獣医学科

今、動物実験に獣医師が出来ること

私は2011年に大学院を修了し、製薬企業で薬理研究に従事した後、2019年から現在の会社で実験動物の管理獣医師として働いています。私たちJT医薬総合研究所では、病気から世界の人々を救う「オリジナル新薬の創出」に向けて、日々業務に励んでいます。

私が企業での研究の道を志したのは比較的早い段階からでした。入学当初はいわゆる「動物のお医者さん」を志していたのですが、「目の前の一頭を救うことも重要だが、薬によって多くの動物を救えるのではないか」、「動物も基本的には人間の薬を使用しているので、動物薬ではなく人の医薬品に携わることで結果として多くの動物を救えるのではないか」、このような想いから進路を改め、製薬企業を志しました。

いざ製薬企業の中で働いてみると、創薬研究、特に非臨床試験のパートは大学で学んだことの連続です。どうやったら病気のメカニズムを解明できるかを考え、様々な薬剤を動物に投与し、状態観察や適切な治療を施し、最終的には動物を苦痛の無い方法で安楽死させ採材・検査する流れは、まさに獣医学の基礎から臨床までの応用です。中でも学生のうちでさほど興味の無かった実験動物学にこれほどまで関わることになるとは思ってもみませんでした。

私たちが学生の頃、実験動物学はメジャーとは言えない分野で、恥ずかしながら私も何を学んだか理解していない部分が多かったように思えます。それが近年の世界的な動物福祉の高まりもあって、その重要性が広く認知されるようになりました。私自身、2014年に国際的な資格である日本実験動物医学専門医資格を取得し、現在では管理獣医師として社内の動物実験・動物福祉をリードしていく立場となりました。社会性のある動物に対しては本来の習性を活かしたグループでの飼育に変更する、動物が不要な苦痛を感じないように適切な鎮痛薬・麻酔薬を使用するなど、動物実験の現場に獣医学的知識を基にした管理方法を積極的に取り入れています。これには適切な動物実験を実施し、意味のあるデータを得るためには獣医学的管理が必須という考えが、研究者の中で当たり前になったということが背景にあります。今では動物実験の大前提である3Rs (Replacement, Reduction, Refinement)ですが、10年前には言葉すら知らない人も多かったのではないでしょうか。このひとつをとっても、この10年の日本の動物福祉の進歩に寄与されてきた、先人たちの努力にはただただ感服するばかりです。

大学院修了後は東京と大阪で働き、かつてのような水道管が凍らないか冷や冷やする夜から離れて久しいですが、あの自然豊かな環境で同期と過ごした、充実した日々を今でも思い出します。あのような周囲からの邪魔なノイズの少ない環境だからこそ、自分の本当にやりたいことを選択できたのかもしれません。皆さんも一つの事に固執するのではなく、ぜひ広い視野を持って、ご自身の能力を発揮できる進路を選択してみてください。

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