獣医学科毒性学研究室の武田一貴助教が2021年6月に開催された第29回環境化学会学術年会(環境化学討論会)で英国王立化学会(Royal Society of Chemistry; RSC)賞を受賞致しました。RSC賞は本学会にて優れた発表を行った35歳以下の若手研究者に贈られる賞で、審査に際して環境化学分野の著名な学会員が内容・考察・素材・発表態度・質疑応答の5項目から採点を行いました。

武田助教はRSC賞のEnvironmental Science: Nano部門を受賞致しました。受賞した演題は「分子動力学シミュレーションと機械学習によるビタミンKエポキシド還元酵素遺伝子多型からの殺鼠剤感受性評価法の確立」で、毒性学研究室所属学部6年生の渡邉可菜実さん(写真右)、佐藤玲さんと実施した研究結果が基になっています。

研究発表の概要
医薬品・農薬の薬効には時に大きな個人差・個体差が生じる事が知られており、適切な薬剤利用にはその予測が欠かせません。薬剤感受性個人差の原因として、生体内標的タンパク質の遺伝子変異(多型)によりタンパク質3D構造が変化し薬剤の結合能が増加/減少する事が挙げられます。本研究はこの遺伝子多型による薬剤感受性の影響を遺伝子配列から構築したタンパク質3D構造データを用いたコンピューターシミュレーションと機械学習により予測する手法の構築を行いました(右図)。
モデル化合物として、医薬品・殺鼠剤の双方として用いられる抗凝血薬ワルファリンとその標的分子ビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)に着目しました。VKORの遺伝子多型はヒトではワルファリン治療域の変化、殺鼠剤ではワルファリン抵抗性ネズミ(スーパーラット)の出現に関与しています。

北里大学獣医学部毒性学研究室ホームページ(2021年7月リニューアル!)
一般社団法人 日本環境化学会
第29回環境化学討論会
https://www.j-ec.or.jp/conference/29th/index.html