、次世代のワクチン開発に向けた最新の研究手法、技術などの知識基盤を取得し、自らが新規ワクチン研究を展開する力を身につける。
ワクチンとは、感染症の発症を防ぐためにヒトや動物の持つ免疫システムを活性化させ、病原体に対する防御反応を導くために使用される薬剤であり、健康を維持するために使用される感染症予防薬である。ワクチン接種による副反応は、可能な限り制御し、接種により感染症の発症を効果的に予防できなければ、ワクチンの目的は達成されない。本講義では、人類による偉大な発明の一つであるワクチンの歴史から、最新のワクチン開発までを広く学び、ワクチンの知識基盤を身につける。
ワクチンに関する知識基盤を充実させ、新しいワクチン開発に関われるようにするには、ウイルス、細菌など感染症の病原性発現機構、感染症によって誘導される宿主免疫応答等に関する最新の知識を学び、それらを理解し応用できる力が必要である。本講義では、ワクチンに利用されている最新の科学技術について深く学べるよう、現在実際に開発が進行中のワクチンを例に、研究開発の最新知見を講義する。
現代の脅威とされているヒトウイルス感染症、すなわち、エイズやインフルエンザなどについて以下の1)~6)の研究テーマから興味のあるものを選択させる。指導教官はこれら研究テーマの解明を達成させるべく、分子生物学・生化学・細胞生物学などの知識・技術を伝授するとともに、結果に対する考察や洞察を支援する。また、それらに基づき、次の実験戦略を計画させる。学生各自には研究進捗状況報告を課す。
ヒトウイルス感染症における現象を分子機構として解説する。すなわち、ウイルス複製の分子機構、ウイルス病原性発現の分子機作、ウイルスの進化論と耐性ウイルスの出現機構、ウイルスを用いたバイオテクノロジーや遺伝子治療、ワクチンや抗ウイルス剤の分子設計などについて解説する。これらの内容を、個々のウイルスのみに特化した専門知識としてではなく、多くのウイルスに共通するウイルス感染症分子論として理解させる。
「学問領域横断型のウイルス感染症分子論」を基本として、主要なヒトウイルス感染症(エイズ、インフルエンザ、エマージングウイルスなど)について、その複製機構、個体内あるいは個体間伝播と変異進化機構、感染病態の発現機構と宿主細胞応答、種間障壁機構など、多局面における最先端の分子ウイルス学を講義する。これらウイルスに対するワクチンや抗ウイルス剤の創製、ウイルス工学を駆使した遺伝子治療などの最新の知見を講義する。
病原細菌は様々な病原因子を積極的に宿主細胞内に移行させ、病原性を発揮するものが少なくない。この病原因子の宿主細胞内移行には、III型分泌装置が関与していることが最近の研究の結果明らかになってきた。分子細菌学の特別研究においては、病原細菌のクロストーク、病原因子のゲノム解析、III型分泌装置の構造と機能、宿主へ移行する細菌由来の蛋白質(エフェクター)がどのような機構で病原性に寄与しているのかについて焦点を絞り、研究を展開する。学生には病原細菌の扱い方、分子生物学ならびに分子細胞生物学の基本操作について約2ヶ月間の指導を行なった後に、以下の研究テーマのなかから各自の興味に合ったものを選択させる。教官は、学生が各自の研究目標に到達するためのガイドとしての役割を適宜図り、学生の自主性を重んじ、研究結果の考察や方向性の後方支援を行なう。また、研究発表能力の技術的向上を図るために、プロジェクター等を用いた研究報告会を行い、修士修了後には実戦に即戦力で対応できる人材を育成する。
細菌の感染現象を宿主側因子も含めて分子生物学的な視点から包活的に解説する。すなわち、病原細菌のゲノム解析、細菌の宿主細胞への付着と増殖、宿主細胞への侵入、病原因子と宿主側因子の相互作用,病原因子の宿主細胞への移行システムとその高次構造等について分子レベルでの理解を深める。特に、ヒトならびに病原細菌のゲノム解析で明らかにされた膨大な遺伝情報が感染現象の分子生物学的理解にどのように貢献しているかについても、ポストゲノム戦略という新たな領域の観点から講義する。
細菌が宿主に定着・侵入する過程において、宿主細胞骨格の再編成を積極的に誘導することが知られている。これにより細菌は定着の足場を確保し、また、マクロファージによる貪食作用から回避する。しかしながらこのような感染成立の一連の流れは、細菌側の病原因子のみでは成立せず、病原因子と宿主側因子の相互作用により、宿主シグナル伝達経路がかく乱されることで惹起されることが明らかになっている。分子細菌学の講義においては,感染に関わる宿主側因子について焦点を当て,感染が宿主応答のどのようなかく乱によって惹起されるのかについて、分子細胞生物学的に理解する能力を養うことを目的として講義を展開する。
感染症の診断・治療・予防・指導,医療関連感染対策,抗微生物薬の開発と幅広い視野での教育・研究を進めていくことを目的として現在は以下の研究を行う。
21 世紀となり新興感染症(SARS・新型インフルエンザ等)が社会の話題となっている。一方で、高齢者や小児における侵襲性レンサ球菌感染症といった再興感染症が診療上問題となっている。感染症学では感染症新法制定に関する経緯を紹介するとともに、各種感染症の診断方法・治療に関して講義する。また、感染症の治療に欠くことの出来ない抗菌療法・抗ウイルス療法・抗真菌療法についての講義も行う。感染伝播の予防としては、医療関連感染対策に関して述べる。
今また、新興・再興感染症として高病原性鳥インフルエンザや肺炎球菌感染症が社会の話題となる一方で、薬害として注目を集めているウイルス性肝炎やHIV感染症も忘れてはなるまい。このように、各々の時代背景を反映させながら感染症は成立しているものである。それ故、各自の専門性を重要視しながらも、本講義ではその社会ニーズに合わせた形式で感染症学の総論・各論を展開していく。加えて、平成22年の診療報酬改正にて加算が認められた院内感染症対策に関しても指導する。
病原微生物は、我々の身体に対して特異的に相互作用し、自らの利となるように操作する。一方、我々は、その働きを無効化し、病原微生物の侵襲に抵抗する。感染現象において観測される微生物の病原因子とそれに対する宿主の抵抗因子は、新しい作用機構を示す医薬品を開発する上で重要な手がかりとなる。本研究室では、病原微生物の産生する物質やその働きを、医薬品開発を中心とした実学分野に応用することを目的に研究を行う。
普段の生活環境において健康でいられるのは、我々を侵食する病原微生物に対する防御機構、すなわち免疫が機能しているためである。健康を保つためには免疫機能が適切に維持される必要があり、過度の亢進や抑制は様々な疾患を引き起こす。本講義では免疫機能の基本的な知識から免疫機能関連疾患(感染症を含む)の発症機序に至るまで幅広い知識を学ぶ。また、生命科学研究および臨床診断に応用されている免疫学的手法の原理を解説し、免疫研究に関するより深い理解を促す。
発症機構および誘導される感染防御免疫が対称的である百日咳起因菌と各種抗酸菌を講義の中心課題とし、病原性発現機序から予防、診断、治療法に至る広い分野を免疫学的見地から講義する。また、疾患の予防、診断、治療を目指した免疫機能応用研究の立案、企画、実施、考察、およびさらなる提案を学生が自立して行えるよう指導する。