北里大学 獣医学部 生物環境科学科

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生物環境科学科 なるほどコラム

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杉浦 俊弘 教授
地域住民に受け入れられたビオトープと
その先にあるものは?
生物環境科学科 緑地保全学研究室
杉浦 俊弘 教授
専門分野は「草地畜産」だが、仏沼干拓地のオオセッカなど野生生物の生息環境と植生や土壌との関連についても調査研究を行う。「ビオトープだけでなく周りの水田でも蛍や水鳥が見られてこそ本当の意味で根付いたといえる」

在来植物や生物を育てるため、自然に人の手を加える

―10年がかりでビオトープを作り上げられたそうですね。

もともとこの辺りは台地で農業用水に乏しかったのですが、約150年前に新渡戸稲造の祖父・新渡戸伝が、奥入瀬川から水を引き、できたのが稲生川です。稲生川は幅2〜3mほどの河川で、近くの水田には一本木沢ため池から給水していました。しかし、10年前から減反政策などでため池が必要なくなり、地元住民の意見も考慮してビオトープに転換することが決定しました。青森県の自然環境保全事業に県営事業として採択された初めてのケースになります。

―当初はノウハウが何もなかったのでは?

土木業者や県にもビオトープ施工は例がなく、北里大学の緑地環境保全学研究室で委託研究をすることになりました。まずは水鳥、ホタル、リス、植物などの調査をし、次に地形修正に関する研究です。ため池はコンクリート護岸で、水際の最適な傾斜角や水深を調査する必要がありました。毎年4〜5名の学生が卒業研究のテーマに採用することでノウハウを収集し、完成したのが2004年です。

―作り上げるにあたって発見したことはありますか?

ゲンジボタルの生態で新しい発見がありましたね。ゲンジボタルは西日本から関東のエリアで研究が進んでいます。しかし、北限である青森でも同じ生態とは限りません。教科書にはホタルの幼虫はカワニナしか餌にしないと記載されていますが、実際には他の貝類でも問題ありませんでした。また、文献には1年で羽化するとありましたが、調査すると毎年観測される個体数に幅が認められました。2〜3年周期と考えると合点がいくのです。これは冬期に川が凍結する当地ならではの現象かもしれませんが、常識では考えられない発見といえます。

今後は生産者を巻き込んだ取り組みが必要

―ビオトープは地域社会と大学をつなぐ存在でもあるようですね。

建設にあたっては、私も委員を務めた「稲生川を考える実行委員会」が設立され、地元住民の意見を取り入れるようにしました。完成後の運営に関しては「一本木沢ビオオープ協議会」で2か月に1度は役員会や理事会を開き、常に皆さんの意見を取り入れながら進めています。当初は地域住民の中から環境に関心の深いリーダーを養成し、講座を開くなどして中心となる人物の育成も必要でした。また、ビオトープを環境教育の場として位置づけ、地元の子どもたちにとって自然を「見る、触れる、考える」機会になればと思っています。子どもたちが動けば、その親も巻き込まれる。祖父母の世代もホタルや水鳥を子どもに見せたいという気持ちが強いので、結果的に三世代とも参加されています。これらソフト面での取り組みは、いまや県外からも評価され、視察が相次ぐほどです。

―ビオトープが完成して今後の取り組みは?

現在、世界でカロリー摂取量が不足しているのはアフリカです。過剰摂取している先進国の食糧を再分配すれば、世界から飢える人がいなくなるでしょう。

―これらをふまえて学生に望むこととはなんでしょうか?

今後は農業との関わりで捉えていきたいですね。伝統的な有機農業が生物をいかに多様にしているか。周りの水田を含めて、環境や生き物にやさしい農業はどうあるべきか。それが結果的に地域の生態系を維持することに繋がります。生産者を巻き込んでいけば、本当の意味で根付くことになります。奥入瀬の水を作って作られた米がブランドになり、象徴として一本木沢ビオトープが取り上げられれば。これらは地方の大学だからこそできる取り組みだと思いますね。