北里大学 獣医学部

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「大学発!日本の“食”をかえる」

トップ 学部案内 獣医学部で取り組むホットな課題「大学発!日本の“食”をかえる」

萬田 富治 教授

元フィールドサイエンスセンター長
萬田 富治 客員教授


「八雲牧場では持続可能な自然循環的畜産の理論と実際を学ぶことができます。ここで学んだ知識と経験を活かして、世界の食糧問題や環境問題の解決に立ち向かう第一線の専門家が巣立っていくことを期待しています」

●八雲牧場のロゴマークは近隣に棲むオオワシ。●生態系の頂点に立つオオワシの存在は、八雲牧場の物質循環がうまくいき、自然が豊であることの証です。

飼料危機を克服する八雲牧場の挑戦

 八雲牧場は「大地」「植物」「動物」およびそれらを取り巻く「環境」を生命系としたフィールド科学研究の実験地として利用されています。この広大な牧場では自給飼料100%の牛肉を生産する技術を開発し、生産した牛肉の品質・機能性成分の評価の研究を行っています。また、地産地消・医食同源などの取り組みに学び、生産者と消費者との連携を深めるためのモデル開発もすすめています。
  ここで生産した牛肉は安全で安心できるヘルシーな食材として消費者に届けられています。また北里大学病院の患者さん方の給食材料としても利用されており、同一大学の中で安全と安心をベースにした、土壌−草地−牛肉生産−流通−病院食供給のシステムを確立した貴重な例として注目されています。
  北里大学は「農と環境と医療」について大学を挙げて取り組んでおりますが、八雲牧場は、農業生産、環境保全および医療に深く関係しており、「農と環境と医療」の研究や教育の連携にとって、あいふさわしいプラットホームとしての役割が期待されています。また、研究・教育についても、「窒素」「化学物質」「重金属」「安全食品」「未然予防」「リスク」「教育・啓蒙」「環境微生物」「環境保全」「食と健康」など多岐にわたって深く関わっています。まさに現代社会が解決を求めている課題を研究できる宝庫です。

食料用穀物のバイオ燃料への利用拡大や地球温暖化が原因と見られる干ばつや大洪水などが、世界の穀物生産の需給バランスを悪化させ、穀物価格が高騰しています。輸入農産物に大きく依存する日本でも、その影響が現れ始めています。

これらの危機の背景を探り、持続的な農業のあり方を検証し、改善のための具体的な行動や解決策を提案することが求められています。

米と魚・畜産物や野菜・果樹のバランスのとれた食事は、長寿社会を支える健康食です。しかし、輸入飼料用穀物価格の高騰が、畜産経営を悪化させ、畜産物の価格が上昇を始めています。この様な現状を打開し、かつ安全で安心出来る国産畜産物の供給が重要な課題となっています。

八雲牧場は、獣医学部の総力を挙げて輸入飼料用穀物に依存しない100%牧場産の飼料だけで牛肉を生産するシステムを開発しました。この牛肉は赤身肉で、体によい機能性成分を多く含んでおり、へルシアビーフとして注目されています。このような八雲牧場の理念や技術を広く普及させるための取り組みが始まっています。

八雲牧場が目指す人と動物と環境の関係

八雲牧場が目指す人と動物と環境の関係 八雲牧場
八雲牧場
東京ドーム80個分の広さ。

八雲牧場と鼻曲がりサケ

 北海道渡島半島のつけ根の八雲町には、噴火湾に注ぐユーラップ(遊楽部)川が東西に流れています。八雲牧場はこの川の源流に近いところに位置しています。秋になると、長旅を終えた鼻曲がりサケが、この川に帰ってきます。
  森から海に流れた養分を体に蓄えて帰ってきたサケは、清流の湧き水で産卵し、一生を終えた体はオジロワシ、オオワシ、クマなどの餌となります。こうして海の栄養は再び森や草原に還り、海、川、森、草原、畑、水、大気を介した壮大な自然循環の中で、八雲牧場は「陸と海」を結ぶ資源循環型畜産研究に取り組んでいます。
  オジロワシやオオワシがサケをねらって群舞する景観は圧巻です。


フィールドワークの立地的優位性

 八雲牧場は、自然生態系を保全した中山間地域の土地利用、草資源の活用、寒地風土に適応した日本古来の和牛と外国種との交雑による新肉用牛の造成などに取り組んでおり、これらの研究の場として最適の地です。また、北海道酪農の発祥地でもある八雲町は、手作りチーズなど、生活と文化のゆとりを楽しむ酪農家も多く、進取の気風に溢れた土地柄です。透明感溢れる北国の自然、歴史と近代が調和する環境は、人材教育の場として優すぐれたものがあるといえるでしょう。


畜産と飼料問題

広大な放牧地で草を食べる牛の群れ
広大な放牧地で草を食べる牛の群れ。大地に
広く分散する養分を牧草に集積し、放牧牛が
食べることで肉に集積します。これは田んぼ
の養分を稲が米粒に集積するのと同じこと。
放牧畜産も水稲栽培も、ともに資源濃縮型産
業といえるでしょう。

 1961年に公布された「農業基本法」には、輸入飼料に依存した畜産の振興がうたわれています。畜産は、生産性を上げるために耕種農業と切り離されて拡大したため、家畜のふん尿が畜産農家に滞留するようになり、このことが環境問題を深刻化させました。これに加えて、最近の輸入飼料用穀物価格の高騰が、飼料危機として直撃し、畜産の土台が大きく揺らいでおります。日本の畜産の飼料自給率の向上が大きな課題となっています。
  このような戦後畜産の大転換を図るためには、本来の畜産に立ち返って考えることが大切です。家畜を飼育することは人が利用できない野草や牧草などの植物資源を利用して動物タンパク質を生産し、排泄物は痩せた土地を肥沃にします。このように、家畜の最大の貢献は、持続的な食料生産と土地生産力の向上にあります。これまで、こうした家畜による資源利用および資源節約効果の評価は見過ごしがちでした。今後は、このような自然環境保全効果を発揮させる草食家畜の生産システムを、どのようなプロセスでわが国の風土に構築し、発展させていくかが重要な課題になっています。国土保全、水源保全、生物多様性など自然資源の基盤を保全する面からも重要です。


八雲牧場の現在から未来へ

放牧地で生まれ、元気に育つ「北里八雲牛」
放牧地で生まれ、元気に育つ「北里八雲牛」。
ほとんど病気がみられないほど健康。

 これまで、農業と農学は軽視され、結果として、日本は食糧自給率を大きく下げてしまいました。農学教育や研究の目標の一つは、環境と調和した食料生産を通して国土資源の利用と保全を図り、国民の食生活を豊かにするとともに、地域の生活・文化に役立つことです。
  このため、八雲牧場の研究は、自然循環的畜産を目指した植物と家畜の生産、およびこれらを取り巻く海、川、畑、水田、森までの水域から陸域までの広範な環境、さらにはそのような広大な環境のもとで健康な生活を営む人びとにまでむけられています。
  この自然循環型畜産を構築することが、八雲牧場の教育・研究の最大の目的です。八雲牧場のフィールドに根差した実践的取り組みは、21世紀の日本と世界の食料生産および環境問題の解決を図る糸口を示すことができるでしょう。


持続可能な循環型の畜産を実現した八雲牧場。これからのあるべき姿を先取りした牧場で、自然と牛と人の共生を体感することで、世界の環境と食料問題の解決策について一緒に考えていきませんか。