第448回獣医学科セミナーを以下のように開催いたします。教職員および学生のご参加をお待ち申し上げます。
タイトル
~殺鼠剤環境科学万事噺~
(1)スーパーラットは何がスーパー? 殺鼠剤抵抗性メカニズムの解明
(2)「東洋のガラパゴス」小笠原諸島固有野生動物の殺鼠剤感受性評価
(3)機械学習・分子シミュレーション手法を用いたMutantタンパク質の活性予測
演者
武田 一貴 先生 (毒性学研究室)
セミナー内容
(1)野生齧歯類は種々の人獣共通感染症を媒介するため、ワルファリン等の抗凝血系殺鼠剤による駆除が行われている。しかしこれに抵抗性を示す所謂スーパーラットが出現し駆除が困難である。そこで、新規殺鼠剤開発を目指し東京新宿由来の殺鼠剤抵抗性クマネズミクローズドコロニーを用いた分子生物学的研究により抵抗性メカニズムの解明を行った。
(2)野生齧歯類は離島に侵入し生態系を攪乱する事がある。我が国でも小笠原諸島でのクマネズミ侵入が問題となり殺鼠剤散布が行われてきた。殺鼠剤散布は時に野生動物の中毒死を引き起こすため、散布地域の野生動物に対する影響を評価する必要がある。本研究では絶滅危惧種であるオガサワラオオコウモリ、アカガシラカラスバト、アオウミガメといった野生動物種における殺鼠剤感受性の種差を評価した。
(3)遺伝子変異はタンパク質と医薬品・汚染物質の結合性を変化させ、薬剤抵抗性/高感受性の原因となる。現在、遺伝子変異で生じる影響をこれら変異タンパク質の構造情報から予測する手法の構築に取り組んでいる。抗凝血系殺鼠剤とその標的タンパク質ビタミンKエポキシド還元酵素を例とした現在の進捗を報告したい。