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RESEARCH

研究室紹介

反応機構学

キーワード:分析化学(分離分析,ミクロスケール分析,バイオ分析)、光反応、極低温マトリックス分光、光活性化型放出剤

未知の化学反応や分子間相互作用の探求・解明に向けて、新たな測定法・解析法を創出する

1.測定対象分子のみと結合する分子認識素子の創成
2.電気泳動を用いた分子間相互作用解析法の構築
3.極低温マトリックス単離法を用いた短寿命化学種の検出 
4.創薬へ光化学過程を応用することを目指した基礎研究 

研究内容

細胞外小胞(エクソソーム)解析のための新規分析法の開発

 「細胞外小胞」とは,様々な機構によって細胞から放出される数十nm~数µmの脂質二分子膜小胞(小さいカプセル)であり,細胞内のタンパク質や核酸,低分子群などの情報を含んでいます。近年では,この細胞外小胞の中でも「エクソソーム」と呼ばれる粒子が細胞間情報伝達に関与していることが明らかとなっており,特にがんの転移機構の解明や早期診断に繋がる物質として注目されています。
 私たちの研究室では,細胞外小胞(エクソソーム)の物理化学的情報(粒子径,膜組成,内包物)に注目し,それぞれを正確に評価するための方法論について研究を進めています。
・「アプタマー」を用いた膜組成特異的捕捉・検出・解析
・ミクロスケール電気泳動技術を駆使した粒子径精密分級
・特定疾患関連細胞外小胞の高感度かつ選択的な検出法の開発 など

※ 画像は細胞がエクソソームを放出する様子をイメージしたもの。
(Created by ChatGPT)

新規分子認識素子「アプタマー」を用いた標的生体分子特異的解析

 「アプタマー」とは,標的分子のみと特異的に結合するような配列を持つ核酸の総称です。同じような機能を持つ分子として,一般的には抗体が広く利用されておりますが,生物由来の抗体は化学的安定性が低く高価であるなどの欠点もあります。そこで近年,人工合成可能で安定性が高く安価なアプタマーが注目されており,生体内の主要マーカーの捕捉・検出や医薬品への応用が進められております。
 私たちの研究室では,任意の標的分子に対するアプタマーを簡便・迅速に選抜する方法論の開発とその性能向上のための理論構築を進めております。また,選抜されたアプタマーの応用技術開発も進めており,生体物質との親和性評価方法の開発や,アプタマーの機能を組み込んだ新規材料の開発などにも取り組んでおります。

図はCD63アプタマー(1)の三次構造予測結果
Created by AlphaFold Server.
(1) Q. Zhou, et al. Method 2016, 97, 88. 

電気泳動を利用した分子操作のミクロスケール化学への応用

 ミクロスケール空間(~100 µm)における化学では,界面反応の高効率化・迅速化,反応時間の短縮,反応物質量の大幅な削減など,一般的なビーカーやフラスコを用いたバルクスケールの化学とは異なる分子の挙動が観察されます。しかしながら,このような非常に小さい空間で分子を操作して反応を制御するためには,様々な工夫が必要となります。
 私たちの研究室では,電気の力で溶液中の分子を操作する「電気泳動」の技術を応用し,ミクロスケール空間における混合・反応・分離・分析技術開発と,開発した技術を用いた生体分子間相互作用解析,酵素反応解析,遺伝子解析,抗原抗体反応解析などを行っています。

マイナス263℃の極低温を用いて 光化学反応の仕組みを解き明かす

分子が光を吸収することによって開始される反応を光化学反応といいます。この反応の仕組みを解明するには途中に介在する反応中間体の構造や性質を知る必要があります。しかしその寿命は100 万分の1 秒以下という場合も多く、通常それを捉えることは困難です。そこで我々はマイナス263℃で凍結した不活性媒体の中に反応中間体を封じ込めることで長寿命化させ、直接観測します。この手法を用いると、例えば窒素が一本しか手をもたないナイトレンと呼ばれる分子を観測することができます。このような研究を通して構築させる「反応中間体化学」は、学問的に意義をもち、光触媒や光がん治療といった光反応の創造にも大きく貢献しています。

光活性化型放出剤の構築と能力評価

光を照射することで抗癌剤や一酸化窒素NOを放出する分子を設計・合成し、その光化学的特性や放出能力を明らかにするとともに、癌細胞に対する殺細胞効果を評価します。光照射の位置や時間の制御は容易であり、この利点を生かして望む場所にのみ薬剤を投与できれば、副作用の大幅な軽減化が期待できます。