北里大学 獣医学部 動物資源科学科

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動物資源科学科 なるほどコラム

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有原 圭三 教授
ペットフードを扱う大学発ベンチャーは
成功するのでしょうか?
動物資源科学科 食品機能安全学研究室
有原 圭三 教授

肉や牛乳、卵など動物性食品が持つ健康に役立つ働きを研究。「動物資源科学科の学生諸君は、われわれ人間の食よりも動物の食に対する関心の方が高いようです。でも、食物は人間に欠かせないものなので、食と健康の関係や食の安全性についても興味を持って取り組んでほしいものです。」

ペプチドを使って新しい食品を開発

―動物性タンパク質を積極的に摂取すべきだと主張されていますね。
コレステロールや生活習慣病の心配はないのでしょうか。

肉や牛乳、卵といった動物性食品に含まれているタンパク質は、栄養学的に植物性のものよりも優れており、私たちの体を作るのに大いに役立つので、きちんと摂取したほうがいいですね。一方、コレステロールを過剰摂取すると危険だという考え方は、そもそもアメリカから入ってきたものです。しかし、アメリカ人のようにカロリー過多ではない日本人では、コレステロールや脂肪の摂取にそれほど神経質になる必要はありません。コレステロール摂取が動脈硬化や脳卒中につながるという説も、日本人にはあてはまらないもので、良質な動物性タンパク質の摂取により、血管を丈夫にすることの方が、ずっと大切です。さらに、適度のコレステロール摂取は、がんやうつ病の予防にも役立ちます。

ところで、動物性タンパク質が酵素で分解されてできるペプチドには、疲労回復やストレス予防、血圧調節、整腸作用といった驚くべき働きがあることが、私たちの研究成果からわかっています。このようなペプチドは、私たちが動物性タンパク質を摂取した場合にも、消化管内で生成されます。また、現在、動物性タンパク質由来のペプチドを利用した新しい食品の開発を、民間企業との共同研究により進めています。

―そういった成果をペットフードの開発にもつなげようとしているそうですが、
現在のペット市場で受け入れられる要素はあるのでしょうか?

日本のペット市場は右肩上がりで2004年度には1兆円に達しており、ペットフードの市場規模は約4,000億円を占めています。しかも、欧米では90%を超えるペットフードの普及率が、日本の犬では約44%と低く、今後も成長する可能性が高い市場といえるでしょう。
ただ、ペットの社会的存在意義が向上し、付加価値の高いペットフードが求められているものの、日本のペットフード業界は研究開発面では遅れていると言わざるを得ません。そこで、北里大学の卒業生を中心とする関係者の協力により、新しいペットフード開発のプロジェクトに着手しました。私が研究してきた動物性タンパク質は、犬や猫のようなタンパク質要求量の多い動物のフード素材として非常に適したものですから、私にとってまさにピッタリな研究テーマでした。最近のペットは、ヒトのような生活習慣病を抱えるものも多いですし、高齢化に伴う健康問題も深刻化しています。このような状況を見ると、ペプチドの保健的な作用を付与したペットフードが受け入れられる素地は大きいと思います。

北里大学発ベンチャーとしての期待

―ペットフードには人間の食品のような規制はあるのでしょうか。

ペットフードに関しては法整備が遅れていて、直接規制する法律はまだありません。ちょっと怪しいと思わせるような表示のペットフードが多く目に付くこともあって、私たちが良質なペットフードの開発につながる素材の提供をしていきたいと思っています。すでに試作品は完成しており、現在実験を重ねています。私たちの学科の卒業生が、ペットフード会社、食品会社、ペット専門学校などに多くいて、非常に積極的に協力してくれていることも有り難い限りです。

―このプロジェクトの成功の可能性はどのくらいとお考えですか?

可能性は100%と言いたいところです。幸いこの研究テーマは、農林水産省の起業化促進型プロジェクトに採択され、2年間で5,200万円の予算が付くことになりました。このプロジェクトでは、研究開発終了後2年以内のベンチャー企業設立が条件となっています。私たちは資金を有効に活用して研究を進め、優れたペットフード素材を供給する企業を立ち上げる計画を練っています。大学発ベンチャーは、学生の皆さんにとっても産業や経営を学んでもらうための生きた教材となります。さらに、大学発ベンチャーが育つかどうかは、社会貢献という面からの大学自体の評価にも関わってきますので、大いに力が入るところです。このプロジェクト、必ず成功させますよ。
*平成19年6月に北里大学獣医学部発のベンチャー企業「株式会フード・ペプタイド」(http://foodpeptide.com)が設立されました。また、同年9月には、研究成果を生かした魅力的なペットフードが発売されています。
山ア 淳 准教授
“動物福祉”
自分のペットを可愛がるだけでは、だめなのですか?
動物資源科学科 動物飼育管理学研究室
山ア 淳 准教授
動物の消化機能の調節秩序を専門に研究。動物とそれをとりまく社会についても興味を持ち、動物福祉論の講義を担当。「愛し方もバランスが大事ですが、動物の有意義な“生”に思いを巡らし、自分のできることからまず一歩を踏み出してほしい」

社会に暮らす動物の愛し方が問題

―動物福祉とはどういうものなのでしょうか。
自分の飼っている動物を愛するだけでは不足なのでしょうか。

社会で暮らしている動物、全てに関心を持って、苦痛を取り除き幸せにしてあげるのが人間の責任であると考えるのが動物福祉の概念です。人間を取り巻く動物を区分すると、野生動物と家畜に分かれます。さらに家畜は、愛玩動物、展示動物、実験動物、農用動物の4つに分類できます。まず、愛玩動物ですが自分のペットをむやみに可愛がるだけでは動物が幸せとは言い切れません。たとえば、餌やおやつを欲しがるだけ与えて病気になってしまったら、本当に愛しているとはいえないからです。また、野良猫や野良犬について里親探しや避妊を施すなど、誰にも飼われていない動物を減らす活動に関心を持つことも必要になります。

―愛玩動物以外はどのように愛すればいいでしょうか。

展示動物については、“エンリッチメント”が必要です。動物園で暮らす動物は自分で餌を探さなくていいため、野生動物に比べて生き甲斐に乏しく、時間の使い方に困ることがあります。しかし、餌を食べるための仕掛けを作ってあげれば、動物たちも時間を有意義に使えますし、“行動展示”になって人間の理解も深まります。これも愛と言って差し支えないでしょう。実験動物は人間に様々な知識と情報を提供してくれる貴重な存在ですが、むやみに利用してよいというわけでは無く、3つの「R」といわれる、実験を細胞などに置きかえる代替(replacement)や、実験動物の数をできるだけ減らす減少(reduction)、実験法の工夫による苦痛の軽減(refinement)によってできる限り動物への負担を減らそうというのが現在の動物福祉の考えです。また、農用動物、つまり食料として利用する動物たちについては、生産者は動物が生きている間の質を高めてあげて、屠殺はできるだけ苦しまないように瞬間で終わらせないといけないですね。

生産者だけでなく消費者の意識向上も必要

―農用動物については質を高めると価格に跳ね返り、
消費者に支持されないこともあると思いますが?

消費者が安い商品ばかり購入していると、生産者の収入も下がり、いずれ不当なサービスしか享受できないようになります。「情けは人のためならず」ではありませんが、自らに返ってくることなので、消費者も生産を理解する機会を持つべきでしょうね。本学でも、北海道で附属牧場を運営していて、牛たちに質の高い生活をさせ、学生の実習や消費者の見学に活用しています。そこからとれる牛肉は競争力こそ乏しいですが、安心で味も良いと評判で首都圏の生協や大学病院の病院食、地元の給食にも採用され支持を得ています。このようにいいサイクルを作っていかないといけません。

―人間中心の考えから脱却するのは簡単なことには思えないのですが、
どうずればいいのでしょうか。

動物は傷みを感じる“生物”であることを理解し、配慮してあげるのが人間としての倫理であり、人間らしい生き方といえるでしょう。とくに都市生活者は、愛玩動物や野良犬を見かけても、農用動物を目にする機会はほとんどありません。そのような人たちに農産物がいかに作られているのかを伝え、自然への配慮や敬意を持ってもらうのも、教育者や行政の役割でしょうね。