教育・研究の目的・方針
人材の養成・教育研究上の目的
医学部は、広く体系的な知識と確実な技術を持ち、それを深化させるよう最先端の医学知識を意欲的に吸収できるような自己研鑽学習を継続する人材を育成するとともに、開学以来実践されてきた「チーム医療」の実践家となるため、他者に共感し、協働して物事に取り組むことができ、倫理観を持って広く社会に貢献できる人材の育成を目的としています。
そのための教育研究上の目的として、①人間性豊かで優れた医師の養成 ②学際領域を含む医学研究の推進 ③国際貢献の推進と地域医療への協力 ④予防医学の推進、の4項目をあげ、教育の基本理念としています。
学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)
北里大学医学部では4つの基本理念(人間性豊かで優れた医師の養成、学際領域を含む医学研究の推進、国際貢献の推進と地域医療への協力、予防医学の推進)の通り、専門的知識や技術とともに豊かな人間性を持ち、地域や国際社会の様々な分野に貢献できる医師を養成します。そのために必要な以下の9領域からなるアウトカムを設定し、これを修得した者に対して学位【学士(医学)】を授与します。
1.プロフェッショナリズムと倫理
- 命に対する畏敬の念を持ち、それを尊重した行動をすることができる。
- 法令を遵守し、高い規範意識をもって誠実に行動できる。
- 正しい社会規範に基づいて行動できる。
- 利益相反を十分に理解し、適切に行動できる。
- 自己の知識、技能、行動を評価・管理し、責任を持つことができる。
- 患者と家族に対し真心、誠意をもって接することができる。
- チームメンバーへ思いやりある態度をもって接することができる。
- 寛容な心を持ち、利他的精神をもって接することができる。
- いかなる場面においても平常心を保つことができる。
- 医療者として高い倫理観をもって行動できる。
- 歴史・社会・文化についての正しい知識を持ち、良識ある社会人として行動することができる。
- 何らかの失敗をすることがあっても、挫折することなく、その失敗を糧としてその後の医療者としての人生を切り開いていくことができる。
2.コミュニケーション能力
- 社会常識や良識に基づいてコミュニケーションできる。
- 患者・家族やチームメンバーの言葉に誠実に耳を傾け、信頼関係を構築できる。
- 自分の考えや状況を論理的にわかりやすく相手に伝えることができる。
- 適切な手段で情報を発信できる。
- 自身のコミュニケーションを振り返り、改善できる。
- 人間関係を円滑にするための知識・技能を持ち、自分自身が果たすべき役割を理解した上で、集団の中で適切に行動することができる。
3.医学的知識と技術
- 人体の構造・機能を理解し、説明できる。
- 疾患の病態生理を理解し、説明できる。
- 臨床推論に基づいて鑑別診断を行うことができる。
- 疾患の発症機序を理解し、診療に応用できる。
- 基本的な医療面接・身体診察ができる。
- 社会医学の知識を持ち、診療に役立てることができる。
- 診断に必要な診療及び検査を計画し、治療方針を考えることができる。
- 診療録を正しく記載することができる。
- 知識と技術を統合的に活用して診療することができる。
- 科学的根拠に基づいた医療(Evidence Based Medicine)の重要性を説明できる。
- 個々の患者に合わせた医療の重要性を説明できる。
- 患者の語りに基づく医療(Narrative Based Medicine) の重要性を説明できる。
- 東洋医学について概説し、補完代替医療、統合医療の重要性を説明できる。
4.知的探究と自律的学習
- 医学・医療の現状を理解し、問題点を抽出できる。
- 社会に還元・貢献することを念頭に置いた研究ができる。
- 高い研究倫理を持ち、法律やルールを遵守して研究に取り組むことができる。
- 学術論文を正しく理解し、要点をまとめることができる。
- 必要に応じた適切な研究方法を選択できる。
- 真理を追究する姿勢をもち、本質を捉えて考察できる。
- 自己学習・自己研鑽に努めることができる。
- 生涯にわたり学習する必要性を理解し、方法を身につける。
- 自己を省察し、学習を進めることができる。
- 与えられた課題だけでなく、自ら課題を発見することができ、さらにそうした課題を解決するために努力することができる
- 自然科学・健康科学についての正しい知識を持ち、物事を合理的に判断して行動することができる。
- 言語的・数理的・情報技術的リテラシーについての正しい知識を持ち、様々な情報を正確に読み取り、それに基づいて適切に行動することができる。
5.チーム医療
- チーム医療を理解し、チームの一員として積極的に参加できる。
- 患者・家族、関係する多職種、施設外のスタッフと情報を共有できる。
- 他職種の職務内容を理解し、専門性を尊重してコミュニケーションできる。
- リーダーシップ、フォロワーシップを理解して適切に行動できる。
6.医療の質と安全
- 医療安全の基本的な概念を理解し、実践できる。
- 安全で安心な医療を提供するように努めることができる。
- 他者の意見と自分の意見の調和を図り、コンセンサスを形成できる。
- 医療事故につながる危険を予見し、防止に努めることができる。
- 適切な自己管理が医療の質と安全に寄与することを理解し、実践できる。
- 個人情報を含む医療情報を適切に扱うことができる。
- インフォームドコンセントの重要性を説明できる。
7.予防医学
- 現代社会の疾病構造を説明できる。
- 感染症を含む予防医学の重要性を理解し、実践できる。
- 予防の視点から個々の疾病への対策を説明できる。
- 予防医学の知見を活用し、患者や地域住民の生活習慣の改善に努めることができる。
- 予防医学に関する最新の知識を修得し、社会へ情報提供することの重要性を説明できる。
8.地域医療
- 我が国の社会情勢を踏まえて医療の現状を説明できる。
- 地域の特性に基づいたプライマリケアを説明できる。
- 関連する行政機関や様々な職種の役割を説明できる。
- 地域住民の健康増進を目指し、積極的に活動できる。
- かかりつけ医と専門医の役割を理解し、連携の意義を説明できる。
9.国際貢献
- 異なる文化を理解し、尊重できる。
- 英語などの他国語でコミュニケーションできる。
- 医学・医療の問題を国際的視野で考察できる。
- 国際的な医療協力に積極的に参加できる。
- 異文化社会についての正しい知識を持ち、自分自身のそれとは異なる文化的背景を持つ他者に対しても敬意を持って接することができる。
教育課程の編成・実施方針(カリキュラム・ポリシー)
北里大学医学部では、人間性豊かで優れた医師として、生涯を通じて医学的知識・技能・真理を探求し、地域や国際社会に貢献することができるよう、高い倫理観とコミュニケーション能力、自らの学びを振り返り能動的に学習をする力など、卒業時までに必要な能力(ディプロマ・ポリシーに掲げたコンピテンシー)を段階的に習得できる一貫教育のカリキュラムとしています。 各段階のカリキュラムは、ディプロマ・ポリシーに掲げたコンピテンシーを踏まえ、知識・技能・態度の様々な面から、段階ごとに達成されるべきレベルに合わせて編成しています。
1.教養教育と初年次からのチーム医療教育とプロフェッショナリズム教育
自然科学のみならず、社会科学や人文科学についての幅広い知識や教養を身に付けるため、人間形成の基礎科目を配するとともに、生命科学の総合大学としての特徴を活かし、薬学部、医療衛生学部、看護学部等の他学部の学生とともに受講する「チーム医療論」を開講しています。
医学原論では、人間の尊厳、医療者の責務など、医学生が将来直面する可能性の高い事柄について思考を深め、倫理観やプロフェッショナリズムを涵養します。また、医学原論演習として、獣医学部附属フィールドサイエンスセンター八雲牧場(資源循環型畜産)や学祖北里柴三郎博士の故郷熊本県阿蘇郡小国町における実習を通じ、いのちに対する真摯な姿勢を養っていきます。
さらに、早期体験学習として、大学病院体験当直や一次救命処置など、医療者としての視点に立って感じ、考え、身に付けるべき技術を学ぶ機会を1年次より設けている他、2年次には医療・福祉・介護施設、法律事務所、消防署などで体験実習を行い、生命・健康・人権を守る様々な専門職と、その専門職が関わる当事者との触れ合いを通した学びは、ポートフォリオ作成や指導者からのフィードバックにより、自らの学びを振り返る習慣づけに結びつくように工夫されています。
2.基礎医学から臨床医学へ
医学的知識と技術の修得は1年次より開始されます。基礎医学では、科目相互に関連を持ちながら、段階的に知識を習得する“らせん型カリキュラム”として編成しています。
1年次から2年次にかけて人体の正常の構造と機能を学ぶ科目が配置され、3年次後半からは開学時より導入している器官系別総合教育が開講され、基礎医学と臨床医学との縦断的統合カリキュラムが組まれています。また、北里大学ならではの特徴ある科目として東洋医学を理論から診察法までを系統的に学ぶ機会を設けています。
3年次から4年次前期までは、器官ごとに教育単位を超えて横断的に臨床医学を学ぶ科目が配置され、疾患を基礎的な概念から疫学・症候・診断・治療まで統合的に学ぶことを目標としています。
3年次から臨床実習開始前の期間には、実習に必要とされる基本的な診療手技を週ごとに学ぶ機会を設けており、臨床実習に向けた準備を進めるカリキュラム編成としています。
3.学年の壁を越えて段階的に学ぶ科目の設定
基礎医学・臨床医学はもちろん、社会医学においても学年を跨いで科目を設置し、科目相互に連携をとる構成としています。例えば、1年次・3年次で医療安全・管理学が開講されます。予防医学に関しては、2年次の微生物学、免疫学から、3年次の感染症・免疫学、4年次の予防医学系と、段階的に開講される他、臨床実習(4年~6年次)として衛生・公衆衛生実習においては、地域保健所との連携、産業医実習など広い視野で学んでいきます。
また、診療の基礎となる医療面接については、1年次の早期体験学習でのコミュニケーション、2年次の行動科学、4年次での臨床実習入門と、一般的なコミュニケーション論から臨床実地に至るまで、他の科目の知識と連動して段階的に学ぶことで、より効果的にコミュニケーション能力を習得できるカリキュラムとなっています。
1年次の医学原論、早期体験学習及び3年次の内科学総論では、ライフイベントを意識したキャリアデザインを考える機会を設けています。 医療のグローバル化に対応し、国際貢献できるよう、1年次から3年次までのネイティブスピーカーを含む実践的な医学英語教育により、英語での基本的な診療や文献読解の力を養っていきます。
4.課題発見・解決法を習得し、研究マインドを涵養する
“課題発見・問題解決”の学習法を学び、生涯自律した学習者・能動的な学習者になる姿勢を養うために、2年、3年次にテュートリアル教育を配しています。また、2年次の医学研究入門Ⅰでは、論文の構成、文献検索の基本、研究立案の過程、研究倫理等を学び、3年次の医学研究入門Ⅱでは、研究室配属(基礎・臨床・社会医学)により2年次の学びを実践につなげ、研究マインドを涵養しています。
5.診療参加型臨床実習と自主性を育む選択実習
学校法人内3病院及び地域医療機関における診療参加型臨床実習では、地域医療を含むプライマリケアから高度な専門医療まで学ぶ機会があります。
5年次には北里大学の医療系学部合同で実施する「オール北里チーム医療演習」をはじめ、臨床実習の現場においてチーム医療の実際を学んでいきます。6年次の選択実習では、学内外の他、欧米の大学と提携し、海外選択実習として最大3か月実習を行う機会を設けています。
6.学習方法と評価
Moodleなどの教育支援システムの活用や、ロールプレイ、グループワークなど、能動的な学習方法を随所に取り入れ、主体的な学びを促すともに、自身の振り返り、指導者からのフィードバックなどを通じて成長できるようになっています。
学習中に適宜形成的評価を行うとともに、科目の終了時には到達目標に適した評価方法(論述試験、客観式試験、レポート、実技試験、観察記録、ルーブリックを明示したポートフォリオなど)を用いて総括的評価を行い、進級及び卒業の認定に反映しています。
入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)
選抜者基本方針
患者・家族の立場に立って考えることができる思いやりと命に対する畏敬の念をもって医療にあたることができる「人間性豊かで優れた医師の養成(学部基本理念の一つ)」を目的とすることから、入学者の受け入れにおいては、学力試験の結果を尊重することはもとより、将来医師となるべき資質、能力をも含め、総合的な判定による入学者の選抜を基本方針としています。患者・家族の立場に立って考えることができる思いやりと命に対する畏敬の念をもって医療にあたることができる「人間性豊かで優れた医師の養成(学部基本理念の一つ)」を目的とすることから、入学者の受け入れにおいては、学力試験の結果を尊重することはもとより、将来医師となるべき資質、能力をも含め、総合的な判定による入学者の選抜を基本方針としています。
理念・目的等
現代医療において特に重要視されている「チーム医療」の観点から、人望や包容力など「リーダー」としての資質を備え、体系的な医学知識と確実な医療技術を持ち、最先端の医学に関する知識を意欲的に吸収する努力を続けることができる医師の養成を理念としています。
求める学生像
- 医学の習得に必要な数学・理科・英語の基礎学力に加え、論理的に思考・判断し、表現する能力を持つ学生
- 知的探究心を持ち、自己学習と自己研鑽に努めることができる学生
- 医学並びに医療行為を通じて社会的、国際的に貢献したいと考える学生
- 患者・家族の立場に立って物事を考え、行動できる学生
- 医師であることはもとより、一人の人間として相手に共感できる思いやりを持つ学生
- 社会常識や良識に基づいたコミュニケーション能力を持ち、良好な人間関係を構築できる学生
入学者選抜方針
【学校推薦型選抜試験】
医学・医療分野に対する深い関心と、自己研鑽を積む意欲を有し、品行方正、情操豊かで、かつ学業成績が優良な学生の入学を希望します。
【山梨県・茨城県・神奈川県各地域枠指定校推薦入学試験】
出願する地域枠の趣旨を十分理解し、その趣旨に基づく地域医療に貢献することができる学生で、医学・医療分野に対する深い関心と、自己研鑽を積む意欲を有し、品行方正、情操豊かで、かつ学業成績が優良な学生の入学を希望します。
【一般入学試験】
英語・数学・理科の学力に加えて、人間性豊かで論理的思考能力、記述力、表現力、考察力、理解力などが優れた学生の入学を希望します。
【山梨県・茨城県・神奈川県各地域枠一般入学試験】
出願する地域枠の趣旨を十分理解し、その趣旨に基づく地域医療に貢献することができる学生で、英語・数学・理科の学力に加えて、人間性豊かで論理的思考能力、記述力、表現力、考察力、理解力などが優れた学生の入学を希望します。
【学士入学試験】
英語・数学・理科の学力に加えて、医学以外の専門分野を修めた幅広い視野を持つ学生の入学を希望します。