動物資源科学科4年生の髙橋侑女さんと西本千夏さんは第33回ヤンマー学生懸賞論文の優秀賞を受賞しました

この度、動物資源科学科4年生の髙橋侑女さんと西本千夏さんは第33回ヤンマー学生懸賞論文の応募に挑戦し、見事、優秀賞を受賞しました。受賞テーマは、『昆虫の新たな可能性 〜昆虫食を「代替タンパク源」以外の観点から考える~』です。受賞学生と指導教員である落合優准教授よりコメントをいただいております。

左から髙橋侑女さん、落合優准教授、西本千夏さん

<受賞代表者コメント>

 この度、第33回ヤンマー学生懸賞論文の優秀賞を受賞することができ、大変嬉しく思います。私たちは、大学4年間で主に畜産科学を勉強し、畜産動物とそれを取り巻く環境について様々なことを学びました。その中でも、牧場実習、飼料・食品の製造・機能、人の健康と動物の関係性に関わる科目を通して、今後不足すると予想される食糧を補うためには、持続可能な畜産をより深く考える必要があると感じました。

本論文で、持続可能な畜産について考えるにあたり、私たちは畜産の飼料の質と昆虫の関係に着目しました。昆虫の食性が家畜の飼料である植物の質・量を悪化させる現象は本学部附属農場でも過去に起きていましたので、畜産の飼料を悪化させる昆虫を人間がどうにかして利用できる手段を考えました。そこで、昆虫が人間や動物の食糧として期待されていることを認識し、昆虫を人間の身近な「食」の一部に利用することはできないのかと考えました。次世代のタンパク質源などとして注目されている昆虫には抗酸化作用があることが知られており、食品の劣化を昆虫添加することによって抑制できるのでは?という発想に至り、食品に使用される抗菌物質の代替として利用可能かどうかについて検討しました。実験の結果、食品に添加することにより、高い抗菌活性を有することが認められ、食中毒原因菌である黄色ブドウ球菌に対しても抗菌作用を見出すことができました。この結果を踏まえ、安全性などが保障された昆虫が代替タンパク源だけでなく、食品に添加可能な抗菌物質としても応用されるようになれば大変嬉しく思います。

 また、本研究を行なったきっかけに、学部の科目である農医連携教育プログラムがありました。私は微生物汚染による食品劣化現象に興味があり、大学3年次に食の安全分野のプログラムを受講する予定でしたが、残念ながら、新型コロナウイルス感染症蔓延防止対策の影響を受け、受講に至りませんでした。そのため、学部内で実施可能な食の安全に関する実験に学部・学科の先生のご協力のおかげで取り組みました。

 さらに、授賞式を通して、選考委員の先生方の意見や同じく優秀賞を受賞された同じ世代の大学生の論文内容を聞くことにより、持続可能な農業についての多様な考え方を学ぶことができました。この受賞経験を活かして、今後も研究に邁進していきたいと思います。

 

動物資源科学科4年   

髙橋侑女(文)    

西本千夏(共同研究者)

 

<指導教員からのコメント>

ヤンマー社の目指す「持続可能な農業のかたち」や「食農産業」をテーマにした論文を作成するにあたり、飼料学、動物栄養学、動物微生物学、食品衛生学、飼育管理学、牧場実習など動物資源科学科での4年間で学んだ科目の知識を生かし、動物資源の維持・発展に関する現在の課題から将来的な動物資源の利用方法や生産方法を考えました。そこで、昨今、未来の食資源として期待される食用昆虫の機能性と食品素材として利用するための手段を検討し、それを論文としてまとめることにしました。

食用昆虫はタンパク質や脂質、ミネラル類などの栄養価に富む動物資源であることが知られ、代替食糧資源になることが期待されておりますが、食品科学分野において、「抗酸化性」以外の機能性は知られておりませんでした。受賞された2名の学生は、食用昆虫が有する抗酸化性をきっかけとし、劣化しやすい食品の原料に食用昆虫を利用することで、食品の機能性が向上するという予測を立て、食品微生物学的に検討を行いました。その結果、食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌の増殖が顕著に抑制されるという結果を見出しました。また、論文を作成する上で、検討するための背景や目的を明確にし、方法、結果をわかりやすく書くこと、そして結果に対する考察を様々な視点から行うことができました。

以前であれば、「昆虫は食品にとって本来混入してはいけないもの」です。しかし、2名の学生は逆の発想で昆虫を食品の原材料に使用するといった視点・発想を持ち、論文を書き上げたことは大変すばらしく思います。また、本来の研究室での卒業研究課題と並行して実験を行ったことも立派なことと思います。

 2名は今春に本学科を卒業し、大学院に進学します。この受賞を自信とし、様々な視野から動物資源を見るという経験を活かし、農学や医学への貢献に繋げていくことを期待します。

 動物資源科学科  落合 優