画像認識AIで繁殖牝馬の分娩兆候を検出するシステムを開発(動物資源科学科)

動物飼育管理学研究室とノーリツプレシジョン株式会社(和歌山県和歌山市)が、画像認識AIで競走馬生産牧場における繁殖牝馬の分娩兆候を非接触で検出して飼養者へ通知するシステムを開発・製品化しました。

このシステムにより、競走馬生産牧場では、これまで昼夜を問わず行われていた分娩監視にかかる労働負担が軽減するとともに、分娩兆候通知メールによって適切な介助が実現することにより、分娩事故の低減が期待されます。

分娩監視AIカメラ『馬もり』

馬の妊娠期間は330~360日と非常に幅があり、分娩は夜間に多く起こることが知られています。さらに、競走馬の1頭単価は非常に高額であり、生産牧場にとって出産時の事故による損失は経営上大きな問題です。そのため、飼養者は分娩事故を防ぐために昼夜を問わない長期間の分娩監視を強いられており、過重な労働負担となっています。このことから、分娩時期を特定し、分娩事故を低減するための技術が求められていました。 

既存の分娩予測技術としては、外見的な分娩兆候(乳房の腫脹、乳ヤニの付着、漏乳、外陰部の弛緩等)や乳汁中のpHや糖度の変化が用いられてきましたが、いずれも大まかな基準としての活用に留まっています。近年では、監視カメラの導入が進められていますが、分娩監視の効率化には寄与しているものの、常時監視からは解放されません。 

北里大学獣医学部動物飼育管理学研究室では、2016年から画像認識技術を用いた牛の分娩兆候検出に関する研究に着手し、2021年に分娩検知システム『牛わか』として製品化しました。この基礎研究成果を応用し、サラブレッド種繁殖牝馬の分娩兆候を非接触的に検出する研究も2017年から開始し、全国各地の生産牧場の協力を得て実証研究を進めてきました。 

(a)分娩馬房に設置したカメラ、(b)可視画像、(c)サーマル画像

今回開発した繁殖牝馬の分娩検知システムは、分娩予定馬を最新のサーマルカメラで監視し、画像認識AI技術によって、分娩前に特徴的な行動と体表面温度の変化を検出したときに飼養者に自動通知することで、適切な分娩介助を支援するものです。これまでの実証研究では、95%の検知率が得られています。これは、本学獣医学部におけるICT(情報通信技術)を活用した家畜生産技術の基礎研究をもとに、生産現場のニーズに応え、民間企業と協業して開発したシステムです。本製品の導入により、分娩監視にかかる労働負担の軽減や、分娩事故の低減が期待されます。 

分娩前4時間における動線の推移

この繁殖牝馬の分娩検知システムは、『馬もり(うまもり)』の商品名で、ノーリツプレシジョン株式会社から、今秋発売を予定しています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e247356780cad33557ecdcdb18528cfdb468827

https://www.daily-tohoku.news/archives/256086