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SCIENCE MAGAZINE
「なぜ」が、世界を変える。

どうデザインしたらどう光る?
無限の可能性の中から、
美しく光る化合物を探し出す

化学科
長谷川 真士 教授


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新たな発光色素の開発をされている化学科の長谷川教授にお話を伺いました。新開発のための化合物のデザインは無限にできるという長谷川教授。「無限に思える化合物の中から意味のあるものを見出し、ストーリーを作っていくのが大切」。それが私たちの生活や健康を支える技術につながっているのだそうです。ご自身の研究の魅力、そして北里大学で研究することの意義を語っていただきました。

日常や医療現場を支える円偏光。
研究が進めばより精細な映像、手術も可能に

有機合成によって、発光色素を新たに作り出す研究をしています。特に専門としているのは、「円偏光」を発する色素です。たとえば蛍光ペンが光るのは、使われている蛍光色素が室内光や太陽光を吸収して別の光を発するから。それと同じように、円偏光を発する色素を新たに開発しようとしています。円偏光とは、回転しながら振動が進んでいく少し特殊な光です。身のまわりのものではカメラのフィルターや液晶ディスプレイ、アミューズメントパークのアトラクションの立体映像などに使われています。医療現場では、手術で用いる内視鏡や手術支援ロボットの操作に使用する三次元ディスプイなどに応用されています。
私は、鏡像が元の構造と重なり合わない「キラル」な性質を持つ化合物が円偏光を発光することに着目し、より効率の良い発光色素を開発するために研究をしています。開発が進めば、ディスプレイ材料やがん細胞の発見に使えるでしょう。また、明るく発光しつつ円偏光を示す色素をLEDなどにすれば、より高精細な三次元ディスプレイの作成も可能になり、様々な場面で役立つことが期待されます。

研究の鍵は「キラル」な形。
自ら構造を設計し、美しい光を作り出す

先述した「キラル」な化合物とは何でしょうか。まず、両手の手のひら同士を合わせたと考えてみてください。ぴったりと重なり、互いに鏡に映したときの像と同じだと言えますよね。しかし、片手をもう一方の手の上に同じ向きで重ねても、ぴったりとは重なりません。この性質をキラルといいます。つまりキラルな化合物とは、化合物の構造が、それ自身の鏡像と同じ向きで一致しないものを指すのです。キラルな化合物は、円偏光を発する性質を持ちます。しかし、化合物の特徴と円偏光を発光する材料の関係はまだよく分かっていません。私の研究の目的はそれを明らかにし、より効率よく円偏光を発する新材料を開発することです。
化合物と円偏光発光の関係を解明して新材料を開発するには、自分でキラルな化合物を設計する必要があります。私がこの研究を始めたのも、有機合成化学のバックグラウンドを活かして新材料を作り出すことに魅力を感じたから。設計には、エッシャーの『階段』のような絵を参考にすることもあります。無数のデザインの中から美しく光る化合物を作れたときの感動は、一度味わうとやめられません。

自分の興味を多方面から追究できるのは、
生命科学に特化した北里大学ならではの魅力

理学とは文字通り、物事の「理(ことわり)」を明らかにする学問だと思います。「なぜ?」という現象の仕組みを、理論で明らかにするのです。自然界の不思議な現象を合理的な物語で説明する、と言ってもいいかもしれません。理学部自体は他の多くの大学にもありますが、北里大学理学部の最大の魅力は、他学部と共同で研究を行う機会が豊富だということ。理系、中でも生命科学系の学部に特化した北里大学だからこそ、どの学部の根底にも共通して「科学」があります。そのため学問の垣根を越えて、他学部と共同研究を行う学生も多数。自分の疑問に対し、多方面からアプローチできる環境であると言えます。
また理学部では、何か決まった資格を取るというわけではありませんが、研究活動を通じて理論的に考える力、考えや結果をまとめて表現する力が養われます。これらはどちらも実社会に必要不可欠なスキルです。理科が好き、実験をしたい、科学研究に没頭したい、そんな方々と一緒に研究活動ができるのを楽しみにしています。

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