はじめに

自分の研究分野は素粒子理論と呼ばれるものですが、現実の素粒子模型(現象論)というよりは、 理論的構造や、数理的側面に興味を持って研究しています。 素粒子論や宇宙論では高エネルギー領域の物理を扱うため、必然的に特殊相対性理論の世界になります。 素粒子は「場」と呼ばれる時空各点の関数により量子論的に支配されるため、 自身の研究分野は相対論的場の量子論周辺が舞台になっています。 特にボソンとフェルミオンの入れ替え対称性である超対称性を持った理論を扱います。 重力があるときは一般相対性理論を考慮し、曲がった時空を考える必要があります。 また、重力理論に超対称性があるとき、それは超重力理論と呼ばれます。 一部の超重力理論は超弦理論の低エネルギー極限の理論です。 超弦理論は10次元時空で定義された、すべての物質・相互作用を統一する統一理論候補として知られています。 この超弦理論にはDブレーンと呼ばれる様々な次元のソリトン的な超曲面解が存在し、 その世界体積の有効理論は超対称ゲージ理論で記述されます。

自身の研究対象は超対称ゲージ理論を中心に、超弦理論(M理論)、宇宙論、非可換場の理論、など多岐にわたっています。

研究詳細

関連論文はWorksのページに載せてありま す

弦理論における時空幾何の研究

大きなスケールで見る時空構造はアインシュタインの一般相対性理論で記述され、数学的にはリーマン幾何学により支配されています。 リーマン幾何学は大きさを持たない点粒子を時空のprobeとする幾何学です。 一方、整合的な量子重力理論候補である超弦理論では、物質の基本構成要素としてプランク長さの弦を想定しています。 そのため、超弦理論における時空構造は弦をprobeとして見る幾何学が背後にあると考えられます。 Double Field Theory (DFT)は弦理論に特有の時空構造を内包した新しい重力理論です。 我々は5次元のブレーンに相当するDFT解を構成し、弦の巻きつきが時空構造にどのように影響するかを調べました。

[関連論文 57]

高階微分を含む場の理論の研究

通常の場の理論では場は時空微分の2階までを考えます。 2階より高階の時空微分は有効場の理論などにおいて重要な役割を担っています。 我々は超対称な高階微分理論を扱い、ハドロン物理などに現れる空間変調真空 (spatially modulated vacuum)が超対称性を自発的に破る可能性を模索しました。 自発的対称性の破れに伴う南部ゴールドストーンモードがゴーストにならないパラメータ領域を明らかにし、物理的粒子が現れることを示しました。

[関連論文 54,55]

エキゾチックなブレーン

超弦理論には通常の幾何学では理解できない非幾何学的な対象が存在します。 その一つの例としてエキゾチックブレーン(exotic brane)が存在します。 我々は6次元の世界体積を持つエキゾチックブレーンの一つであるtype II弦理論の 5(22)-braneを表す世界面(2次元)理論 (gauged linear sigma model)を構成しました。 また、時空への量子論的補正について考察しました。 さらに、type IIA, type IIBにおける5(22), 5(23)-brane有効理論を構成し、type Iおよび SO(32), E8xE8 heterotic 理論でのexotic braneについて考察しました。 また、heterotic超重力理論でのexotic 5(22)-brane解をあらわに構成しました。

[関連論文 33, 34, 37, 39,43,47,50,56]

高次元インスタントン解のADHM構成法

場の理論におけるインスタントン(instanton)とは空間的だけではなく、時間的にも局在化した古典解です。 インスタントンは量子場の理論の非摂動効果の一種であり、理論の量子論的構造を理解する際に重要になります。 Atiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin (ADHM) 構成法は非常に強力なインスタントン解の数学的構成法です。 本研究では8次元時空間で定義されたゲージ場理論におけるインスタントン解 のADHM構成法を確立しました。 また、インスタントン解とSkyrmion解との対応関係(Atiyah-Manton構成法)が 高次元でも成り立つことを明らかにしました。

[関連論文 49,53]

超対称ゲージ理論における非摂動効果

超対称性を持つゲージ理論のインスタントン解について調べています。 インスタントン解はゲージ理論の古典解の一つで、非摂動効果を調べる際に重要になります。 超対称性のある理論では量子論的摂動効果(loop展開)は抑制され、非摂動効果が重要になってきます。 我々は拡張された超対称性(4次元N=2,N=4)を持つ模型をΩ背景と呼ばれる特殊な時空計量の上で考え、 このようなΩ変形された超対称ゲージ理論のトポジロジカル超対称性や、インスタントン解の性質を調べています。 また、ゲージ理論インスタントンは高次元に埋め込まれた低次元Dブレーンとして理解できるため、 超弦理論の枠内でもその性質を調べています。

[関連論文 12,17,20,23,24,26,27,31,35,45]

超対称高階微分模型におけるBPS状態

2階より高階の時空微分を含む超対称場の理論においてBPS状態がどのように与えられるかを調べました。 domain wallなどの古典解に対しては(スカラーポテンシャルというより)超ポテンシャルが本質的な役割を果たすことがわかりました。また、ゲージ場を含んだより一般的な超対称高階微分ゲージ理論のBPS状態について調べました。

[関連論文 40,41,44,46,48,51]

初期宇宙におけるインフレーション模型

宇宙の始まりではインフレーションと呼ばれる宇宙の指数関数的な膨張が起こったと考えられています。 インフレーションはインフラトンと呼ばれるスカラー場を用いると引き起こす事ができ、 そのメカニズムの解明は宇宙論では重要な課題となっています。 我々は、超弦理論に存在する超対称Dブレーンが、超重力フラックスの存在する6次元内部空間の ワープしたスロート上を動く事で4次元宇宙でインフレーションが起こる事を確かめ、 現在の観測と矛盾しない事を発見しました。 また、原始インフレーション後に第二のインフレーションを考える熱的インフレーションシナリオにおいて、フラトンの化学ポテンシャルを導入することで、宇宙論的モジュライ問題が解決されることを示しました。

[関連論文 29,52]

射影超空間上の超共形Chern-Simons理論

奇数次元時空では偶数次元にはないトポロジカルなゲージ理論(Chern-Simons理論)を考える事ができます。 特に、3次元時空での超共形Chern-Simons理論は、 近年M理論におけるM2ブレーン有効理論との関連が明らかになり、注目されています。 我々はN=3およびN=4超共形Chern-Simons作用を射影超空間(projective superspace)上で作り、 off-shellでの構成に成功しました。 また、非アーベル群ゲージ対称性を持つハイパー多重項の作用も構成することができました。

[関連論文 28,32,38]

コンパクト空間におけるトポロジカルソリトン

コンパクト空間上のソリトン解はそれ自体が興味深い数理的研究対象です。 我々は2次元トーラス上の非線形シグマ模型を考え、そのトポロジカルソリトンであるlump解を構成しました。 このようなlump解は非コンパクト空間上のlump解を重ね合わせ、適当に正則化することで得られる事を示しました。 また、そのようにして作った解のモジュラー不変性についても調べました。

[関連論文 30]

準安定真空における超対称性の破れ

素粒子模型の統一理論では超対称性がある事がとても自然です。 超対称性は現在の低エネルギー宇宙では観測されていないため、 模型の量子効果により破れる必要があります。 しかし、このようにダイナミカルに超対称性を破る模型を作る事は一般に難しいとされています。 近年、準安定真空(ポテンシャルの局所的極値)で超対称性の破れを考えると、模型の可能性が広がる事が指摘されました。 我々はSeiberg-Witten解(4次元N=2超対称ゲージ理論における厳密解)を用いて、 ハイパー多重項を含む超対称ゲージ理論の低エネルギー極限を考え、 そこでの準安定真空の可能性を調べました。 また、このような準安定真空がビッグバン直後の高温高密度状況でどのように振る舞うかを調べました。

[関連論文 13,14,25]

有限温度・有限密度中の場の理論

有限温度・有限密度中の場の理論に関する基礎的な研究を行いました。 超対称性が自発的に破れる模型の初期宇宙での真空の安定性を調べるため、 異なるR電荷を持つ有限温度・有限密度中の複数フレーバー場の理論を調べました。 量子効果を含んだ有効ポテンシャルの一般形式を書き下し、無限大発散の扱い方を示しました。

[関連論文 36,42]

M理論におけるM2ブレーン有効理論

10次元時空では矛盾のない5つの超弦理論が存在します。 これらは11次元のM理論と呼ばれる(未だ未確定な)理論により統一されると予想されています。 M理論にはM2ブレーン (membrane) と呼ばれる基本対象物が存在し、その一つの有効理論はABJM模型として知られています。 我々はABJM模型の様々なBPS方程式を構成し、いくつかの場合についてその解を求めました。 また一般にはBPSとならない運動方程式の解を解きました。 これらの解はM2ブレーンと交差する各種M理論対象物 (M-wave, M2,M5,KK-monopole, M9)と同定できました。 さらに、membrane効果による補正も含めたABJM理論の高階微分補正項も導出しました。

[関連論文 16,18,19,21,22]

非可換(超)空間における場の理論

ある種の超重力背景場中のDブレーン有効作用は非可換時空(同一地点の座標が交換しない空間)上の場の理論として 記述できます。我々はこの考えを拡張し、別種の背景場により、 Dブレーン上のN=2, N=4超空間のグラスマン座標の非(反)可換性が誘導される事を超弦の散乱振幅を具体的に計算する事で示しました。また、このような非(反)可換超空間上の超場の理論が量子群による対称性を保っている事を示しました。

[関連論文 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,15]


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