研 究

Research

基礎医学系

解剖学(小川単位)

教授:小川 元之

人体解剖実習を通して、命の尊さと医師になる責任の重さを知る

解剖学[肉眼解剖学]
解剖学は近代医学として最初に確立された学問で、ヴェサリウスによる「ファブリカ」は世界で初めて人体の構造を客観的観察に基づき記した著書であり、我が国初としては訳本ながら杉田玄白らによる「ターヘル・アナトミア」の「解体新書」がある。

人体解剖実習は、これら先人たちの知識が体系化された解剖学書を基に、人体の構造を学ぶ場である。解剖させて頂くご遺体は、生前のご本人の尊いご意志とご家族のご理解によりご献体頂いたものである。ご献体は無条件・無報酬によるものである。それ故、医学生は目の前のご遺体を見て、人体解剖の機会を与えられたことを感謝し、命の尊さと医師になる責任の重さを感じ、実習を通して医学生としてまた人間として成長するよう努力しなければならない。

我々の研究室では、自然的・文化的背景を含めたヒトの進化とその多様性の解析(我が国の拠点校の1つ)、細胞分化のメカニズム解明とその臨床応用等の研究を行っている。

解剖学(阪上単位)

教授 :阪上 洋行

人体の構造をミクロのレベルで探究する

解剖学[組織学・神経解剖学]
組織学は肉眼では見えない細胞の形態を光学顕微鏡、電子顕微鏡を使って拡大し、生命の構造を分子レベルで探究する学問で、発生学は1個の受精卵から複雑な人体を作り上げるまでの経過を解明する学問である。形態観察を主とする組織学、発生学は生理学、病理学、臨床医学の形態的基礎となっている。形態学は、古い学問に思われがちだが、検出機器の発達、特異的マーカーの出現、新知識による新しい角度からの観察により日々発展しており、スタッフは各自の研究分野で活躍している。組織学の実習では顕微鏡を通じて器官の構造を観察する。広範な情報の中から必要な情報を抽出する事により、意味無く見えた細胞の集まりが、精巧な精密機械のように見えてくるであろう。百聞は一見に如かずと言われるように、充分な受け皿があれば、眼からは瞬時に膨大な情報が入る。観察力を養う良い機会と思われる。

生理学

教授:川上 倫
教授:高橋 倫子

生命現象を科学的に分析し統合する学問

生理学
生理学は、正常な身体の機能全般を扱う学問領域である。近代医学の学問的構築は、正常な身体の構造と機能を学び、その後で病気の成り立ち、治療法を学ぶように組み立てられている。遺伝子発現に基づく細胞機能、臓器別機能、統合された全身機能の学習などは、生理学のもっとも得意とされている分野である。世紀を超えた難病やがん治療法の開発にも、生理学的素養は力を発揮する。臨床医の勘は、日常診療の経験(経験的医学)から生まれるものではなく、科学的な根拠(生理学をはじめとする基礎医学の知識)に基づいて涵養されなければならない。基礎医学を修めたものには、EBM(Evidence Based Medicine)は至極当然で、CBT(Computer Based Testing)やOSCE(Objective Structured Clinical Examination)を楽に乗り越えて、臨床医学の学習においても大きな成果をあげることができる。

生化学

教授:堺 隆一
教授:萬代 研二

分子レベルで生体機能やタンパク質の役割を研究

生化学
我々の身体は多くの生体分子によって構成され、それらの代謝・調節・協調作用によって生命に関わる高度な機能が維持されている。人間の臓器の正常機能やその異常である疾患について学習していくためには、まず個々の細胞における生体分子の役割や制御機構について理解している必要がある。細胞の代謝や外的環境の変化に応じた情報伝達など細胞機能のほとんどにおいては、タンパク質、特に触媒作用を持つタンパク質である酵素が中心的役割を果たしている。生化学単位では、タンパク質の細胞内局在、分子間相互作用、リン酸化などの翻訳後修飾、立体構造等の解析により、その正常機能の調節機構や、癌などの疾患における機能異常について研究を進めている。教育面では1・2年のタンパク質化学、代謝学、医化学・栄養学の講義と分子医化学実習に加え、1年次での細胞生物学と医用化学、2年次からの器官系別総合講義の一部を担当している。

分子遺伝学

教授:宮下 俊之

ポストゲノム時代の遺伝子医学を学ぶ

分子遺伝学
分子遺伝学はここで紹介されている分野の中でも進歩の著しい学問である。2003年に約30億の塩基対からなるヒトゲノムの塩基配列がほぼ解読され、ポストゲノムと呼ばれる時代に入った。そしてゲノム編集といって遺伝子を自由に書き換えることのできる時代もすぐそこに来ているといえる。今後第一線で医師として活躍するには、分子遺伝学の知識は必須である。講義では新時代の医学に対応できる臨床医となるための理解を深める。実習では遺伝子増幅法(自分で増やした遺伝子がみられる)と塩基配列決定法(4色の波形から配列を読みとる)、そして染色体分析法を学ぶ。研究面ではiPS細胞やゲノム編集の技術を駆使して、遺伝病の遺伝子解析や発症のメカニズム解明を目指している。興味のある学生は医学研究入門、学生医学論文といった制度で研究への参加を歓迎する。

薬理学

教授:馬嶋 正隆

薬物と生体との相互作用を研究。薬の作用や医療への応用性について学ぶ

薬理学
病気に薬がどのように効くかを研究する学問である。病気の起こり方が分かると、それに対する新しい治療薬も生まれる。動物で病気のモデルを作成し、これを生化学的あるいは病態生理学的に分析しながら薬の作用を見極める。また、薬の作用の仕方を調べていくと、細胞の膜、さらに細胞内での情報伝達経路など、分子レベルでどのように作用しているのかを知ることができる。そして、ほとんどすべての薬は必ずといっていいほど副作用がある。副作用はどうして起こるか、防ぐにはどうすればいいかも研究の対象になる。動物で効果を確認された新しい薬は、すぐに患者さんに投与されるのではなく、健康な人から、少数の患者さん、多数の患者さんへと、その安全性と効果を見極めながら次第に経験を積み、有効でかつ安全であると判断されたとき、初めて国から医師に使用が許可される。この「臨床薬理学」も研究対象になる。

病理学

教授:村雲 芳樹
教授:三枝 信

病気の種類やその本態を解剖学的、組織学的に追究する学問

病理学
病理学は、病気の時の体内の異常を調べ、病気の原因および病気になる機序を研究する学問であり、全ての医学生にとって必修の学問である。病理学において最も重要な仕事は、病気の姿を修得した上で、病理解剖や顕微鏡などの手段で人の病気の状況を的確につかむことである。例えば胃癌かもしれない患者さんの胃の一部を調べ、胃癌と診断・決定するのは病理医の役目で、この時点から患者さんの治療が始まる。また、病理学者のもう一つの面は、患者さんからの検体を用いて組織・細胞・タンパク・遺伝子レベルでの研究を行い、病気の姿をさらに浮きぼりにすることである。医学部では2年次で「病気の原因と成り立ち」を講義と実習の組み合わせで学び、さらに病理診断の基本を理解した上で、5・6年次では病院内における病理部で病理診断を体得する。

免疫学

教授:岩渕 和也

免疫系の認識・反応・制御の機構を解明し、医学・医療に貢献する

免疫学
生体は、いまだ見えざる敵をも撃退できるようにと、リンパ球のゲノムを改変して膨大な多様性を持つ抗原受容体レパートリーを創り出す。多様性を最大限に引き出す目的でランダムな過程を使うため、どうしても自己反応性のものや役に立たない失敗作も創り出してしまう。収拾には発現細胞の除去でまず対応し、自己反応性レパートリーからは抑制性細胞を選抜するというかなりアクロバティックな方策を講じたりもする。免疫学はこれからの素過程にまつわる遺伝子・分子・細胞・個体など各階層でのメカニズムを明らかにしようとする営為である。分子生物学的手法の導入により、免疫細胞の分化・免疫応答の制御・免疫疾患の発症についての詳細が、分子の言葉で説明可能となってきた。しかし、未だにこんなことも分かっていないのか、という基本的な問題が未解決であることも少なくない。そして、それらの問題の解決の多くは医学や医療に確実に貢献するものなのである。

微生物学

教授:林 俊治

病原微生物を深く理解し、新しい制御法と応用法の開発をめざす

微生物学
今から約300年前、レーウェンフックは手製の顕微鏡を用いて「小さな生き物」を見つけた。その後、パスツール、コッホ、北里らにより純粋培養法が確立され、多くの病原細菌が発見された。この過程で、レフラーらにより培養できないが病原性を示す「物質」(今ではウイルスと呼ばれる)も発見された。今やこれらの微生物は、ゲノムや分子構造のレベルで理解されつつある。微生物学教育は、その歴史を短時間で垣間見るものである。優れた先哲の探究心と社会還元の様を謙虚に学習し、志を我が物として受け継ぎ、将来に生かすよう講義・実習を行っている。過去半世紀の間、多くの抗菌薬、抗ウイルス薬が患者さんに福音をもたらした。今日の微生物学研究に求められるのは、その光と影を乗り越えてゆく全く新しい叡智と実践である。微生物の持つ優れた環境適応性能力に着目して、医療環境における微生物の挙動やその構成分子の形と働きを理解し、明日の医療現場で制御・応用するため研究を行っている。

寄生虫学

教授:辻 尚利

寄生現象を紐解く

寄生虫学
寄生虫とは感染症の原因となる病原体の中で、「動物界」に分類される生物群であり、複雑で独特の生活環を持つ。ヒトから自然環境に出た卵や嚢子は、そこで一定の発育をし、感染型幼虫としてヒトとの接触を待つ。口から、あるいは皮膚を貫き人体内へ侵入すると、さらに生活環は進む。各臓器を移行しつつ、定められた部位にたどり着くまで成長は続き、成虫の寄生臓器で、あるいはそれまでの過程で種々の病害をひきおこす。これら寄生体の特性を調べ、寄生される側(宿主・人体)の反応との相互関係を探究する学問分野が「寄生虫学」である。将来、感染症を診断し、治療しなければならない医学生は、この複雑怪奇な病原体と病害を受ける人体の反応の関係を正しく理解しなければならない。肉眼で、光学顕微鏡で、時には画像で、豊富な寄生虫標本を観察しつつ勉強できるのも、この教科の特色である。

衛生学

教授:堀口 兵剛

基礎的研究を通じて健康障害の予防を図る社会医学の研究分野

衛生学
衛生学は、病気の発生を予防するために、基礎的な研究を通じて、環境(職場環境や一般環境)をどのように改善すれば良いかを科学的に探究する学問で、社会医学の一つである。社会問題化したアスベストや有機化合物などの例に見るように、化学物質は人類に大きな利便性を提供したが、一方では産業職場における曝露や環境汚染により、がんやアレルギーなどの有害性をもたらすので、使用前にその有害性を予知することができないかを毒性学などの基礎的な研究方法を通じて探究している。近年の課題は、微量化学物質による健康問題など、従来の学問体系をより発展させて取り組まなければいけない段階になりつつあり、様々な研究手法を導入して研究を行っている。学生教育は、公衆衛生学と一緒に行い、予防医学全体としての理解を深める教育を行っている。また社会医学の分野として、国や県の衛生行政に専門的知識を生かして協力している。

公衆衛生学

教授:堤 明純

疫学調査などの集団のデータに基づき健康を守る仕組みを作る実践的な社会医学

公衆衛生学
公衆衛生学の目的は、社会全体の組織的な努力を通して集団の健康を改善することである(Winslow,1920)。社会もしくは地域を俯瞰する視点は臨床医にも必要であり、個人と集団双方の健康問題を視野において、根拠に基づいて問題の解決にあたれる医師・研究者の育成に努めている。健康に関与する要因は生存環境中の物理的、化学的、生物的、心理的な諸要因があり、これらが疾病の発生と悪化に深く関与しうることを学ぶ。現代社会における社会経済的要因と健康との関連にも注目している。公衆衛生が対象とする領域は、疾病の予防から社会復帰、医療体制の効率化、医療資源の適正分配、新たな健康問題(新型インフルエンザ)や災害医療、危機管理に対応するための法整備など多岐に及ぶ。人を対象とした疫学研究の成果(エビデンス)を基に、個人の疾病予防のみならず、それを支える社会の構築について、計画立案、実施、評価、改善を行う。

法医学

教授:佐藤 文子

法医解剖を通じて治安の維持、基本的人権の擁護、福祉の維持に貢献する

法医学
法医学は異状死体の解剖を施行し、警察の犯罪捜査に協力することにより、治安の維持、基本的人権の擁護に貢献する。また、法医学は広い意味で法に関する医学的事項を研究・応用する社会医学であり、我々の生活に密接に結びついた学問である。日本では超高齢化社会を迎え、孤独死が増加し、法医学教室の法医解剖が増加し続けている。法医解剖では乳幼児突然死、内因性急死、災害死、交通事故や犯罪に巻き込まれた方の死因の究明および原因の解明などを求められることとなる。本学では乳幼児突然死、内因性急死に関する形態学・遺伝学的アプローチによる死因解明、DNA鑑定による個人識別、死後経過時間の推定、薬毒物の分析・鑑定、自殺の社会医学的解析など幅広い研究活動を行っている。教育面では法医解剖例をもとに実務的内容を多く取り入れ、希望者には解剖見学を行っている。

実験動物学

教授:佐藤 俊哉

実験動物の開発と動物実験の適正化を推進し医学に貢献する

実験動物学
「医学が科学であるためには実証性を伴う動物実験による実験医学こそが重要である」と生理学者クロード・ベルナールが説いたように、医学研究では様々な実験動物が、生体の仕組みの理解・病気の原因解明・病気の予防法や治療法の開発のために重要な役割を担ってきた。そして現在では研究目的にあった高品質な実験動物を人為的に開発する時代になっている。今後も、医学教育ならびに生体の遺伝子機能解析・遺伝子治療・再生医療・創薬等の先端医学研究においては動物実験が必要不可欠である。本学では「遺伝子高次機能解析センター」が設置され遺伝子組換え動物の開発・解析に最適な環境のもとで先進的な教育・研究が行われている。実験動物学単位は動物実験に関する基本事項および科学的・倫理的な動物の取扱いに関する教育を行うとともに、実験動物の開発や研究を実験動物技術者等と共同して実施している。