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2023.11.15

熱や力によって分裂して色が変わるホモキラル二量体の論文がJ. Am. Chem. Soc.に掲載されました!

 北里大学理学部の瀧本和誉助教、弓削秀隆教授、愛媛大学大学院理工学研究科の佐藤久子元教授(現在, 理学部研究員(プロジェクトリーダー))、物質・材料研究機構(NIMS)ナノアーキテクトニクス材料研究センターの石原伸輔主幹研究員、ラブタヤン主任研究員らの研究グループは、熱や力によって分裂して色が変わるホモキラル二量体の合成に成功しました。

 右手と左手のように鏡像が重なりあわない構造(キラリティ)を持つ分子をキラル分子と呼びます。キラル分子が自他のキラル構造を選別しながら自発的に集合する現象(キラルセルフソーティング)は、生命の起源にも関係があると言われており、その理解と応用は広い関心を集めています。キラルセルフソーティングは、高分子や無数の分子から成る巨視的な集合体において強く発現することが知られていますが、数個の分子から成る小さな集合体において十分なキラル選別性が生じることは稀でした。そのため、外部刺激によってスイッチングが可能な小さな分子集合体の設計において、キラルセルフソーティングを取り入れることは見過ごされていました。

 本研究では、プロペラ構造を有するキラルなイリジウム金属錯体に適切な長さのアルキル鎖を導入すると、アルキル鎖間の適度な立体反発によって二量体と単量体のあいだで可逆性が生じることを見出すとともに、二量体がほぼ完全なホモキラル選別性(同種のキラル構造によるキラルセルフソーティング)を有することを詳細な解析に基づいて証明しました。溶液中での平衡において、室温では配位不飽和な単量体(5配位)が主成分ですが、低温では配位飽和なホモキラル二量体(6配位)が形成されて色が変化しました(サーモクロミズム現象)。更に、ホモキラル二量体の結晶は準安定状態にあり、力学的な刺激によって単量体へと分裂し、配位構造が変化して色が変わること(メカノクロミズム現象)も明らかとしました。

 本成果は、キラルセルフソーティングの理解に重要な知見を与えるとともに、小さな集合体におけるキラルセルフソーティングが刺激応答性材料の設計(例:分子触媒、化学センサ、光電子デバイス)に応用できる可能性を示しました。

 この研究成果は、2023年11月9日付で、アメリカ化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。


[論文情報]
掲載誌: Journal of the American Chemical Society
論文名: Thermo-/Mechano-Chromic Chiral Coordination Dimer: Formation of Switchable and Metastable Discrete Structure through Chiral Self-Sorting
著者: Kazuyoshi Takimoto,* Takumi Shimada, Kazuhiko Nagura, Jonathan P. Hill, Takashi Nakanishi, Hidetaka Yuge, Shinsuke Ishihara,* Jan Labuta,* Hisako Sato*
掲載日: 2023年11月9日
DOI: 10.1021/jacs.3c05866

[関連リンク]
北里大学プレスリリース: https://www.kitasato.ac.jp/jp/news/20231114-01.html
論文URL: https://doi.org/10.1021/jacs.3c05866

 
本研究の概念図: 熱や力によって分裂して色が変わるホモキラル二量体本研究の概念図: 熱や力によって分裂して色が変わるホモキラル二量体
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