牛の妊娠期間には大きなバラつきがあり、いつ産むか分かりません。そのため、農家は昼夜を問わない分娩監視を強いられており、大きな労働負担になっています。
分娩前に特徴的な行動変化(分娩兆候)として、移動距離や姿勢変更回数、尾上げ行動などが増加することが知られています。しかしながら、これらの行動変化をもとにした分娩兆候検出の可能性については知見がありませんでした。そこで私たちは、画像認識技術を用いることで、分娩前の姿勢変更回数、移動距離の増加などを解析し、非侵襲的に分娩兆候を検出できることを明らかにしてきました。
これらの知見をもとに、分娩室に設置した分娩監視カメラで得られる画像から分娩予定牛の行動変化をAIで解析し、分娩兆候を検出した場合に飼養者へメール通知する新たな分娩監視システムを開発しました。
今回開発した『分娩検知システム(製品名:牛わか)』は、分娩予定牛を最新のサーマルカメラで監視し、画像認識AI技術によって分娩前に特徴的な行動(分娩兆候)を検出したときに農家に自動通知することで、適切な分娩介助を支援します。
これは、本学獣医学部動物飼育管理学研究室におけるICT(情報通信技術)を活用した家畜生産技術の基礎研究をもとに、生産現場のニーズに応え、民間企業(ノーリツプレシジョン株式会社)と協業して開発したシステムです。これまでの実証研究により、分娩監視にかかる労働負担の軽減や、分娩事故の低減効果を確認しています。