筒井先生
准教授
筒井 繁行
Shigeyuki
Tsutsui

主な研究テーマ

寄生虫が宿主を見つけるしくみ

一般に寄生虫は、ある決まった生物にのみ寄生します。これを宿主特異性と言います。単生類(中間宿主を持たないグループ)寄生虫ヘテロボツリウムはトラフグにのみ寄生し、しばしば大量死を引き起こします。わたしたちは、東京大学および福井県立大学との共同研究により、この寄生虫が、トラフグ粘液中のある分子を目印とし、寄生することを世界で初めて発見しました。現在、この知見を基に、ヘテロボツリウムの駆除に向けた応用研究を行っています。

魚類体表粘液中の防御因子

皮膚と消化管と呼吸器は外部環境と直接接しているため、生体防御における最初の防衛ラインといえます。私たち哺乳類の消化管や呼吸器は粘液で覆われていますが、魚類では皮膚も粘液に覆われています。魚を触るとヌルヌルするのはそのためです。

魚類の粘液の中には、しばしばレクチンと呼ばれる防御因子が含まれています。これまで私たちは、いろいろな魚種の皮膚粘液からレクチンを精製し、その生体防御作用と構造を明らかにしてきました。その結果、魚類の粘液レクチンは、構造的に極めて多様性に富んでいることがわかりました。現在も様々な魚種のレクチンやその他の防御因子について、構造と機能の解析を進めています。

レクチンは糖と特異的に結合するタンパク質の総称で、生物界にはさまざまなレクチンがあり、多様な生命現象に関わっています。生体防御もレクチンの機能のひとつです。

担当科目

1年次生対象

2年次生対象免疫学(必修)動物は病原微生物から身を守るしくみ、すなわち免疫系を備えています。この免疫系は、非特異的かつ迅速な系である自然免疫系と、特異的で記憶を伴い、リンパ球や抗体に代表される獲得免疫系とに大別されます。前者は無脊椎動物、脊椎動物の両者に広く分布していますが、後者は脊椎動物にのみ備わった系です。最も原始的な脊椎動物である魚類の免疫系は、かつては哺乳類のそれに比べはるかに劣っているものと考えられてきましたが、しかし近年の分子生物学的手法の発展により、これが哺乳類の免疫系に匹敵する、高度に洗練されたものであることが徐々に明らかにされてきました。一方で、魚類で独自に発達した免疫機構も存在しています。本講義では自然免疫および獲得免疫を担う液性因子と細胞性因子について、主に哺乳類と魚類とで比較しながら概説し、免疫系の基盤メカニズムおよび種特異的な適応機構について解説しています。加えて、円口類、軟骨魚類および硬骨魚類の免疫機構の相違についても解説し、免疫系の多様化の理解を目指しています。
海洋生命科学実験ⅠI(必修・分担)免疫学実験の基礎や血液検査などを担当しています。
海洋実習(必修・分担)2年次には三陸や真鶴での臨海実習を担当しています。
3年次生対象魚病学(選択)水産増養殖にとって最大の課題は病気の克服です。その対策として、病原微生物の性質を理解することは極めて重要です。この講義では水産重要種における感染症の発生原因、診断法および対策について、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫別に解説いたします。また、栄養素欠乏症やガス病など、非感染性の疾患についてもレクチャーします。
海洋実習(必修・分担)3年次には長崎丸や神鷹丸での洋上実習を担当しています。
4年次生対象卒業論文(必修)いろいろな魚種の防御因子や寄生虫の宿主認識機構について研究指導しています。
海洋生命科学演習週に一度、ゼミを開催し、研究の進捗状況を発表してもらいます。質疑応答も活発に行っています。
その他

経歴・業績等

主な経歴

  • 東京大学農学部 卒業
  • 東京大学大学院農学生命科学研究科 博士課程修了
  • 北里大学水産学部 助手
  • 同助教
  • 同講師(後に海洋生命科学部講師)
  • 北里大学海洋生命科学部准教授(現職)

主な業績

著書
  • 筒井繁行 (2019) 「皮膚・粘液」, ウナギの科学(塚本勝巳 編集).朝倉書店,pp69-72.
  • 筒井繁行 (2016)「魚類の粘液」, ホルモンから見た生命現象と進化シリーズVII『生体防御・社会性』(水澤寛太・矢田崇、供編).裳華房,東京.pp133-147.
論文
  • Matsui S, Yoshikawa S, Suzuki S, Somamoto T, Yamamoto A, Nakamura O, Tsutsui S. (2020) Expression profile of kalliklectin, a soluble-type mannose receptor, during embryogenesis and early larval development in fugu (Takifugu rubripes). Molecular Immunology 126:129-135.
  • Tsutsui S, Matsui S, Nakamura O. (2020) Serum amyloid P-component/C-reactive proteins in fugu (Takifugu rubripes) egg with binding ability to disease-causing bacteria by carbohydrate-recognition. Developmental & Comparative Immunology 111:103748.
  • Matsui S, Goto T, Tsubouchi Y, Hirakawa S, Suetake H, Miyadai T, Nakamura O, Tasumi S, Tsutsui S. (2020) D-mannose-specific immunoglobulin M in grass puffer (Takifugu niphobles), a nonhost fish of a monogenean ectoparasite Heterobothrium okamotoi, can act as a trigger for its parasitism. Journal of Parasitology 106(2):276-282.
  • Shibuya K, Tsutsui S, Nakamura O. (2019) Fugu, Takifugu ruberipes, mucus keratins act as defense molecules against fungi. Molecular Immunology 116:1-10.
  • Tsutsui S, Yoshinaga T, Watanabe S, Tsukamoto K, Nakamura O. (2019) Mucosal galectin genes in all freshwater eels of the genus Anguilla. Journal of Fish Biology 94(4):660-670.
  • Tsutsui S, Suzuki Y, Shibuya K, Nakamura O. (2018) Sacciform cells in the epidermis of fugu (Takifugu rubripes) produce and secrete kalliklectin, a novel lectin found in teleosts. Fish & Shellfish Immunology 80:311-318.
  • Igarashi K, Matsunaga R, Hirakawa S, Hosoya S, Suetake H, Kikuchi K, Suzuki Y, Nakamura O, Miyadai T, Tasumi S, Tsutsui S. (2017) Mucosal IgM antibody with D-mannose affinity in fugu Takifugu rubripes is utilized by a monogenean parasite Heterobothrium okamotoi for host recognition. Journal of Immunology 198(10):4107-4114.
  • Tsutsui S, Yoshinaga T, Komiya K, Yamashita H, Nakamura O. (2016) Differential expression of skin mucus C-type lectin in two freshwater eel species, Anguilla marmorata and Anguilla japonica. Developmental & Comparative Immunology 61:154-60.
  • Tasumi S, Yamaguchi A, Matsunaga R, Fukushi K, Suzuki Y, Nakamura O, Kikuchi K, Tsutsui S. (2016) Identification and characterization of pufflectin from the grass pufferfish Takifugu niphobles and comparison of its expression with that of Takifugu rubripes. Developmental & Comparative Immunology 59:48-56.
  • Tsutsui S, Yamamura N, Yoshida T, Nakamura O. (2015) Fugu (Takifugu rubripes) serum GlcNAc-binding lectin is a kalliklectin but has different properties from those of a reported homologue. Journal of Biochemistry 158(3):189-195.
  • Tsutsui S, Dotsuta Y, Ono A, Suzuki M, Tateno H, Hirabayashi J, Nakamura O. (2015) A C-type lectin isolated from the skin of Japanese bullhead shark (Heterodontus japonicus) binds a remarkably broad range of sugars and induced blood coagulation. Journal of Biochemistry 157(5):345-356.
  • Tsutsui S, Yoshinaga T, Watanabe S, Aoyama J, Tsukamoto K, Nakamura O. (2015) Skin mucus C-type lectin genes from all 19 Anguilla species/subspecies. Fisheries Science 81(6):1043-1051.