第515回獣医学科セミナー< 外部研究者招聘セミナー>「デンキウナギの研究」演者:飯田 敦夫 先生(名古屋大学大学院生命農学研究科)

2024-10-04
17:00
A棟3階 A31講義室

イベントの概要

以下の通り、第515回獣医学科セミナー< 外部研究者招聘セミナー>を開催します。

多数ご参集くださいますようお願いいたします。

第515回獣医学科セミナー< 外部研究者招聘セミナー>

【開催日】 10月4日(金)

【会 場】 A棟3階 A31講義室

【時 間】 17:00~

【演 者】 飯田 敦夫 先生(名古屋大学大学院生命農学研究科)

【タイトル】デンキウナギの研究

【要 旨】地球上で最大最強の発電生物デンキウナギは、古今東西において人々の注目を集める存在である。最大全長は2メートルを超え、寿命は20年にも及び、報告されている最大電圧は860ボルトに達する。17世紀後半にカール・リンネによりGymnotus electricusとして記載され、18世紀後半のセオドア・ジルによりElectrophorus electricusへと再分類され、2019年にデビッド・デ・サンタナらにより3種(E. electricus、E. varii、E.voltai)に分割・再定義された。デンキウナギの体内で放電を担う発電器官は、17世紀後半にジョン・ハンターにより主器官(main organ)とハンター器官(Hunter’s organ)が、18世紀後半にはカール・サックスによりサックス器官(Sach’s organ)が報告され、解剖学的には計3種とされている。その中でも主器官が最も早く、胚発生期に出現すると考えられている。だが、デンキウナギは飼育下での繁殖例がなく、胚の形態形成を解析することは困難な状況にある。

そこで我々は、観賞魚として流通するデンキウナギの稚魚(全長10-15センチメートル)を入手し、成長に伴う発電器官の形成(発電細胞の分化・増殖)を組織標本の観察および免疫組織化学により検証した。その結果、発電細胞の前駆細胞とおぼしき細胞群を見出したため、発電器官の成長モデルと合わせて紹介する1

加えて我々は、自然環境下でデンキウナギが放電した場合、環境DNAとして水圏に存在する核酸が放電を受けた生物の細胞に導入される、エレクトロポレーション現象が起こるのではないかと仮説を立てた。この仮説を検証するための実験結果と考察についても紹介する2

参考文献

1. Senarat et al., bioRxiv (2024), doi: 10.1101/2024.08.21.606117

2. Sakaki et al., PeerJ (2023), doi: 10.7717/peerj.16596