RESEARCH

当グループで行っている研究の内容です。

遷移金属ー典型元素結合を持つ錯体の合成、分析

研究内容1

(遷移)金属と炭素との結合を有する化合物の研究は有機金属化学としてこの数十年で目覚ましい発展を遂げました。一方で、遷移金属と炭素以外の典型元素(pブロック元素)との結合を有する錯体については未解明の部分が多く残されており、その特異な結合様式、構造、反応性には興味が持たれています。また、これらの錯体は典型元素化合物の変換反応における中間体と考えられるため、研究を進めることで新しい合成反応の発見、反応機構の解明にもつながります。当グループでは、様々な遷移金属と典型元素との結合を持つ錯体を合成し、単結晶 X 線構造解析、分光学的手法をはじめとする各種分析に加え、Gaussian プログラムを利用した理論計算を駆使して遷移金属錯体の解析を行っています。

Bull. Chem. Soc. Jpn.2018, 91, 588-594.
J.Am. Chem. Soc.2017, 139, 12804-12814.
J. Am. Chem. Soc.2015, 137, 15247-15261.
Organometallics2012, 31, 2957-2960.
Organometallics2009, 28, 3601-3603.

典型元素化合物の新しい合成法開拓

研究内容2

ケイ素、ゲルマニウム、スズは周期表で炭素の下に位置する重い 14 族元素で、炭素と同様 4 つの置換基から成る四面体構造を最安定構造としてとります。一方で、炭素を主骨格とする有機分子とは大きく異なる化学的・物理的性質を有することが知られています。例えば、ケイ素と水素との結合は炭素の場合とは異なりヒドリド性を示し、結合エネルギーも低いため比較的容易に切断されます。また、高配位化合物の安定性も大きく異なります。そのほか、EーE (E = Si, Ge, Sn) 単結合を有する化合物は σ → σ* 遷移に伴う紫外光吸収や EーE 結合鎖の増加によるレッドシフトなど C=C の π → π* 遷移に類似する挙動を示し、EーOーE 結合を主鎖に持つポリマー材料は優れた絶縁性、耐薬品性、耐熱性を有することが知られています。このような様々な性質の違いから、重い 14 族元素化合物は学術的な興味のみならず、産業分野でもシリコーンを代表とする材料としての利用が拡大しています。重い 14 族元素を含む化合物の合成、材料の開発には任意の EーE, EーC, EーOーE 結合 (E = Si, Ge, Sn) の形成を選択的に行うことが不可欠ですが、有機化学における炭素化合物に比べると合成手法が限られているのが現状です。当グループでは、ケイ素、ゲルマニウム、スズなどの重い 14 族元素をはじめ、ホウ素やリンなど幅広い典型元素化合物の EーE、EーC、EーOーE 結合形成反応の開発を行っています

Chem. Commun.2016, 52, 3163-3166.
J. Am. Chem. Soc.2012, 134, 11932-11935.
J. Am. Chem. Soc.2012, 134, 804-807
Chem. Commun.2011, 47, 7854-7856.

炭化水素化合物からの水素発生反応の開発


水素はクリーンな次世代エネルギー媒体として注目を集めていますが、その製造方法、貯蔵方法、運搬方法については決定的な解決策がありません。たとえば、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)は地球上に存在するため、採掘等により直接入手が可能ですが、水素分子自体は地球上にはほとんど存在せず、水素のほとんどは水、炭化水素などの化合物として存在しています。そのため、水素分子をエネルギーとして利用するには、これらの化合物から水素分子を効率的に発生させる方法(製造方法)が重要となります。現在は水素製造の95%以上を化石燃料の水蒸気改質(と水性ガスシフト反応、*CO2が生成する)に頼っていますが、クリーンなプロセスのためにはいずれは水やバイオアルコールなどの豊富、再生可能な資源から効率的に発生させる手法を開発する必要があります。また、水素は液化がしにくく(ー259℃)、水素脆化などの理由から高圧保存も難しいため、小さいスペースに大量に保管するのが難しい分子でもあります。もし、貯蔵が容易な水素豊富に含む化合物(金属水素化物、ギ酸、アルコール、アンモニアなど)から水素を発生させることができれば、貯蔵法、運搬法の課題を克服できる可能性があります。当グループでは水素源問題もあわせた解決法を模索し、再生可能資源であるバイオアルコール(メタノール、エタノールなど)などの炭化水素化合物からの水素発生型反応の開発に取り組んでいます。また、このような反応は酸化剤が不要なアルコールの酸化反応(ケトン、アルデヒドの合成法)とも言え、有機合成反応としても有用です。

Bull. Chem. Soc. Jpn.2018, 91, 588-594.
Organometallics2014, 33, 1532-1535.
Chem. Commun2014, 50, 7941-7944.