RESEARCH
反応機構学講座 板橋 淳君(修士修了)と石田 斉准教授との論文がChemPhotoChemの人工光合成特集号に掲載されました。この研究は、倉持悠輔博士(前 北里大学特任助教、現 東京理科大 助教)と外山真理博士(前 明治大学、現 甲南大学 助教)との共同研究です。
Yusuke Kuramochi, Jun Itabashi, Mari Toyama, and Hitoshi Ishida*, “Photochemical CO2 Reduction Catalyzed by Trans(Cl)-Ru(2,2’-bipyridine)(CO)2Cl2 Bearing Two Methyl Groups at 4,4’-, 5,5’- or 6,6’-Positions in the Ligand”, ChemPhotoChem, 2018, 2, 314 – 322, DOI: 10.1002/cptc.201700201
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cptc.201700201
First published: 7 January 2018
私たちはこれまで2,2’-ビピリジン(bpy)を配位子とするルテニウム錯体 trans(Cl)-Ru(bpy)(CO)2Cl2 による光化学的CO2還元反応を調べてきましたが、本研究ではビピリジン配位子に2つのメチル基を導入した時の触媒活性の違いを検討しました。6,6’位にメチル基を導入した場合は活性が下がりますが、4,4’位と5,5’位の場合は活性は本来ほとんど同じでした。それにもかかわらず、触媒濃度が高い場合は5,5’-ジメチル錯体の触媒反応が高効率で進行しました。活性が同じなのにどうして反応効率が変わるのか。私たちはこの論文でその理由として、触媒反応に隠れている逆電子移動過程の存在を指摘しています。今回の結果は、触媒反応のある結果だけからその触媒の活性を評価することの難しさも示しています。
本研究は、科研費 新学術領域研究「人工光合成による太陽光エネルギーの物質変換:実用化に向けての異分野融合」(15H00882)、科研費 基盤研究(C) (17K05815)、独立行政法人 科学技術振興機構 さきがけ研究「光エネルギーと物質変換」による助成を受けました。