北里大学 獣医学部 生物環境科学科

北里大学獣医学部

  • トップ
  • 学部案内
  • 学科・大学院案内
  • 入試ガイド
  • 就職・進学情報
  • 授業情報
  • キャンパスライフ
  • 附属施設

2019年度生物環境科学科教育貢献賞を受賞して(生物環境)

トップ 学科・大学院案内 生物環境科学科 新着情報2019年度生物環境科学科教育貢献賞を受賞して(生物環境)

JABEE委員会「教育貢献賞」(2019年度)を受賞して

北里大学獣医学部/生物環境科学科/環境情報学系・准教授 皆川秀夫

  私はこのたび、生物環境科学科のJABEE委員会が主催する、栄えある「教育貢献賞」(2019年度)を受賞しました。
  受賞対象は主に「応用力学」(1990〜2006年)・「応用力学演習」(2007〜2019年)と「気象環境学」(1990〜2019年)の講義・演習科目です。通算29年間、2・3年生を対象にそれぞれ講義や演習を行ってきました。このような長期にわたる講義・演習が評価されたものと思っています。以下に講義・演習の内容や工夫を紹介します。

応用力学・同演習

   これらは国家公務員の農業農村工学の基礎科目(応用力学、水理学、土質力学、測量学)の一つで、荷重による物体の変形や破壊を考察します。応用力学・同演習は橋やダム、道路・水路、建物などの建造物を安全に設計するための極めて重要な科目です。

図1. ドイツ・ゲッチンゲン大学の数学研究所にて
図1. ドイツ・ゲッチンゲン大学の数学研究所にて
(左写真=ヒルベルト、右写真=ミンコフスキー)

  ここでは理解を深めるため歴史を重視しました。力の分類(重力、電磁気力、強い力、弱い力)や性質(ベクトル量)に加え、ガリレオやニュートンがそれぞれ発見した静力学、動力学を映像などで説明し、興味を喚起しました。また「力と変位との関係」を「エネルギーの最小値」としてみた「変分原理」による超高層ビルの設計を紹介、さらにタンパク質の構造と機能も力学で理解できることを説明しました。力学は最高の学問であり、それを真に理解するためにはヒルベルトをはじめとする「現代数学」の創始者たち(図1)も大きな貢献をしてきたことを紹介しました。



気象環境学

   これは農業気象学と、気象を積極的に環境調節した農業施設学とを合わせた科目です。気象環境学では「放射」と「空気」の理解が大切であることを強調しました。興味を引くため、「電磁波の存在実験」(ヘルツ、1888年)を模し、ガス着火器(火花放電)とラジオ(コイルとコンデンサーとによる発信・受信回路)とを用いた「電磁波の発生・受信ミニ実験」や、「大気の大循環」を理解するため、円筒に空気を吹付けドーナッツ状の空気渦を発生させ、遠く置いたローソクの炎を消す「空気渦の発生ミニ実験」をそれぞれ工夫・実演しました。
  放射は太陽の日射や地物の熱放射として知られていますが、それは素粒子物理学からみれば物質を構成する原子核と電子をつなぎ止める接着剤であり、エネルギーでもあります(図2)。原子核や電子が動くと放射が発生し、空間を光速度で移動、他の原子核や電子に吸収され、それらを振動させます。生物はその振動を特殊な「タンパク質」によって感知します。放射は温度であり、温度は生物に様々な影響を与えます。

図2. 宇宙の膨張による温度低下と物質や星の形成(江尻、2012を改変)
図2. 宇宙の膨張による温度低下と物
質や星の形成(江尻、2012を改変)

  他方、空気は、窒素、酸素、アルゴン、水蒸気、二酸化炭素などから構成されます。窒素はアミノ酸の原料、酸素は呼吸のもとであり、いずれも好気性生物に不可欠な物質です。水蒸気は雪や氷や水に常温付近で容易に相変化し、水は細胞内では化学反応を促進させる溶媒となります。植物は水と二酸化炭素と日射エネルギーとから有機物をつくり、その有機物は動物の命を支えます。
  結論をいえば、放射と空気(含む水)が生命をつくったといえます。宇宙が誕生して約140億年、この長い歴史のなかで物質がどのように作られたのか、生命はそれらをどのように利用してきたのか、気象環境学は「宇宙と生命」を理解するゲートウェイの一つであることを力説しました。



引用文献

江尻宏泰、2012: ビックリするほど原子力と放射線がわかる本〜驚異のエネルギーの基礎と応用の科学〜、サイエンス・アイ新書、ソフトバンク クリエイティブ(株)、19。

以上
(2020年3月3日)