わたしたちの周りには、いろいろな種類の波があります。 波はもっとも身近な物理現象といってもいいくらい。
たとえば、水面を伝搬する波や弦(ロープ)を伝わる波などは代表的ですが、自然界には「目に見えない」 波もたくさんあります。 そしてその代表が「音波」です。
私たちは普段たくさんの「音」の中で暮らしていますが、 大きい音、小さい音、高い音、低い音など、ひとことで音といってもいろいろと異なる特徴がありますね。 ここで注目したいのは「音色(ねいろ・おんしょく)」です。 同じ高さの音でも、楽器によって聴いた印象が全然違いますが、私たちはそれを音色が違うと表現します。
どうして楽器によって音色が違うのでしょう?
ある現象を分析するには、まずそれを単純な要素に分解するのがわかりやすいでしょう。 だから音色の違いを見るには、まずその音を単純な要素に分解すればよいのではないかと思いつきます。 音波の場合、その単純な要素は「正弦波 (sine wave)」です。
私たちが単純な正弦波を聴く機会なんて、実はほとんどありません。 私たちが普段聞いている音は、いろいろな振動数(周波数)の正弦波を重ね合わせたものなのです。 例えば以下のように2つの正弦波を重ね合わせると、右のような波形ができます。
楽器の音というのは、このように複数の正弦波を重ね合わせてできているのです。
私たちが聴く楽器の音を正弦波に分解すると、基準となる振動数の音とその倍音、つまり振動数が2倍・3倍... という音たちの重ね合わせになっていることがわかります。 楽器ごとに音色が異なるのは、この倍音たちがどのような割合で重ね合わさっているかの違いなのです。 (場合によっては振動数が1/2倍...の音が含まれたりもします。)
以下は今回の講義で実際に分析した、ある楽器の 440Hz つまり A の音の波形と倍音の成分です。 さて、どんな楽器でしょう?
答はトランペットです。
そしてこっちはコントラバス。
倍音の含まれ方がだいぶ違いますね。